クルマス
「久しぶりやないか」
家の玄関で出迎えてくれたのが、河菱組若頭 西藤清井だ。
「元気そうでなにより」
俺が西藤に言うと、まああがれやと言われて、家の中へと招かれた。
「それで、何の用や。こっちの仕事でも手伝いとうなったか」
「いや、それはない」
廊下を歩きながら、西藤と話す。
「ほな、何の用や」
「ある女子と男子を探している。とある情報源から、ここの代紋が入った名刺を渡したって聞いてな」
「ほほう。それなら、話し聞かなぁあかんな」
畳敷きの部屋へと入ると、西藤が上座、俺が下座で対峙する。
「この写真、みてくれないか」
「おう……」
写真を見るや、急に顔色が変わる。
「……なるほどな、いなくなったのはこの二人だけか」
「俺が調べているかぎりでは。ただ、某所研究所において、とある人物が関わっていることが分かってるんだ」
「…誰や」
「クルマスという男を知っているか」
「おう、よー知っとる」
写真を俺に返すと、腕組みをして教えてくれる。
「ろくでもない奴やぞ。人殺し、誘拐、人身売買、麻薬、賭博、数えだしたらきりがない。最近やったら、麻薬カルテルに一口噛んで、荒稼ぎしとるっていう話を聞いたな。しかしやで、国内に来てたって話は、ついぞ聞いたことがあらへんねんけどな」
「クルマスの配下の人らが国内に入ってきているのかもしれないんだ。ちょっとばかし調べてくれないか」
「まあ、あんさんからの願いやったら、わてらも協力させていただきましょ。ただ、親に聞いてみてから決めるっていうことになるわけやけど、ええな」
「もちろん」
俺はその約束を取れただけでも、今日のところは良しとした。