魔王様うぉっち魔王あんど勇者ぱーてぃー わん
おそーーーーーーーーくなりました!
しかも中途半端です。
「わん」はone・・・1です。
犬の鳴き声ではないです。
やってまいりました魔王城の魔王の間……へ続く扉の前。
RPGにおける最終決戦―――ラスボスじゃないよ、第一段階だよ―――という状況にあります。
◇勇者な魔王様はラスボスな魔王と対峙します?◇
どうも。多分この世界で一番の傍観者な魔王こと悠です。…絶対私の名前を憶えてる人って少ないよね。
十分な休息の時間をとるために扉の前に立ち尽くしていた私たちは、最終確認をとる。
「基本的には勇者様とジェームズは何もしなくていいです」
後方支援という見学ですね。
若鷹の言葉に、私とカワウソは無言で首肯する。だって痛いのきらいですもの。しかしカワウソは若鷹に苦言を呈する。
「…いや団長、俺一応騎士なんですけど。
更にいうと、何かあった際に身分の高い人の盾になるのが仕事なんですけど…」
「お前は魔王戦に使えん」
「ハッキリ言わないでくださいよ!」
まあ、生存率が高まるのだから大人しく守られてればいいんじゃないかな。騎士としての馬鹿らしいプライドがあるのなら、まあどうぞ生存率の低い戦いに挑んでください。
「だってさ、ジェームズ」
おい王子、
「……私今、口に出してました?」
「『騎士としての馬鹿らしい(略)』と言っておったぞ」
「わお、乙女の嗜みにかけちゃった☆
…おいそこ、何も聞きませんでしたというように目線をあさっての方向にするな」
特にカワウソ!
「そんなところも素敵です」
「だまれ変態。」
若鷹が恍惚として言う。だから私鳥類愛好家じゃないから。
「ラキウス殿を変態と呼称するのはお主だけだぞ…」
「変態以外に何と呼べと?」
「普通に名前とか、おちゃめに『下僕』とか…」
「そうしてください」
亀のふざけた言葉にキリッとした顔で下僕と呼んでくれという若鷹。だれかこいつをどうにかしてくれ。
「クルト、未だに兄上の性癖を判ってなかったんだね…」
「確実に王子だけしか知らなかったと思いますけど?!」
「ジェームズの言うとおりだ。私は勇者殿しかこのような気持ちを抱かない!」
「たいちょおおおおおお!!!!!」
「なんというか、憐れよの…」
なら止めろよ、矯正してやれよ。とは言えなかった。そして若鷹、答えになってない。
「つーか俺ら、最終決戦の場にいるんですから、こんなコントみたいなことしてる場合じゃないと思うんですよ」
カワウソのもっともな意見に、一同沈黙する。
「確かに相手を待たせるのは失礼に値するな」
「兎は寂しいと死んじゃうからね」
「お主らの観点がおかしい気がするぞ?!」
上から若鷹、亀王子、兎巫女の会話である。王族って、ろくなのがいないな。バニー巫女は細かく言うと王族ではないのでカウントしない。そして亀王子よ、なぜ兎を例に出す。
ツッコんでいいのか判らないこの状況で、カワウソは早くこの旅を終わらせたい理由を語る。
「それに俺、帰ったら兄貴の結婚式に出席するんですから、とっとと帰りたいんです…」
「これぞ脂肪フラグ」
「セルロース違う。死亡フラグ」
「あんたら失礼すぎるな、おい!」
亀の言葉に私がツッコみカワウソが叫ぶ。
仕方ないじゃないか。一発変換で最初に出てきたんですもの(by作者)
「いや、むしろ死亡フラグを何気なく口に出すお前のほうが悪いだろ…」
「隊長の裏切者ーーー!」
「味方になった覚えはない」
カワウソは撃沈する。というか、この世界にも『フラグ』なんてあったんだね。(※魔王様は若鷹とカワウソの会話を聞いてません)
「いいよ、俺の味方はあいつがいれば十分…」
親友って、カンガルーネズミ君のことだろうか。そしてジェームズよ、このまま新たなる世界の扉を開かぬように生きろよ。勘違いしてしまいそうになったじゃないか。よかった、この目のオプションがあって。
ちなみにオプションは、自分に対する好意を除く、その他すべての感情が靄がかった色として目に写る。恋愛感情はピンクです。ついでに言うと、ジェームズからは友情の色しか見えない。
「え、君ら出来てるの?」
この亀が!私の内心の罵倒を知ってか知らずか、ボーイズトークが始める。
「俺とアイツは親友ですが。というよりも、あいつの恋愛対象は画面上の女性(うっふんあっはん系)なので、俺と奴の蜜月が生まれるわけがありません。ええ、絶対に。」
「そこまでマシントークされると、逆に怪しいぞい。ほれほれ、吐け」
「まあ、子供なら養子をとるという手もあるからな。自由恋愛してもいいぞ。ただし、勤務中には控えることが条件だが……」
