魔王様、ペット(仮)を拾う
お久しぶりです。
予定通り、ペットとの初対面をどうぞー
「…………………。」
「…………………。」
「「…………………………。」」
どうも、魔王こと悠です。
現在ある方と、とても熱い視線を交わしてます。
視線なんて逸らせません。
その相手の殿方はとても素敵な方です。
その方は、
全体的に細身ながら綺麗に筋肉の付いた、無駄のない肢体。
紫色の切れ長な瞳。
夜空を思わせる、すべてを包み込むような闇色の……毛皮。
はい、『人外』の殿方です。
雰囲気的に怜悧な感じなので多分♂でしょう。
そんな彼は見るからに美獣さんです。
尻尾とかふさふさしてて是非ブラッシングをして差し上げたい。
そんな私ですが、只今猛烈にあせってます。
理由としましては、その……目の前にいる獣さんです。
先ほど『視線を逸らせない』と言った理由なんですが、彼の口から除く素敵犬歯の鋭利なこと。多分視線を逸らしたら喉元をヤられる気がしてならないので逸らせません。
相手が美獣でも、命には代えられません。
それに私は動物が苦手なので。
あれだ。見る派ってやつだ。
で、若干固まりながら目を逸らさないでいる私なんですけど、なんというか
美獣さんも目を逸らさない
ってなんなんだろう。
あ、今更ながら美獣さんの外見説明ですが……
黒豹と獅子を足して二で割った感じです。
判りにくい?
うーん……黒豹を更に美形にして威圧感を増したのがこの美獣さん。
「ガルルルル・・・」
「うをぅ」
唸られました。
迫力満点のその姿に、思わず体を引く。
…………おい、そこでなぜ一歩踏み出す。
ためしにまた一歩下がる……と、踏み出す黒いの。
何でだちょっと怖いじゃねぇか、と心の中で呟きつつも目は逸らさず、少しずつ下がる。
そうして壁際まで追い詰められ……るような可愛らしい神経を私がしているわけがなく、あえて逆にこっちが一歩踏み出してみる。
しかし向こうは下がらず、逆に距離が縮まる。えー…。
まぁ、人生には意外性が必要だよね、とか現実逃避をしてみたり。
「君は魔族なのかな、それとも魔獣なのかな?」
「ガウッ」
「私の目には魔獣にしか映らないので、魔獣ってことで。
…訂正があるなら二度鳴いて。」
「グルルルル…」
「つまり当たらずとも遠からず、ってことかな?」
基本的に、異世界使用となった私の体は魔族の言葉を聞いたり話したりすることができる。
公用語はもちろん、古代語なんかも翻訳されてるらしい。
しかし、『魔獣の言葉』や『破廉恥な言葉』は翻訳されないという。
一応未成年である私には教育上ちょうど良いらしい。
「…っていうか君ひとり?」
目の前の黒豹に気を取られて後ろからガブリは嫌だ。
今更だが、魔獣は基本的に意思疎通ができる。
会話を交わせるのは少ないが、ボディランゲージ――頷くとか、手足を振り回すとかで意思疎通をするとという。
が、
意思疎通すらしてくれない、この猫科の魔獣に懲りなく再び声をかける私って健気。
じっと見つめるとプイッと顔を逸らし、長い尻尾をべしべしと地面に叩き付ける。
…………何だこいつ可愛いじゃないか。
猫が尻尾をピシピシしてるのって、たまらん可愛さがあると思わないか。
猫好きならたまらん仕草だろう!
「お持ち帰りしていい?」
真顔ででっかい猫に話しかける魔王。って今更だが、かなりシュールな気がしてならない。
返答なしに猫を伴い、城に帰還する私。
どうやったか?
それはご都合主義の魔王の力というものですよお嬢さん!…失礼、旦那様もでしたね。
ハイテンションの私をドン引きしながら迎え入れてくれた魔王城の皆さん、ありがとう。
「アンタ何引き連れてきてんだ?!」
「やほーテディ。これ飼いたい」
「『飼いたい』って魔王様、そちらの方は『飼う』レベルじゃないですよ?!」
「ナディ、私思うんだ。
……一城に一匹猫が必要だって。
魔界って猫アレルギーとかある?」
「それはないが…………『猫』?」
「うん。名前は『レオン』にしようと思う。いい?」
「ガウッ」
猫・レオン(仮)は我関せずといった風情で私の足元に寝そべっていた。尻尾は緩やかに揺れている。
勝手に連れてきてしまったが、特に怒っていないみたいだ。
むしろ城の環境に怖気づくことなく寛いでいる。
…君は将来大物になるよ。
「本人嫌がっていないみたいだし、決定ってことで」
「「えええええええぇぇぇぇぇぇぇええ?!」」
その数日後、月竜国の魔王は変人という噂が流れることとなった。
しかし後悔はしていない!
レオンの毛並は抜群で毎日もふもふしてます。
大きな猫(?)に埋もれている魔王の姿が見られることとなったせいで、さらに変人のランクが上がったとか私は断じて認めない。
お気に入りしてくださった方、本当にありがとうございます!
次も新キャラが増えそうです←