魔王様はようやく勇者として出陣します
ジェームズが出ます。
遅くなってすみませんでした!
あの素敵な暴露会見のあと、意気消沈した国王(医務室連行)に変わり、亀王子がハイテンションで状況説明を始めた。それはもう割愛することにする。
すみません、外野のHPは一桁です。むしろMPかもしれない。
◇勇者パーティーを召喚するためには生贄が必要です◇
「よっし、騎士団長の了承も得たことですし」
「してないぞ」
「空気読めこのKYが」
「一国の皇位継承権を持つ王子が国を留守にすることを、現状を把握して空気読めと言いたい。」
最近さ、『空気読めよ』が普通になってない?『KY』から始まる『日本人は空気読めます』というレッテル……。たしかに空気読めると対人関係とか楽だよ?でもさ、日本人全員に共通とか思わないでほしいんだよね。あぁ、確か異世界召喚のラブやらギャグやらでは結構「空気読めよ」って主人公が思うんだっけー。むしろこの世界ではその発言を傍観してるんだー。
王子と団長が言い争っている中、つらつらとそう考える。
「なら僕は行っても良いのでしょうか?」
「クルトは…戦力にならないから無理だ」
兎の自分を売り込む言葉に鷹は少し考え、小さく首を振った。
「なっ、僕は足手まといになりません!」
激昂する兎に、亀はここぞとばかりに駄目だしする。
「だってさー、クルト攻撃魔法使えないじゃん」
「召喚魔法があります!王子よりも活躍できる自信がありますよ」
「へー、言うじゃないか。今ここでどっちが使えるか勝負しようか?」
どんどん雲雪の怪しくなる二匹の会話に、鷹が一喝する。不憫臭がする。
「やめんか馬鹿ども。お前らが暴れたらここが崩壊する!」
「「崩壊するくらい強いってことでしょ」」
ハモる兎と亀。よく考えたら、昔話ではこいつら喧嘩してなかった?…いや、かけっこか。昔話の動物同士の争いって、子供には聞かせられない裏事情とか多々あるよね。異類婚姻譚とかさ。いや、むしろ古事記とかもRといえばRなんだよね。『欠けたところを余りあるところで塞ぎましょう』を女生徒に言わすとか、もはやセクハラ…うん、黙りますね。
「城の老朽化を考えろ」
(そっちか…)
場内の皆さんが何とも言えない表情になる。数人は成程と言った表情だ。経理担当の者は「あぁ、そういえばそんな時期か」と小さく呟いた。費用捻出頑張れ。実はまだ戦時中だけど頑張れ。
…というか、
「老朽化しても、城であることに変わりはないんだから耐久性はそこらの建造物より優れてるんじゃ…」
代弁ありがとう、見知らぬ兵士よ。
「そこの雷鳥の爪の騎士、兄上の部下ながらやりおるな!」
あ、やっべという様に慌てて視線を斜めに向けて『俺は知らない』ポーズを決め込むカワウソっぽい兵士(騎士)に、亀王子は親指を立てる。
「ジェームズ、貴様は後で話し合おうか」
くちばしをカチカチと鳴らし、捕食者の眼をする若鷹騎士団長。カワウソは食べても腹は膨れないと思うよ。しかしカワウソとか何これ可愛いじゃないか。周りが猛獣コーナーに居そうな奴とか、個人的にあまり好きになれない動物の中、彼だけがその愛らしさにより際立っている。かーわーいーいー。その隣で心配そうに表情を伺っているカンガルーネズミ君も可愛い。二匹とも無骨な武具に身を包んでいるというのに、可愛さが伝わってくる。
「ねえ、ジェームズって言うの?」
思わずカワウソに話しかける私。名前も憶えやすく、常識的な考えを持つ。…なるほど、勇者一行のお供にピッタリじゃないか。
「っはい、俺…いや、私は雷鳥の爪騎士団五番隊所属のジェームズですが…」
びくっと体を揺らし、恐る恐る返事をするカワウソ。うん、離れたところからの若鷹ビームが怖いんだね。
「この旅にwelcome」
にっこりと、笑顔で誘う。気安く感じてもらうために、相手の方に軽く片手を置く。途端に潤む彼の瞳。
「目にゴミでも入ったの?」
