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第 12 話  伊集院 真子

「大丈夫」

 私は笑顔で言った。

「生きているよ」


 結句反復の途中で止めさせたのだ。

 最終句の一撃、引導は渡していない。


 それに、少女が簡単に命を奪うような魔法を使うとも思えなかった。

 彼女の術は、何か強力なモノを解放するか……

 または、封印するような感じだった。


 由香里が確認するよりも先に、少女が黒猫を抱きしめていた。

 張り詰めた空気が一気に霧散した。


 

 床に落ちていた白いバスタオルを拾おうとした時、裏口のドアが開いた。

 パートの主婦、荒井麗子の登場だ。

 彼女は厨房の作業台の上のネコを見て目を丸くした。

「まさか、ア ラ カルトに加えるつもり?」


 その声を聞いて少女が顔を上げた。

「荒井さま?」


 もう少し早く現れていたら、脚本は変わっていただろう。




 遠くに、逆巻く大波のような巨大な雲があった。


 厨房に椅子を運び彼女達を座らせ、後片付けを始めた。

 由香里が紅茶と水を用意した。


 正気に戻った黒猫は、力無く水を飲んでいた。 

 時々、小さなクシャミをしている。

 空中を舞うのは得意だが、水を飲むのは苦手のようだ。



 少女の名前は、伊集院真子。

 大人の足で歩いても、2時間以上は掛かる隣町に住んでいた。

 そして、その町の大半は……以前、伊集院家の所領地であった。


 母親に黒猫を始末するように言われるが、引き取ってくれる心当たりがない。

 何度か見掛けたことがある、鋳物看板のネコを思い出した。

 それが、ここだ。

 

 看板をライオンやトラにしないで正解だった。

 


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