序章 魔王様の呟き
ある世界では、天使と悪魔が敵対している。
また別の世界では、翼族と地族が敵対している。
これは、それまた別の世界の話。
◇◇◇
異世界トリップ。
それは、夢見る年ごろの者ならば誰でも心躍るフレーズではないか。
その先に待ち構えている物を考えず、目先の『ファンタジー』に焦点を当てれば、一度でいいから経験してみたいものだろう。…危険がなければ。
正義の味方なる、勇者。
これに憧れるものも多いのではないか。
普段の世界では普通の人だったけど、異世界に行ったら『俺つえぇぇ!』なテンションで、武術に魔術もろもろオールオッケー☆でウハウハ・美形ハーレムなぞ作れるものなら、諸手を挙げていきたくなるのが、普通の人間である。
一握りの者は、魔王に憧れるだろう。
怜悧ともとれる美貌・深淵をのぞくような黒。
これに痺れるものもいるだろう。
魔族は美形が多いとも聞くので、そんな彼らに傅かれるのも悪くないと考えるのは致し方ない。
しかし、トリップ補正ならぬ向こうと同じ姿をした人間が、超絶美形ども(人外)に傅かれるのは、精神衛生上とてつもなく悪い。
…いや、だからこそウハウハなのか?
さて、皆さんに報告しよう。
私、瀬戸悠は異世界トリップして、魔王になりました。
ただし美形はいません。
いるのは人型ではない魔物たちです。
見切り発車!
多分ギャグになります。
ときたまシリアス……?