大丈夫だろうか。じっと見つめていると、どんどん青くなる顔。まるで血の気が引いたようという表現に最も適した顔色だ。その隣にいるカンガルーネズミ君がものすごく慌てた表情となる。持病か。同じ旅を共にする仲間の健康が心配だ。
「勇者殿、もしかして彼をこの旅に連れて行くつもりですか?」
「勿論。何か問題でも?私と彼は良い相性だと思うから、一緒に居たい。」
主にツッコミポジションとしてな!癒しポジションて必要だよね。私の精神安寧上。カワウソ君の堅そうな毛皮をなめしたい。
「…そうですか。なら、ここにいる五人で行きましょう」
「りょーかい…………ん?五人?」
「ええ、私と王子とクルト、ジェームズと貴女――勇者殿です」
背後の兵士たちを下がらせる何かを纏ったラキアスが、ゆっくりとこちらに近寄る。なんでだろう、今すぐこの場からジェームズを逃がさなければならない気がするのだが。…うん、私の直感は八割がた当らないから気のせいだろう。
「それでは勇者殿、我々は荷づくりや引き継ぎなどもあるため、これより失礼します。……ジェームズ、行くぞ」
硬直したカワウソを器用に引きずる若鷹。いつも思うんだけど、どうやって物をつかんでいるのだろうか。
会議はお開きだっていうし、そろそろ私も退室しますか。
決して亀と兎のコンビに話しかけられたくなかったわけではない。周りの騎士団たちが壁になってくれて妨害してアイコンタクトで『逃げろ』とか聞こえた恐怖心からでもないよ。…後で差し入れを持っていこう。
ああ、カンガルーネズミ君の名前も聞いておけばよかった。彼にあとでジェームズの持病があるかどうか聞いてみよう。
◇お待ちかね(?)のあの人です◇
どもっす、ジェームスです。
只今、本来俺の仕事じゃないのに、会議場の警護を申し付けられてまーす。今日休みのはずなのにここにいるっておかしくない?
「自業自得」
親友の一言が胸に刺さる。そうだよ、賭け事に負けるほうが悪いよ。すっからかんだよ。
「おい、そろそろお偉方が集まる。…しゃんとしろ」
こちらに目を向けず忠告する親友。このクール美形め!
へいへいと軽く返事をすると、甲冑から覗かせる若草色の眼が、あきれたように俺を見る。美形は滅びろ。美形なのになんで俺ら親友なんだろう。…こいつ以外の美形は滅びろ。
会議が始まった。しかし一向に進まない。
「会議は踊る…」
勇者様がポツリとつぶやく。誰も踊っていないのに、どういう意味だろうか。もしかしてこの進み具合のことを表現しているのか。
勇者様の無関心を脇目に、王族たちの話がどんどんあらぬ方向へと進んでいく。いやまあ、自分たちで品位を落としていくのはどうでもいいんだけど、ここには王族に夢を抱いて就任している人たちもいるんだから、そこらへんよく考えたらどうなの、とか思う。なぜこんなことを言っているかというと、俺の母方の一族が王族と関係の深い者から酷い目にあわされた為に、国民の皆さんと比べて尊敬できないからだ。
自分でもそれは眼前にいる王族を恨む理由とならないこととは判っている。でも、血縁関係などを考えてしまうと、この感情は捨てられないのだ。
(とはいえ、恨んだとしてもどうしようもないんだけどな)
そう思い、考えを払拭させる。
思考が暗くなってしまったため、仕事に集中することにする。俺えらい。
「クルトは我が子なのだ…」
っておい、何があった。しかも巫女姫様じゃなくて『神子』…男だと…………?!
「クルトは貴方の子ではありません」
王子、ご老体は労わりましょう。そして王はそれをご存じじゃなかったんですね。どっからどう見ても、貴方の遺伝子を一ミクロンも受け継いでいないじゃないですか。眼の色こそあの人と違いますが、その色もあなたとは異なってますよね。先祖がえりとか、貴方の血ではおこりえないですよね。
更に王子も貴方の子じゃないんですか。それは知りませんでした。とはいっても、甥ですからまぁ…えええええええええええええええ、やめて、そんな国家機密語らないで!!!!!!!!!!俺ら兵士はまだ死にたくない!口封じとかマジしないで!
