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いちにの華  作者: ゆず華
覚醒編

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第69話 コールドムーン

12月、凍てつくような夜空に浮かぶのは「コールドムーン」。

前月のスーパームーンほどの大きさはないものの、今日の満月もスーパームーンと言われるぐらいパワーがあるはずだ。

今日も満月パワーを注入したいが……。前月の満月パワーで魔力が覚醒していない今、パワーが解放されていない。溜まっている状態だ。


「一華、前月から満月パワーが解放されていない状態だ。危険を伴う。」


「そうなの? 1回だけの満月パワーじゃ足りないんじゃないの?」


「それほど、浄化の魔力のパワーは強大という事か!?」


「今までの魔力って、変身、共感、共鳴、自己回復、テレパシー、時間停止、遠聴……、衣装チェンジは表上だけで、私が受け取るとか、読み取るとか自分だけで終わっていたような感じだけど、誰かの心を操るんだよ。満月1個じゃ足りないんだよ。きっと」


「そうだ、そうだ、きっと、そうだ。」


今にも踊りだしそうなリズムで言う一華。


「にゃっにゃっにゃーにゃっ……(そうにゃ、そうにゃ、きっと、そうにゃ。)」


一華は楽観的に捉えている。サンは同調しているように見えて、真似して言っているだけだ。シンは自分が満月パワーの蓄積が危険と捉えていることが正しいのか再考すべきという考えに至った。


「一華は、今日も満月パワーを注入するのか???」


「うん、する!」


「にゃにゃ……(するにゃ。)」


「サンは必要ないだろ。何を覚醒させるんだ?」


「にゃんにゃ……(ないにゃ)」


「じゃぁ、なんで、満月パワーを注入するの???」


「にゃんにゃにゃーんにゃにゃ……(一華達に保護されてから、外に出れてないにゃー。)」


「そうだよね。私も仁華で外出してないなぁ。」


「だが、もう、夜の外出は寒いだろ。」


「そうだね。でも、シンのパーカーの中はあったかいよ。」


「仁華だけならいいが、サンまでは無理だな。どちらかだけだ。」


「にゃんにゃーんにゃ……(一緒には無理にゃんかー。)」


「新月まで待てば、三人で外出できるけど、休日なら昼間大丈夫じゃない?」


「外出は次の休みにして、今日の満月パワー注入は一華だけでいいな。」


「うん」


「にゃん……(わかったにゃ。)」



◇◆◇



一華とシンは、リビングに集合した。

一華はブレスレットを外してテーブルに置いた後、黒猫仁華に変身した。


シンはリビングの窓を開けてベランダに出た。冬の寒気が突き刺すような空気だ。コールドムーンを確認した後、結界を張る。


仁華はベランダに出ると、冷たい空気に体がブルっと震えた。シンは衝撃に備えてすぐ後ろに移動した。


仁華は空を見上げ、バンザイするように前足を月に向かって伸ばし、コールドムーンのパワーを思い切り受け止めた。

仁華は心の中で強く唱える。


(コールドムーン様。浄化の魔力を覚醒させてください。パワー注入をお願いします。)


シンは真剣に一華(仁華)のパワー注入を願う。


(一華(仁華)に浄化の魔力を覚醒させてください!)


次の瞬間、月光を浴びた仁華の全身を、月光が奔流となって二人を貫き、凄まじい電流のような衝撃が襲った。意識が白く弾け飛び、全身の毛が逆立つほどの激しい痙攣に見舞われる。


シンは衝撃に耐えながら、すぐさま仁華を抱きかかえてリビングに運び入れた。

仁華をソファに横たえて、窓を閉めて結界を解除した。


シンは仁華を撫でながら

「一華、大丈夫か!?」


サンも仁華に声を掛ける。


「にゃにゃーんにゃ……(一華、大丈夫にゃか?)」


意識を取り戻した仁華は、弱々しくも答える。


「にゃにゃ…… (大丈夫にゃ)」


「本当か? 何か変わったことは?」


「にゃにゃ~ん、にゃ……(今のところ、にゃいよ、ね?)」


シンはソファの仁華に「一華に戻るか?」声を掛ける。


「にゃ~ん……(一華に戻るにゃ)」


仁華は、閃光を放つことなく、静かに一華の姿に戻った。


「にゃにゃーん…… (よかったにゃ)」


「体はどうだ? 疲労感は?」


シンは一華にブレスレットを着けながら体調を確認する。


「衝撃を受けた影響は残ってるかも。他には特に感じてない。」


「このまま、寝られるか?」


「うん」


「じゃぁ、部屋に戻ろう。少しでも長く寝る方がいい。」


「サン、おやすみ」「サンちゃん、おやすみ」


二人はサンに声を掛ける。シンはリビングの照明の電気を消して、一華に付き添ってリビングを出て行く。

二人は部屋の前で「「おやすみ」」と言って自室に戻って行った。


(一華の満月パワーは蓄積されてしまった。本当に一華の言う通り、浄化の魔力覚醒には蓄積したパワーが必要だったのだろうか!? だが、今日の一華は意識を取り戻したことは救いだ。危険な状態ではないと言えるだろう。)


その夜、シンは深い安堵と消えない疑問を抱えたまま、静かに眠りについた。



◇◆◇



翌朝、一華とシンはいつも通りに起きてきてキッチンに立っている。

一華はサンのご飯を準備してサンを起こしに行く。


「サンちゃーん、おはよう、ご飯だよー。」


サンは一華の声を聞いて起きた。伸びをした後、ケージから出てくる。


「にゃにゃーん……(一華、おはよう。)」


一華はケージ内の自動給餌器のトレイを取り出して不在時の食事を用意する。

シンが二人分のお弁当と朝食をテーブルに並べた。二人は朝食を食べ始める。

いつもと同じ穏やかな光景だ。いつものように一華の体調確認を行う。


「一華、体調はどうだ? 覚醒した感じはあるのか?」


「何も感じないかなぁ。」


特に何の変化も感じていないし、魔力の覚醒も感じることなく二人は学校に向かった。

覚醒するのか、まだ、月光の蓄積が必要なのかは今のシンにも分からなかったが、確実に満月パワーが蓄積していることは感知していた。

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