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エクストラ・メンバーズ  作者: 十三月
依頼02――お転婆姫救出作戦
8/12

008――捜索願

――本拠地(ギルドホーム)一階。広間。


「お姫様を探せ?」

「ええ、今回の依頼は、『第二王女メル・フローレイア・カルリア姫の捜索』だ」


さて、もうそろそろ肌寒くなってきた今日この頃。

こちらの世界に召喚されたのも冬だったなーとか思いつつ、俺は本日の依頼をいつものようにベイスから受け取っていた。

場所はいつものようにみんなが集まっている広間。というか、いい加減個室も使ってやれよ。せっかく各部屋居間風呂書斎付きの豪華仕様にしたんだから。


「しっかしメル・フローレイア・カルリア、ねぇ」


メル・フローレイア・カルリア。

カルリア候国の第二王女。むろん王位継承者だ。

こっちの世界では、別に男女差別などの風習は無く、男でも女でも領主にも王にも兵隊にもなる。

一応、現大陸の国では、男王の方が多いが。

とにかく、未来の王様候補。しかもカルリア候国現王は既に老衰しはじめているとの事。

未だに次の王を指名せずにしぶとく王位に齧りついているらしいが、もうそろそろ限界だろう。

つまりは。

今現在、カルリア候国の内部は第一王女エル・ローレス・カルリア対第二王女メル・フローレイア・カルリアの派閥争いの真っただ中の筈なのだが。


「『捜索』、ねぇ。救助とかじゃなくてか?」

「ああ。あのお転婆姫様、また家出したらしい」


第二王女。式典なんかの時はお行儀よくしているから知らない人間も多いらしいが、中身はもろお転婆姫である。

子供の頃は家出なんてしょっちゅう。いや、まだ16歳だしまだ子供か。

ただ、逃亡の腕は半端なくて、爺やどころか精鋭たる親衛隊30人の包囲網を抜けて王城の外へ出かけるなんて技をやってのける姫様だ。

もう姫じゃなくて傭兵やれよと思うが。生まれのしがらみからは逃げきれなかったらしい。


「で、俺らに依頼が来たと」

「誰からなんですか?」

「フローレイア派の大臣から。個人名は出せないけどね」

名前の秘匿に、琉青がまたですか。と声を出す。


しっかし、ねぇ。俺は基本的に仕事の選り好みはしないのだが。正直気が進まない。


「面倒そうな仕事だな……」

「リーアもそう思う……」


過去に1度、俺とリーアだけで同じような依頼を受けたことがあったが、あの時はホント面倒だった。

無駄に逃げ足速いし。捕まえたと思ったら怒って泣き出すし。挙句「気に入った。家臣にする」だし。


「そんなに大変だったのか?」

緋音が俺とリーアのやる気の無さ振りから声をかけてきた。


「いやそれはもう、二度と受けたくないくらいには」

「まぁ旦那がそういうなら仕方ないですねぇ。別の仕事を――」

「けど、依頼の割は良いんだけど。なにせ、捕まえるだけで300000ディ」

「……旦那、やってみませんか?」

「先輩。ヤりましょう?」

「心変わり速いな! そして琉青もどさくさに何言ってんだ!!」


まぁいいけどよ。仕事の能率は良いから。

けど、妙に嫌な感じがする。やけに報酬が高いし、な。


「まぁ、他にも情報を集めてからだな」

「了解。んじゃちょっと調べてきますか。んー……1週間で戻るわ」

「ほいよ。頼んだ」


ベイスが本気で調べれば、罠や騙しの類はほとんど見破れる。

曰く、「物事には穴ってものがあんのよ」らしい。

いや、どう考えても1週間で大陸を回ることが出来るはずも無いのだが。例の車も使わないで。


「まぁ、深く考えたら負けか……」

「…………何か、言った?」

「いや、なんでも」


大事なのはベイスの情報は速くて、そして確かである事。

それ以上に求める事なんてない。わざわざ企業秘密を暴く必要はない。


「さて、それじゃあ俺達はのんびり待ちますか」





―――7日後。本拠地(ギルドホーム)一階。広間。


「…………1週間」

「ん?」


居間でいつものようにのんびりとしていたら、急にレウムが声を上げた。


「…………1週間、経った」

「ああ、そう言えば」

ベイスが返ってくる予定は今日だったか。


「そう言えば、ってどういう事?」


おっと。いつのまにか背後にベイスが。


「なんだ、帰ってきてたなら声かけろよ」

「頼んでおいて忘れた奴に見せるような情報は無いなぁ?」

「はいはい。……で、どうだった?」


ベイスは機嫌悪くすると話してくれなくなるんだよなぁ。まぁ旨い菓子でも渡せばすぐ機嫌は治るが。


「ホントに姫様、城に居なかったわ。気が付いた時にはものけの殻、って感じだったらしくて、城中が未だに大騒ぎ。アタシが調べた感じだと、城下町にすら居ない。指名手配、ってか探してくれって依頼も街の至る所にあったし。ほぼ本物と見て間違いない」

「と、すると? 何処に居るのかはホントに分からないのか?」

「んー、どうだろ? どっかの隠れ家に隠れてるんじゃないかーって噂は聞いたわ。根拠は無いけど、普段の素行からそう考えてる人が多いみたい」

「そう、か。お疲れさん」

ベイスの報告を聞き、ついでに紙にまとめた方にも目を通す。

内容は今言った事の根拠や細かい情報について。

流し読みだが、特に有用は情報は他には無い。



しかし、これは予想以上にややこしいことになってるかもしれんな。


「ローレス派は大喜びって感じだったけどね」

「まぁ、それは仕方ないだろう」


基本的に、王になれるのは第一王位継承者だろうし、それに加えてこの騒ぎ。次の王は第一王女エル・ローレス・カルリアに決定したも同然だろう。


「……ん? ローレス派の策略ってのは?」

「無いと思う。仮に策略だったとしても、姫様が逃げれば成功しちゃってるし、あの頭の切れるお姫様がそう簡単に策に落ちるとは、ねぇ」


やはり、か。

第一王女と第二王女だと、第一王女の方が先に生まれ、継承する確率は高いが、第二王女の方が頭の出来は良い。

そのため、ローレス派とフローレイア派はほぼ拮抗状態だった。まぁ天秤が崩れるたら、第二王女が即位すると予想していたので、ローレス派がフローレイア派に仕掛けた可能性もあるのだが……。

第二王女が正直にその策に嵌る可能性は低い。


「攫われた可能性は無いでしょうか?」

「無いな」

「無いね」


それだけは有り得ない。

あの姫様を攫うなんて、それこそ要塞相手に戦う方がまだマシだ。


「まぁ、どうやら依頼の方は本物の様だし。俺達も行くか」

「では、私は車の準備をしてくる」

「ああ、頼んだ」


カルリア候国はこの大陸の南西。んでもって我が本拠地(ギルドホーム)は南東。

車でとばして4日ってとこか。


「さて、出れるのは――レウムだけか?」


居間を見渡しても、俺達4人の他にはレウムとベイスしか居ない。


「…………(コクッ)」


レウムだけは、静かに縦の頷きを返してくれたが。

今回の依頼みたいのこそ、人手が居るのだが。


「グラウは別の依頼だな。セーレイはもうそろそろ帰ってくると思うから、一応追って向かわせるが……」

「まぁ、アイツは期待せずに待っておこう」

「ああ、そうしておいてくれ」


そうこうしているうちに、緋音が戻ってきた。

「黒鍍、準備OK」

「分かった。……それじゃ出るか」



さて、面倒な事にならないといいが。


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