魔王様うぉっち魔王&勇者ぱーてぃー つー
なんかもういろいろありまして、書けませんでした。短くてごめんなさい。
「今回の勇者たちは騒がしいねえ」
顔面(多分)の仮面をもてあそんでいた魔王(なんだかゆらゆらと揺れていたから)は、そのまま仮面を外す。体の一部じゃなかったんだ。……すると途端に静まり、息を呑んで魔王から視線を外さない仲間たち(若鷹のぞく)。どうしたの?
「魔の者はその姿で人を籠絡するというが、本当だったとは…」
亀王子が呟いた。
……ってことは、またかよ!
「まさか美形?」
「美形なんてもんじゃないですね。第一王子が見劣りするほどのレベルです。あ、でも団長と競ってるかんじ……って、勇者様見えないんですか?!」
おうよ、カワウソ。もはや慣れっこだよ。
というか、亀王子の顔を見たことがないから判断がつかないんですが。そして若鷹は残念な超絶美青年だったんですね。人外レベルのご尊顔をお持ちだったんですね。
三人が黒靄の美貌に釘付けになっている中、その超絶美形は何をしているかと言えば……あくびを凝らしていた。・・・こいつが他人に興味が欠片もないのがよくわかる。この調子で私への興味を失してくれたらいいのに。
三人の凝視に居心地が悪くなったのか、黒靄は身じろぎをして 「このままじゃ埒が明かなさそうだから」と黒靄は(推定)指先をちょいちょいと動かす。すると途端に視界が遮断された。全体が薄紫色のドームに引きずり込まれるような感覚。魔王の間から隔離されたのかな。遮断される寸前、獣たちの焦った声が聞こえた気がした。
「何これ。獣四人衆は?」
おおよそ見当はついているが、社交辞令として一応疑問符を出す。空気は読めます。
「とりあえず空間を遮断してみたよ。魔王同士の会話には、他者は存在しないほうが好都合だからね」
ああ、やはり。
彼は私の存在に気付いている。
私の様子など意に反さず、彼は言葉を続ける。
嫌だな、と純粋に思う。自分勝手なのは嫌い。
「ようこそ、月竜国を統べる王。
ここは黒竜国。そして僕は黒竜国を統べる王。」
「黒竜国?」
聞いたことがない国名を言われ、戸惑う。『竜』とつくからには、二度目の世界に属する国かもしれない。私の国を知っている事からも、その線は濃い。だが、歴史を学ぶ上では一度もその名は出てこなかった。
「あなたは新しい魔王だから知らないのも無理はないね。
僕の国は、二つの世界をまたがっているんだ。そういう国はほかにもいくつかあるよ」
全て判っていると言わんばかりに頷く、彼に対する不快感は最高潮だ。
偉そうに彼が語った内容は、このようなものであった。
まず、彼の国は建物における階段と階段の間の空間―――踊り場みたいなものだそうだ。月竜国が二階で、人間の国が一階としたら、黒竜国はその階段の中にある。階段の上の踏み場は狭いから、踊り場のような階段と階段の間の空間に彼らの国が存在する。
「色つきの国は全部そういう立場。僕が確認できているだけで他には赤・青・黄・緑の四つかな」
どことなく、現存する国に沿った色の様な気がしますが。
黒ってことは、月の出ている夜のイメージだし。
「多分気づいてると思うけど、この国は君の国とつながってるんだよ。」
赤竜国は火竜国と
青竜国は水竜国と
それぞれつながっている。
ああやはり…とか反応すべきなんだろうか。
あまりにも関心の薄そうな私に、魔王はちょっとしょんぼりとした。だって予測できるし。でも、一応気になることがあるので彼に質問する。
「つまり、私の世界移動は貴方の国を経由したってこと?」
「それは半分違うんだよね。君は世界を移動していない」
意味がわからない。
私の世界に、若鷹とかがいる国なんて存在しないし、ましてや『召喚』なんぞというふざけたものに引っかかるはずなんてないだろう。じゃなければ、なんだ。私の国と彼の国が同じ世界にあるというのか。
「この世界はね、二重構造になっているんだ」
ああ、なんてふざけた世界。
思わず噛み締めた唇から、鉄の味がする。だからこそ、階段を用いた国の配置の説明だったのか。
私の反応に何を思ったのか、黒靄は自分の役割について語りだす。
「人間・魔族両方の侵攻を止めるのが、色持ちの仕事。
・・・・・・とはいっても魔族側の侵攻なんて、そこに行くまでに他の魔族に敗れるのが常なんだけどね」
「もしかして、自分たちの世界を統一してから人間側に侵攻しようと?」
「そうだね。だって、自分がいないときに他国に攻められたら滅ぶでしょ。だから統一しておけば憂えることはないし。でも、そこまで至るまでは誰も至っていないってこと。」
だからさ、と彼は続ける。
「今回の貴女には、本当に驚かされたよ。
色つきに気付かれることなく階移動をした君には」
しみじみと呟く彼には悪いが、私はそんなこと望んでいない。
私が欲しかったのは平穏で、奪われることのない生活。
「世界が同じというならば、どうして階層の違う者たちはお互いを認識できないの?」
「してるさ。僕の国を超えた先には、新たな大陸があることをお互い知ってるよ。知らないのは、月竜国だけ」
月竜国だけ?
