魔王様、もの扱いされる
今回のはいまいちです…
「おいそこのお前、僕のモノにしてやる!」
こんにちは、あなたの魔王です。
現在クソガ…げふん、お子様に絡まれてます。
◇子どもと話すときは目線を同じにしましょう◇
本日は特に予定もなかったので折角だから城下の様子でも見ようかと、一人で身分を隠して行動です。
ナディに後で泣かれようがクマに殴られようがアリーちゃんにビンタされようが私は行くんだ!
我が月竜国でも観光客目当てな商品とかが置いてあるので、ウィンドウショウッピングだけでも楽しい。
そんな感じでアクセサリーだとか光物・食べ物をメインに見て回ってたら、ガシッと右手を捕まれる。
これは見つかったかなー、と部下たちが与えてくれるお仕置きコースを何パターンか思い出す。
あの魔族のお仕置きだけは止めてほしいなとか希望的観測。
しゃーない、自分の行動は自分で責任を持ちましょう、甘んじてお仕置きを受けるぜと、半ば漢らしく腹をくくりながら後ろをゆっくりと振り向く。ヘタレ言うな。
すると……見たことのない半獣くん。
鳥っぽい人間ていうのかな、二足歩行してる鳥人間ってかんじ。
金色に近い毛で、背の大きさから多分少年くらいの年だと思う。
勿論、背に翼が生えています。ぴよぴよ動く姿は触りたくなる誘惑にかられる。
ちなみに鷹だと思う。
こんな子知り合いにいたっけな、と思って少年を見つめると……
冒頭のセリフを浴びせられました。
てなわけで、変なお子様に絡まれております。
これは日頃の行いの賜物ですかね。
クマの首に、瞳の色に映える青いリボンを結んだからかな……。
それとも、ナディ宛に幻術・酒池肉林コースのパンフレットを送ったからかな……。
……全部グッジョブじゃないか、私の行動。
「……どこらへんが君の御眼鏡にかなったの?」
多分この少年はいいとこのお坊ちゃまなんだろう。
でなければ、初対面の人間に『貴様を飼ってやる』なんて言わないはずだ。
下手な対応をすると、後々面倒くさくなるはずだ。
……あれ?私って何の職業についてたっけ?
「その凡庸な顔立ち・背景に溶け込む平凡な雰囲気が僕の心をくすぐるんだ」
「おいゴラ貴様ケンカ売ってんのか」
すぱーん、と少年の頭を叩いた。
数秒前の決心どこ行ったとか聞かないで。
……私、魔王。うん、きっと大丈夫。
黄金の右手(古い?)をびっくりした表情で見つめる鳥少年。
「な、主に手を挙げるなんて……!」
「誰が主だ馬鹿者」
誰だこのガキを教育したのは。
とか考えていたら、背後から叫ばれた。
「坊ちゃま――――――――――!!!!!!」
やめて鼓膜に優しくして!
大音量での突進に、眼前の鷹少年は両耳をふさぎながらその声の主をうっとうしそうに見やる。お前の知り合いか。
そいつは少年に勢いよく突進し、むぎゅうううううう……と抱きしめた。
「じい、煩い暑い痛い」
「じいは心配いたしましたぞーーー!」
ヤギでした。
誰がって?
それはもちろん『じい』です。
帰りたい
帰っていいかな?
お腹すいたからもう帰りたい。レオンをもふもふしたい。
若干現実逃避をしてたら、主従コンビは二人で話し始めた。
「坊ちゃま、この者は?」
「新しい僕だ」
「おい、頭が高いぞ。坊ちゃまに拾われたことを光栄に思え」
「誰が僕だ。誰も許可してないけど
っていうかあんた世話係なんだからそのクソガキから目を離してんじゃないよ」
「お前、坊ちゃまになんて口のきき方を!!」
「知るかヤギ。
さよなら二度と会いませんから」
レオンに癒されよう。
尻尾を触らしてもらおう。
「待て!」
呼び止めるな童よ。
我は欲望に付き従うのだ!
「主を置いてどこへ行く!」
プッツンしたのでシカトして帰った私は悪くないと思う。
その日、ペットから離れない魔王様がいたという。
多分その内、後日談をさせていただこうと思います。
「月竜国の魔王様のご機嫌も麗しゅう……あれ?」
「あの時の僕?!」
みたいな。