どうすんの?!ねえどうすんの、王の血をひいてないのが玉座に座るのって、僭主とかいうんじゃなかったっけ。・・・え、違う?
まあとにかく、
「王が倒れたぞー!」
救護班カモン!
あっれー、会議ってこんな国家機密を暴露するようなものだっけー?俺わかんなーい。
若干の休憩をはさみつつ行われた『勇者一行の旅に誰が行こうか』の会議。
不用意な発言により、強制参加決定。
よい子のみんな、口から出た言葉には気を付けようね☆(経験者は語る)
◇カンガルーネズミの胸中◇
俺に親友のジェームズは、運が悪い。それは彼の一族特有の物らしく、対象は王族にまで及んでいる。過去に彼の母親がその被害にあったそうで、彼が今今世に誕生していることが奇跡としか言いようがないとか。
そんな状況に陥ったのは、王族の不手際としか言いようがないらしい。
とはいえ、何か起きたら王族に頼るというこの国のスタンスは少々おかしいのではないかと思う。解決する側は必ず王族側の人間が行う。国王制の基盤が揺らいだら、この国の善悪は歪むのではないだろうか。「正」を声高に言える権利を持つものが揺らいだら、その「正」までも効力を失くしてしまう。「正」を唱えられるのが一団体しかいないことも、この国を破滅へと至らすきっかけになるだろう。
『不手際』は、王族のせいであるが、そうなったことの全てに彼らの責任が問われるわけではないのは判っている。
それでも思わずにはいられないのだ。『彼らが止めてくれれば』と。実際、彼らはそのことを把握していた。証拠不十分で止められなかったと語っていたが、された側としては許すことなど叶わない。直接関係ない者同士であっても、そういった確執は産まれてしまう。
きっと彼らが当時を振り返るなら、こう思っているだろう。
『ハッピーエンドには犠牲が必要』だと。
それは正しいし、否定できない。
『誰もが幸せになれる』
そんなのおとぎ話ですら存在しない。
敵も、味方も、第三者も幸せになれるだなんて。
それは認められないし、認めたくない。
でなければ、あいつの状況を説明できない。
だから、こうなったのではないか。
王族三名の漫才にツッコミを入れるアイツ。
勇者殿から興味を抱かれるアイツ。
「この旅にウェルカム」
ウェルカムってなんだろう。ああ、強制連行のことか。
勇者殿、『カワウソ』ってもしかしてジェームズのことですか?あいつはどっちかというと、今巷で人気の『ハムスター』なるものにそっくりですよ。あの狭いところに入りたがるところとか。
ああ、ジェームズの顔真っ青になってらー。
とりあえず頑張れ。
親指をぐっと立てたらジェームズに睨まれた。なんでだ。
「え、持病ですか?特に俺は聞いたことがありませんが…
……ああ、必要以上に王族の方々に近寄らせないようにしてください。それだけです」
ちょっとブラックなので、読み飛ばしたほうがいいかもしれません
今回何を言いたかったかというと、
「誰もが幸せになれるなんてありえないんだよね」ってことです。
最近読んだ「なろう」さんの小説で、ものすごく気に食わない終わりだったんですよ。誰もが納得している終わりなんです。
内容が、というより心情がおかしい描写が沢山あって、「これが幸せ」だと思い込んでいるようにしか思えないんで、読んでてイライラしました。
三角関係になったのは判りますが、『「私の」夫』とか、何度も入れんな。お前が奪ったんだろ、被害者面すんな、そういう状況に陥ったのは、自分の浅はかな行動のせいだろ。根本的に「正」を間違えてる。とかね。作者さん、書き直したほうがいいですよー。ここでこそっと呟いてみる。
いやね、私優しくないですから、『ここをこうしたほうがいい』とかあまり言わないんです。本人を傷つけてめんどくさいことになるのとか嫌いですし。「これおかしいんじゃない」メールを送る時間とかもったいないですし。時は金なり!
…好きな作者さんには、こっそり評価点入れたりとかしてますよ。たまに感想とかも送らせていただいてます。
なんか黒いあとがきになったなー・
みーつにおいては、長編とかのジャンルでもないので、短編集的な感じで好き勝手に書いてますが、白黒はっきりさせて書こうと思ってます。
普段あまり書かないように書いているので、ところどころ文章がおかしくなってるのはそのせいですとかほざいてみる。