私の国が知ってはいけない理由など、あるのだろうか。だから私の教育には一切出てきていないと?
それか、特殊な立場の者しか知らない。どちらかだろう。
「正解。ぼくら魔王しか知らないんだよ。
本来は、魔王の引き継ぎ…もしくは、他国の魔王から知らされるんだ。
これは人間側も同じで、『王』のみが知っているんだ。・・・・・・まあ、僕らにとってみればいい迷惑だよ」
たしかに、門番の役割を持つ彼からしてみれば、煩わしいことだろう。ただでさえ領地経営という仕事があるのに、これ以上仕事を増やすなど苦々しいものだろうし。
だとすれば何故、門番である彼がその立場を放棄してまで侵攻へ踏み切るような状況を、人間は作れたんだ?
……いや、むしろ何故色持ちである国は門番の役割を担わされているの?
考えることは沢山ある。
だが、目の前の彼はそれを許してくれないようだ。
「じゃあ月竜国の魔王陛下、選択を聞かせてください」
彼は促す。
この世界の善悪を知らない私に、どうしろというのだ。
結局は、貴方も彼らと変わりない。
これは失望?
少し考えたが違う。
――――――――――ああ、諦めか。
だから私は、こたえるよ。
「ごめんね」
「私はまだ子供なの。
賢く生きれないし、最善を選ぶ術すら知らない」
損をする性格だと言われた。
確かにもっと賢く生きられたら、人生は楽だったろう。
でも嫌だった。どうして自分を殺してまで楽な人生を歩く必要があるのかわからない。
私は、我儘だ。
だから、ごめん。
あなたには応えられない
「だからこそ『絶対』を持ってる」
これは私のプライド。
「『自分の選択を後悔しない』って」
昔、教えてくれた人がいた。
傷つけられて、悲劇のヒロインぶって我儘になっていた私にガツンと言ってくれた人。私が出会った中で最高の教育者だった。
その人に出会えるような選択をした自分は、きっと幸運だった。
それまで辛かった。でもそれは、その人と出会い、向き合えるきっかけになったんだと思う。
禍は転じて福となるんだよ。
だから、私は自分の選択を後悔しない。
ねえ、教えてよ。
「貴方が愛した人と出会ったのは、人間を憎むためだけ?」
人間を呪ったのは、彼女を愛したからでしょう?
「私はまだ、身を切られるほどに愛した人を他者の介入で失ったことなんてないよ。
でも、もし私が貴方のような立場になっても、貴方のようには行動できない」
それは私が貴方ではないから。そう言われても否定できない。
「仇をとることは、悪いことじゃないよ」
私が貴方の立場でもきっと、同じことをしたと思う。
大人になりきれない私は、自分本位でしか考えられない。だから、自分を律することなんてできない。大切な人を傷つけられて、行動しないなんてできない。
私にあなたを非難する資格はない。
でもね、私は思うんだ。
「だけど、人間への復讐なんかに人生をかけていいの?」
人間はしぶとい。
はっきり言って、すべてを殺すなんてどれだけの時間がかかるのか。
「私だったら、その時間を全て恋人のために使うよ」
愛する人を、いつまでも血の中に居させたくない。せめて記憶の存在は綺麗なところにいてほしい。辛いことなど忘れてほしい。
これもきっと、我儘なんだ。
私が彼女だったらと考える。置き換えてみて、初めて考えが浮かんだ。
ああ、彼女もきっとこう思っている。
「だからどうか、お願い。」
「『その手を汚さないで』」
私は彼女を知らない。
誰よりも清らかな少女だったと彼は言った。それだけの情報しかない。
私が彼女だったら、きっとこんなことは望まない。
偽善だと言われようと、最後まで彼の中では綺麗なままでいたい。
復讐してくれるほど愛されてるって実感できてうれしいけど、でも最後まで彼の中では『心優しい』と思われていたい。
私は彼女が羨ましい。
だって、心から愛してくれる人がいるのだもの
でも、馬鹿な少女だと思う。
愛する人をここまで苦しめて逝くなんて。
仕方なかったと言われてしまえばそれまでだけど、でもこんな結末は認められない。
やっぱり私は我儘だ。
『我、願う』
『月の狭間で微睡む竜が抱きし国の管理者が願う』
『<選択>に応えよ』
「私は、認めない」
投げやり感が漂ってて申し訳ないです。
今回は、後半だけが出来上がってまして、前半は楽にかけました。
しかし、この二つを繋げるのにものすごく苦労しまして・・・
なんだか言い訳がましくて済みません。
次回からはコメディ成分多めで頑張ります。若鷹さんがやらかすとコメディになるようです。今回判りました。しかしラブコメにはならない安心設計です。(え
書き直すべきなんでしょうが、そんな気力と筆力がないので、次回にその気力を回します
こんな小説をお気に入りしてくださっている方には申し訳ありませんが、許してください。