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第 13 話  雨? それとも……涙?

 荒井のオバサマは、名家とは言い難いが大富豪だった。

 長者番付は2005年に廃止されたが……

 今でも、高額納税者なのは変わらないだろう。


 大金持ちと元領主の家系。

 二人が社交界で面識があったとしても不思議では無かった。



 黒猫は、再び白いタオルに巻かれ少女の膝の上で眠っていた。

 これからの運命など知る由も無い。

 たとえ川に流されたとしても、甘んじて受け入れただろう。


「あたしが猫さんを引き受けるわ」

 麗子が笑いを浮かべながら言った。

「伊集院さんに恩を売っておいても損は無いし」


 その得意気な表情に、私と由香里は言葉を呑んだ。

 先程の一部始終を見ていなかった事に、内心感謝したが……。



 パートの時間は既に終了していた。

 麗子が、お嬢さんを車で送って行くそうだ。


 従業員専用駐車場。

 ルビーレッドのポルシェが、澄んだフラット6サウンドを奏でた。


 黒猫を抱いた少女が、何か言いたげに振り返った。

 だが、やはり言葉は出なかった。


 彼女が深々とお辞儀をした時……

 乾いたアスファルトの上に、一滴のシミが広がった。

 

 私は明るく言った。

「いつでも、大歓迎だよ」

 

 

 静かに雨が降ってきた。

 柔らかに、包み込むような雨。 


 季節を夏に変えるのは、太陽ではなく雨かもしれない。


  

 




第 1 章  終 


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