「もうヤダこの王族!」
こうして最終決戦の扉一枚隔てたところの会話はジェームズをいじることに、男性陣は燃えていた。
ぼっち寂しい。
◇◇◇
「「「お邪魔します」」」
ようやく部屋に入室しようとすると、兎を除く男陣がそうのたまった。
「何を言っておるんじゃ?!」
「え、やっぱり知らない人の居住区と言ったら挨拶が必要でしょ」
「そうですよね。俺も母さんに叩き込まれました」
「ほう、いい母上だな……クルト、身分があっても礼は大切だぞ」
上から兎・亀・カワウソ・若鷹の言葉である。
「え、我が間違っておるのか?」
「いいやクルト、奴らの神経が図太いだけだよ…」
そもそも礼節以前に、私たち魔王城に土足で無断侵入してるからね。
「何で今回の勇者は変人揃いなの?」
おいまて、なぜそこで一括りにする。
振り向いた先にいたのは、大きな玉座に鎮座する………黒い球体+ α。
靄がかった物体の、仮面の目の位置に当たる部分はこちらに向いている。そして再び玉座から私たちに問いかけた。
「今回の勇者は、誰?」
その言葉に、4人の視線が私に降り注いだ。待て、私は勇者なんて認めていない。
「そう、あなたが……………っ?!どうして、あなたがこの世界にいる?!」
黒い靄が驚きの声を上げた。今更だが、魔王が黒い靄でも私は驚かんぞ。むしろ予想してた。………大丈夫、魔王=美形なんて構図、自分で破壊してるし、この眼のおかげで美形ウォッチングできないって知ってるから。あれおかしいな、涙が出てきたよ。
黒い靄・・・以下魔王にしよう。魔王は、私の存在に気づいてるみたいだ。じゃなきゃ…ねえ?テンプレっぽい発言しないでしょうし。
魔王に私は立てた人差し指を口元にあて、黙っておくようにジェスチャーする。相手は判ってくれたようで、それ以上の詮索はしないでいてくれた。だからまあ、理由位は伝えるべきかな。
「いわゆる、成り行き上。」
「そう、なら仕方がないのかな。あなたの存在は、この世界でも異質なんだね」
うん、そうだ。私はこの世界でも、元の世界でも異質だろうね。
前の世界で許容されていた私が次の世界に落ちたとき、異質になってしまったのだから。でも、それはもういいのだ。私という存在を求めてくれたのは、その世界が最初だったのだから。前の世界は私を認めてくれた。でも、離さないでくれなかった。そうでなければ、私が月竜国という国でトップになどならない。その世界に落ちてきたりなどしない。最初の世界よりも、次の世界のほうが私を求めてくれなければ、そんなことは起きない筈。
「何故あなたがこの世界に関わる?」
「うん、私もそう思う」
彼の言うとおり、私がこの世界に関わる義理はない。関わりたくなどなかった。
それでも、関わってしまった人がいるのだ。
彼らの生活を脅かす存在が悪意あるものであるならば、私はこちら側につかなければならない。
私の想いをくみ取ってか、彼は逡巡するように瞬いた後、私に告げた。
「じゃあ、あなたにはこの戦争のきっかけを知るべきだね」
「人間と魔族の争いだけじゃないの?」
彼は一瞬酷薄そうに揺らぎ、多分嗤ったのだと思う。軽蔑の色合いだったから。
「巻き込まれただけのあなたに昔話をしよう」
「ある魔族の娘が人間に殺されました。それも、ただの暇つぶしという名の最低な理由で。
その娘は、もうすぐ結婚するはずでした。実は彼女のお腹の中には子供もいて、それは娘だけの秘密だったのです」
魔王は言葉を区切る。
「そうして、全てを知ったその夫となるはずだった魔族は人間を恨みました。」
「その後、魔族を殺すことに快楽を満たした人間たちは、何人も何人も魔族をとらえては殺しました。それは実験・家畜としての扱いなど広範囲に渡るようになりました。そうして、人間は今度は別の魔族の娘を捕え、殺しました。
彼女もまた、婚約にある身でした。魔族の中でも高い地位にいる男と結婚するはずだった彼女は、清らかな体を持ち、その身を初夜に捧げるつもりでした。」
「そうして、彼が救い出したときには、彼女は身も心も壊れていました」
「体が人と同じであったときは慰み者として
体が元の姿になった時には食物にされ。
少女は、神聖な生き物だったのです」
「『清いから穢したくなる』
彼女は、そういう性質をもった魔族であり聖族だった。
人間はね、綺麗なものに二つの感情があるんだよ。
『汚せないほどの美しさ』と『汚したくなる美しさ』のね」
憎しみを籠め、彼が呟く。
ああ、貴方だったんだ。いとしい人を失くしたのは。
人間側が沈黙を守る中、彼の言葉は続く。
「先に害を加えたのは、人間だよ」
それでもあなたは人間のために戦えるの?
