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第 11 話  祈り

「 طعميم، جرش وجرشييم. طعميم، جرش وجرشييم. 」


 少女の声が、はっきりと聞こえた。

 彼女の言葉は優しく明瞭で、呪文というより祈祷に近かった。

 微塵の悪意もなく、神秘的実在と自己の合一を得るための祈りだった。

 ただ、純粋で無邪気な分、単純で残酷でもあった。



 動きを止められた妖獣の息が荒くなった。

 体が大きく震え出し、二色の双眼の視点が定まっていない。

 その首根っこを掴んでいた由香里が、心配そうに見詰めている。


 危険だ。


 私は、軽く少女の肩を叩いた。


「もう、いいだろう?」


 我に返った少女は……少しの間、自分のした事が信じられないようだった。


 由香里が手を離すと、黒猫が音も無く崩れ落ちた。


 少女の温もりを感じながら抱かれていた黒猫は……

 今は、冷たいステンレスの作業台の上で静かに横たわっていた。

 


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