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第 10 話  天使

 最後の縦線を書くため、右手を頭上に伸ばした。

 大脳縦裂と中心溝の交差点・手刀の切っ先・天頂を、真っ直ぐに列した。

 指先が熱くなる。

 意識を失いそうな眩暈を感じる。


 指先に挟んだカミソリの刃を投げつけるように、目先まで一気に斬り下ろした。


「matenkoufukutensohaka!」



 オッドアイは、目を見開いたまま動きを止めた。


 しかし……終らなかった。


 更に強く、室内の空気がピリピリと肌を刺激していた。

 収束し蓄えられた電荷が、極限値に達しようとしている感じだ。


 発散の中心は、すぐ近くにあった。

 先程まで目を潤ませていた少女の体が、金色の光に包まれている。

 頭を垂れて軽く目を閉じ、肘から先の両手を天に向かって広げていた。

 純白の翼を着けなくてもエンジェル、いや、マルアハに見えた。

 

 たぶん、カスティエルよりは……

 強いに違いない。



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