第72話 クリスマスプレゼント
今日、一華は理那と真由の女子組、シンは浩輔と直哉の男子組に別れて、クリスマスプレゼントを買いに行くための待ち合わせをしている。
パスタ店にやってきた一華とシン。
浩輔と理那、直哉と真由にそれぞれ四人用テーブルに付いている。
「お待たせー。」
一華とシンは理那と浩輔が座っているテーブル席に並んで座った。
以前、ボーリングで待ち合わせた時のことを教訓に、今日は寒い思いをしないよう店内で待っていたことを実行している浩輔にシンは安堵した。
「注文はしたのか?」
「まだだ。待っていた。」
「そうか、悪いな。どれがおすすめだ?」
「ここは、ボロネーゼが美味い。」
「私、カニのクリームパスタ食べたい。」
「じゃ、二人ともランチセットで、俺はボロネーゼ、一華はカニのクリームパスタだ。」
店員を呼んで六人分注文した後、浩輔が切り出した。
「今日は、どこに行くんだ?」
「どこ行こうか? 具体的に決めてないね。」
「何か所か見て決めたいよね。」
理那と真由も決めていない。二人とも欲しい物を聞いていないようだ。
「うん、ぼんやりとはあるんだけど、決め手に欠けるというか……。」
一華も本当は欲しい物を聞いておくべきか迷っていたが、サプライズ感が無くなると聞けずにいた。
「俺たちもどこ行くんだ?」
シンも浩輔に聞いた。
「俺たちも、いろいろ見て回ってからだな。」
「じゃぁ、この店の左右に分かれて別行動するか!?」
「そうだね。時間はおやつ時間を目安にする?」
定員が六人分のランチセットを持って来た。
一華はカニのクリームパスタを、シンはボロネーゼを食べ進める。お互い、半分近くまで食べ進めたところで、当たり前のようにお皿を交換した。
もう、浩輔達は何も言うことなく受け入れている。自分達も黙ってお皿を入れ替えている。
六人は食べ終えた後、お店を出て左右に別れて行こうとした時、シンが一華に釘を刺した。
「お小遣い使いすぎるなよ!」
「えーっ? いくらまでだったら許す?」
「3,000円ぐらいが妥当だろ!」
「わかった。じゃね。」
「あぁ。」
今度こそ、二組は左右に別れて歩き出した。
一華は予算3,000円で何が買える思案しだした。
「何がいいかなぁ……」
「今の季節なら、マフラー、手袋とか?」
理那が提案してきた。
「ずーっと使ってもらうなら、マグカップ、シャーペン、ボールペン、万年筆、キーホルダーとかかなぁ?」
真由も提案する。
「自分なら、ちょっと高くて手が出ない艶々になるヘアブラシがいいな!」
一華はシンへのプレゼントじゃなく、自分が欲しい物を口にする。
「「あっ、いいねぇ」」
理那と真由も賛同するが、彼氏の欲しい物がわからない。
「男子って何が良いんだろうね?」
一華は閃いた。(これだ!)
「雑貨屋さん行きたい。」
「どこの雑貨屋さんか指定ある?」
「特にない。」
一華は今いる場所でぐるっと見渡して雑貨屋さんらしきお店を探す。
「あっ、あそこ、ぽくない?」
「ぽい、ぽい」
「行ってみよう。」
三人は近くの雑貨屋さんに入って行く。
「何か決まった?」
「うん、黒猫のキーホルダー」
「サンちゃんみたいな?」
「……そう」
(本当は、仁華なんだけどね……)
一華はサンという事にして誤魔化した。
「あるかな?」
「あまりにもピンポイントだもんね。」
「キーホルダー、キーホルダー」と店内を探し回る一華。
理那と真由も一緒に探す。
キーホルダーやストラップらしき棚を見つけたが、黒猫のキーホルダーやストラップは無い。
「あーぁ、黒猫はやっぱ無いね。」
「もう1か所行く?」
「行きたいけど、理那と真由は決まった?」
「まだ。先に黒猫探そう。」
「次の雑貨屋さん行こう。」
少し歩いていくと大きい雑貨屋さんがあった。店内に入って売り場を探し回る。
「あったー。しかも、ピンポイントであったー。」
一華は理想通りのキーホルダーを手に取ると、一華のテンションはMAXになり、嬉しすぎて踊りだしそうな勢いだ。
一華は自分も欲しくなり、同じ物を2個買うことにした。1個はプレゼント用としてラッピングしてもらい、もう一つは自分用に簡易な包装にしてもらった。