「私は、はっきり言ってこの世界に関係ないよ。でもね、不本意なことにかかわらざるを得なくなってしまったんだよ。それも魔王退治とか言う名目のせいで」
そのきっかけを作ったのは、貴方だ。でも、そうさせたのは人間で、
ああ、結局誰が悪いの?
逡巡する私を見つめ、彼は声を響かせた。
「もしあなたがこの世界を恨んでいるのであれば、僕の隣に来ない?」
うらむ?
世界から切り離されたことを?
そんなこと、もう二度目だ。一度目よりも怒りは少ない。
この世界で誰が正しくて誰が正しくないかすらわからないのに、私に選択をさせるの?
ぐるぐるする。
気持ち悪い。
吐き気がしてきた私の思考回路。そんなとき鼓膜に、涼やかな、でも怒りの混じった声が入り込んだ。
「断る。」
その誘いに否をと答えたのは若鷹であった。
「彼女はお前の隣になど立たない。」
「何故、君が決めるの?君は彼女と関係ないでしょう?」
「関係ある。俺にとって、大切な……
ご主人様だ!」
どーん、という効果音をつけたくなる見事な仁王立ち。場内は無言に陥る。
……。
「この方の隣に立つなんて、そんなおこがましい事を考えるのは罪!
むしろ下に跪くのが道理であり喜び!」
「ねえ兄上、もしかして勇者様の立場が変わったら兄上の立場も変わるってこと?」
「立場?変わらんぞ。
俺の立場は勇者様の配下だからな」
亀が『こいつまじどうしよう』という顔をした。兎は『どうすんの』という顔をこちらに向けている。どうもできんよ。できたらとっくのとうにしてるよ。むしろ私は今までのシリアスどうしようって顔したいよ。
そんな中、空気の読めない魔王が疑問の声を上げる。
「じゃあ、勇者が来ると貴方もついてくるってこと?」
おいこの世界の魔王、特売品じゃないんだから。
まるでお得プライス☆昼間のテレフォンショッピング、と言わんばかりの空気。
「勿論だ」
「勿論なの!?」
お前ふざけるなよ。このシリアスシーンぶち壊すとか、おバカ要員じゃないでしょうが。
「たいちょおおおおお!あんた国家への宣誓はどうすんですか!反逆者として捕えられますよ?!」
カワウソが悲壮な声で叫ぶ。強く生きろ。
「俺は勇者様のために生きる!そして彼女の下僕になるんだ。ってわけでいい加減認めてください」
誰かこいつどうにかしてくれ。
もうやだ、せっかくのシリアスシーンをぶち壊されたし。つーかこいつ、マゾ?マゾなの?変態なの?
「あはは、兄上ったら欲のない人ですねえ」
「思いっきり私欲にまみれてると思うぞ?!」
亀の朗らかな笑みに、兎も叫ぶ。
おかしいな、ボケ:ツッコミは2;3のはずなのに、カオス具合が収まらないよ。
すみません、分割します。
たぶん次回は近いうちに揚げられるのではないかと。(次回は「つー」です)
お気に入りが減って増えて減りました。
なんというか、すみません。
書く気力とか時間をなくしてました。
今は少しだけ戻ってきてます。
ほんとうならこれで勇者編は終わるはずだったんですけど、ね・・・ドンマイ!
勇者編が終わったら友人が作ってくれたキャラとか出したいなあ^^