001――日常
※注意※
・作者の妄想と気紛れの産物です。
・最強物なため、そういう類のものがあまり好きでない方はご遠慮ください。
・作者は流血表現が苦手です。その手のモノが好きな方は満足できないと思われます。
・設定があやふやだったり、プロットがおかしいことがあります。
・一切の断りなく更新変更される事があります。
以上の事を許してくださる方は、駄文ですが楽しんでいってください。
キーンコーンカーンコーン。
ある意味、日本中一番有名かもしれない音が鳴り、授業の終了を知らせる。
同時に、未だ授業終了の掛け声は無いものの、生徒達の間にざわついた空気が生まれ始める。
「こらこら、お前らまだ授業は終わってないぞー」
と、騒がしく緩み始めた教室の空気を戒めるように、教壇に立っていた我らが担任でもある生物教師が声を出す。
が、やる気自体は既に使い果たされていたらしい。
「まぁー、ぶっちゃけやる事ないからいいや。解散」
そのまま教壇に頭を乗せたまま右手をひらひらと振りつつ僅か一言で本日最後の授業は終了。
この先生は、やる気がある時と無い時の差が激しい。いやまぁ生徒側としては良い事だが。
果たしてこの学校は大丈夫なのか? と思ってしまうほどやる気が無いことも多い。
まぁ兎にも角にも本日も長い長い拷問が終了し、にわかに騒がしくなり始める教室。
既に教室から姿を消している者、友人達の間で放課後の予定を話し合う者、未だ居眠りを続けている者。
とりあえず、放課後に予定は無いからそのまま家に帰るかと俺が鞄に教科書を突っ込んでいると、後ろから声をかけられた。
「黒鍍はすぐ帰るのか?」
声をかけてきたのは幼馴染の廿楽緋音。
日本人には珍しい赤が混じる髪と高めの身長、そして何事にも動じない冷静さが特徴の我が幼馴染。
言うなればクールビューティーといった感じで、憧れるのも奴も多いが怖くて手が出せない、なんて話も聞く。
才色兼備、といった感じの大人びた奴である。まぁ中身はそうでも無かったりするのだが。
「ま、帰宅部だしな」
どうせこちらの答えなんて分かりきっているのにわざわざ声をかけるのは幼稚園時代からの癖か。
「黒鍍も部活をやればいいのになぁ」
と、話に割って入るように入ってきたのは今度は低身長の極みの様なチビッ子。
こちらは小学生時代からだが、なんだかんだ言って立派な幼馴染であるリーア・シェイファー・翠。
名前から想像できる通りイギリスの血が75%混じっているほぼイギリス人。
外見も白……もとい銀髪が腰あたりまで伸びて両目は碧眼の済んだ眼。
ただ、背が伸びる遺伝子は受け継がれなかったらしく、身長は未だ140cmちょい。しかも自己申告だから、実際はもっと絶望的なのだろう。
まぁ、見た目がそんなだからクラスのマスコットみたいな存在である。
もっとも、可愛いのは見た目だけで、中身はきっちし高校生である。というか、その辺に居る脳内花畑赤点連中よりよっぽど大人である。
「ねぇーちょっとだけでいいから頑張ってみようよぅ」
声は明らかに声変わり前ですが。というか高校2年で未だ声変わりしないってやばくないか?
ちなみに、緋音とリーアは弓道部だったかに所属している。
ウチの弓道部は結構な実力で、今年は確か地区大会では優勝だか準優勝だかしていたか。
もっとも、別に大会実績が良いからってだけで部活に入る奴の気がしれないが。
「面倒」
「そんなぁ」
というか、何が悲しくて汗水たらしてグラウンドを駆け回ったり、反復練習を数千回とやったりせにゃならんのだ。
んなもん面倒に決まってるだろうが。
「まぁしょうがないかぁ」
しっかしリーアの勧誘もしつこい。入る気が無いのが分かっている人間相手によくもまぁ毎日言い続けるもんだ。
「今日は2人とも練習は?」
弓道部の練習は鬼のように厳しい。が、ノルマ制なので手っ取り早くやれる奴は意外と速く終わる奴も多い、らしい。
「もちろん。私もリーアも終わらせてる」
まぁ、1日分を朝練と昼練だけで終わらせる人間はこいつ等だけだろうが。
「相変わらず熱心な事で」
「別にあの程度普通に頑張れば終わると思うけどなー」
いや、一般人は弓を連射出来ないと思う。
「ほら行くぞ。琉青が待ってる」
いつのまにやら教室の扉前に移動した緋音がこっちに向かって手を振っている。
「あいよ、今行くよ」
とりあえず、いつも通りのんびりと帰りますか。
ちなみに、琉青というのは――
「先輩ー!」
うおっと。
階段を降りて、下駄箱で靴を履きかえていた俺に廊下側から何かが猛烈な勢いで走ってきて、そのまま俺に抱き付いてくる。
そして、抱き付いてきた奴は顔を上げて俺に満面の笑みを向ける。
「遅かったじゃないですか。先輩☆」
「その☆を止めろ。気持ち悪い」
飛んできたのは幼馴染4人組最後の一人、鷹木琉青。
もっとも、幼馴染と言いつつこいつとは中学からの付き合いだが。
中学2年の時に、1年だった琉青が何かの拍子で一目惚れしたらしい。
いや、俺自身はまったく記憶にないのだが。
ちなみに♂。つまりは……まぁ俗に言うホモという奴だ。
しかも、これで何かが困るという訳でもないのが困る事である。
場の空気はわきまえ、こちらが本当に嫌がるレベルのスキンシップは控える。
しかも純粋に好きだというだけで、性欲的な方面では一切感情は無い。ただ抱き付きたいだけ。
俺としては純粋に女性の方が好きなので離れて欲しいのだが。というか、コイツのせいで漫研で妙な漫画が描かれたりそっちの気だと思われたり厄介なのである。
もっともそのどれもが直接な害は無い、正確には実害が出ない程度には琉青も自重する。が、覗きたくない世界がたまに見える。
ちなみに外見は俺より少し低い身長と、細い体躯。ついでに童顔。この辺の要素もそのテの噂に関係していると思う。
後は、性格上どうしても憎めないというか……。まぁ、偶に変態化するのさえやめてくれれば文句なしなのだが……。
「先輩ー。そんなに怒らないで下さいよー」
「分かったから離れろ!」
まぁ。害意は無いようだし、いくら言っても聞かないので、まぁしょうがないかと最近は諦めつつあるが。
「んじゃ帰ろっかー」
「そうね」
初期はそれはもう怒ったり誤解したりした緋音とリーアだが、もう慣れたらしい。
琉青が何をしても助けてくれない。ああ、幼馴染ってここまで非情だっけか。
「ったく。琉青も程々にしとけよな」
「はい。では」
「では、じゃねぇっ! さり気無く手を繋ごうとするな」
「ほらほらー、置いてくよー黒鍍ー!」
「そうだな。置いていった方が良いかも」
「置いていくなぁーっ」
「先輩ー逃げないで下さいよー」
煩いほどに騒がしくて、苦しい事もあって。
賑やかで、楽しくて。
とても温かい。
そんな俺の日常。
それは、本当に温かくて、だから、俺は。
ずっと続くと、そう思っていた。