理那までもが、かわいいキーホルダー達を見ると思わず自分用を選び始めた。
「私もお揃いのキーホルダーにしようっと。」
「えーっ、文房具じゃなかったのー?」
「これ見てると、かわいいんだもん。浩輔のカバンに着けてもらう。」
「あー、その手があったかぁ。」
真由まで理那の心変わりがうつってしまった。
真由もお揃いのキーホルダーを選び始めた。
一華は「ま、いいか」と一緒になって選び始めた。
◇◆◇
一方、シン達の方はと言うと……シンはずるい手でプレゼントを決めていた。
スマホでショップを検索するシン。
「俺、決めた。ここに行きたい。」
スマホの画面を見せるシン。近くの売り場を目指すことにした。
「お前たちもここで買ったらどうだ?」
「??? 何でだ?(プレゼント何がいいか分からなかったはずだが……?)」
浩輔はシンが数軒見て回ることなく、行き先を決めたことが不思議だった。
「きっと、理那も真由も喜ぶ。」
そう言われて、浩輔達もついて行く。
三人は少し歩いたところにあるショップに入って行き、シンはお目当てのものを手にしてプレゼント用にラッピングしてもらった。
浩輔と直哉も目的の物を直に見るとシンの確信に満ちた提案を理解した。二人ともプレゼントにすることに決め、クリスマス用のラッピングをしてもらう。
これで、目的のものはゲットしたが、予定のおやつの時間にはまだ少し早い。
「少し早いがどうする?」
「メッセージ送ってみるか!?」
浩輔が理那にメッセージを送った。
理那から「こっちもミッションクリア!そっちに向かうね♡」と返信が来た。
「あっちも終わったらしい、戻ろう。」
六人は待ち合わせした付近で合流した。
「俺たち、もう1か所行きたい所あるから、先に帰るな。」
一華とシンは四人とは別れて、ペットショップに向かった。
サンのクリスマスプレゼントを探し回っていると、店内に貼られたポスターが目に入った。
「シン、見て、猫ちゃん用にクリスマスケーキあるよ。」
「俺たちだけじゃなく、サンにも買うか?」
「そうだね。予約しよう!」
「クリスマスプレゼントはどうする?」
「ふわふわベッドか、キャットタワーのどちらかがいい。」
「もうそろそろ、運動もさせないと、本当に子豚ちゃんになっちゃいそうだし……、あったかいベッドを日の当たるところにも置いてあげたいし……迷うー。」
「二つともプレゼントしてもいいが、ベッドは一華から、キャットタワーは二人からにするか?」
「えっ!? いいの?」
「構わないが、お小遣い余ったのか?」
「余った。」
ベッドが買えることに笑顔で探し始めた一華だったが、ふわふわベッドを見ながら決めかねていた。予算オーバーだ。お小遣いは余ったが、お揃いにした自分用のキーホルダー分が足りない。
「うーん、(自分の分買わなかったら……買えたのにいー。)」
ふわふわじゃないベッドなら予算内だが、ふわふわのベッドは予算オーバーしている。でも欲しい。
「シン、お小遣い前借りしてもいい?」
「前借り?」
「来月分、今ちょうだい。」
「お前、やっぱり、余ってなかったんじゃないのか?」
「余ってたんだけど……、欲しいベッドは少し高いんだもん……。」
「どれだ?」
一華は欲しいベッドを指さした。
「あぁ、確かに、いいベッドだ。これならサンも満足するだろ。」
「でしょ。」
「仕方ないな。不足分は出す。前借りは無しだ。」
シンは呆れながらも、相変わらず、一華には甘い。
「ほんとに? いいの?」
「どうせ、来月になったら、また前借りするんだろ!」
「そんなことしない……つもりだけど……。」
一華は、お正月何も買えない状態が頭をよぎった。シンの好意を受け取ることにした。
クリスマスケーキを予約して、ベッドとキャットタワーを購入して二人はペットショップを後にした。
自宅に帰ると、一華はいつもは真っ先にサンの所に向かうが、この日は自室に向かいプレゼントを隠した。
クリスマスプレゼントは当日のお楽しみだ。
(シンとサンちゃん、喜んでくれるかな……)




