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私書箱
数百メートル離れたところに、その俺書箱はあった。
「ここか…」
雑居ビル1階を使って、ずらりと並べられたポストの数々。
目的の一つを探すために、数百の俺書箱を丹念に調べる必要がありそうだ。
俺はため息をつきながら、一つ一つを調べた。
その途中で、管理人がやってきて、俺に声をかけた。
「何かお探しですか」
「ええ、この人を探しているんですが」
「ああ、その人なら、もう解約なされましたよ」
解約した。
その言葉は、俺を貫いた。
「本当ですか」
「ええ、ちょっと待っててね」
事務所のような金属のドアを通って、そして再び俺の前へ戻った。
「そう、昨日解約したばかりね。だから、もうここには手紙はこないわ」
「そうですか…転送先とか、指定されてませんか」
藁にもすがる思いで、管理人に聞く。
「…あなたが何者かによっては答えられないわね」
「探偵です。失踪した子の唯一の手掛かりなんです」
「…そう、なら教えますよ」
ニッコリとして、管理人が次の住所を教えてくれる。
これで継続調査ができる。
俺は、その教えられた住所へとすぐに向かうことにした。