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いちにの華  作者: ゆず華
覚醒編

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第64話 ハロウィーン

一華達、高校生にとって10月のイベントが続く。文化祭、中間テスト、進路調査の後、最終イベントは「ハロウィーン」だ。


お昼休みにお弁当を広げている一華、シン、浩輔、理那、直哉、真由の六人。

理那が「もうすぐ、ハロウィーンだけど、みんな仮装するの?」と聞いてきた。


「ハロウィーン?」


シンにとっては初めて聞く言葉だ。

一華がスマホを見せながら説明する。


「10月31日に行われる秋のイベントで、かぼちゃのランタンを作ったり、子供がお化けなどに仮装して『トリック・オア・トリート!』と言ってお菓子をもらったりするの。こんな感じ。」


「大人たちは仮装して出歩いたり、仮装パーティーを開催したりしてるんだけど。シン君は初めて?」


世界中で楽しんでいるお祭り騒ぎを、海外で暮らしている(嘘設定)というシンが知らないことに理那は不思議がった。


「聞いたことがあったかもしれないが、帰国するまでイベントとか興味なかったからな。」


シンは無難に答える。

浩輔はみんなに顔を近づけるジェスチャーをして小声で言う。


「ここだけの話だが、うちの高校では10月最終土曜日、学校初のハロウィーンの仮装コンテストが開催されるらしいぞ。」


「えっ? そうなの?」


「生徒会が主導で行うらしいが、まだ未発表だ。」


「何でお前が、知っているんだ?」


「生徒会室の前、通ったら、聞こえたんだよ。」


「盗み聞きか。」


「人聞き悪いな。廊下まで声が漏れてたんだから、盗み聞きじゃないだろ。」


(それを黙って聞いてたんなら盗み聞きっていうんだよ!)


「で?」


「参加するだろ!?」


「みんな、仮装するのか?」


「「「しようよ。」」」


女子三人は乗り気だ。


「楽しそうじゃない!?」


「どんな格好するんだよ。」


「ルールがあってな。まず、うちの生徒とわかる事が大前提で、過度な露出、血糊や傷メイク、顔が隠れるマスクはNGだ。俺が知ってるのはここまでだ。」


「随分としっかりと聞いてきたな。」


「仮装コンテストだぞ。気になるだろ。」



◇◆◇



帰りのホームルームで担任から「仮装コンテスト」についての説明があり、仮装ルールが後ろの掲示板に貼りだされた。


仮装コンテスト開催について


開催日時:10月〇〇日(土) 14時~15時  ※結果発表16時


開催場所:〇〇高校 体育館


仮装ルール

 ①〇〇高校の生徒と判断できること

 ②過度な露出は控えること(水着や下着などは禁止)

 ③血糊や傷メイクなど、グロテスクなメイクは禁止

 ④顔が隠れるマスクやお面は禁止

 ⑤刃物や危険物に見える小道具の持ち込み禁止

 ⑥通行の邪魔になるような衣装は禁止

 ⑦公序良俗に反するもの、他校や教員を揶揄するようなものは禁止


参加方法

 個人またはグループごとに参加申込書を10月〇〇日までに生徒会まで提出してください。



浩輔が言っていた事とほぼ同じだった。


「参加するだろ!?」


「一華はどうしたい?」


「参加したい! 仮装なんて初めてだし。土曜日、予定ないでしょ。」


「あぁ、わかった。参加しよう!」


一華とシンの仮装コンテスト参加が決まった。もちろん、浩輔、理那、直哉、真由も参加する。

あとは、何に仮装するかだ。


「一華と二人で参加する。」


「えっ? 私と?」


一華は男女で仮装できるものをイメージしていく……。


(プリンスとプリンセスはそのままだし……アニメキャラとか〇ィズニーとかかなぁ?)


「俺も理那と参加するしな。直哉は真由と参加だろ?」


浩輔が理那に顔を向けて同意を求めると「う、うん。」と帰ってきた。

すかさず、直哉も真由に向けて同意を求める。

女子三人からしたら、まさかだ。カップルの仮装を想定していなかった。


どんな仮装にするかは内緒にして、三組とも当日のお楽しみという事にした。



◇◆◇



一華は仮装テーマを何にするか考えている……。


「にゃんにゃ……(一華はまた、にゃに考えてるにゃ。)」


「仮装テーマ」


「にゃんにゃにゃ……(仮装テーマってにゃんにゃ?)」


「もうすぐ、仮装コンテストがあって、シンと二人で参加するの。それのテーマを考えてるの。」


「そのまま、魔界の戦士とプリンセスでいいだろ。」


シンは魔界の格好そのままを提案してきた。


「戦士って、シンは仮装したことにならないでしょ。」


「あぁ、だが、人間界では仮装してるようなものでは?」


「初めて人間界に来た時に着ていた魔界の服を着るの?」


「あぁ」


「私、プリンセスが着るようなドレスなんて持ってないよ。」


「具体的なドレスをイメージして言ってみろ。」


「シンデレラのようなウエストからふわっと広がる青いチュールフリルのドレスで……デコルテから肩周りにもチュールフリルがあしらわれていて……」


一華が具体的にイメージしたドレスを口に出した瞬間、一華の周りがキラキラと光りだした。強い光を放った後、そこには、イメージ通りのドレスを纏った一華の姿があった。


「「えっ!?」」


「どういうことだ? サンが魔力を使ったのか?」


「にゃんにゃ……(使ってにゃいにゃ。)」


「一華がやったのか?」


「私? ただ、シンに言われてイメージしたものを口にしただけだよ。」


「他に加えたいものとかあるか?」


「うーん、ドレスはイメージ通りだから、ティアラを着けて、ドレスに合わせたハイヒールを履かせて……」


口に出した瞬間、一華の周りがキラキラと光りだした後、一華の頭にはティアラが飾られ、足にはシルバーのキラキラ光る素材で、後ろ側に幾重にも重なったリボンが飾られているハイヒールを履いていた。


シンとサンは、一華がイメージしたもので彩られていくさまを目の当たりにした。


「一華の魔力だな。」


シンは言い切る。


「……そう……みたい……。えっ? どういうこと?」


「満月パワーは、この日のために『一華を最も輝かせる衣装チェンジの魔力』を授けていたのかもしれないな。」


「にゃにゃーんにゃ……(一華、綺麗だにゃーん。)」


「これを仮装コンテストで着用しろってこと?」


「魔界のプリンセスそのものだろ。申し分ない。」


「このまま、学校まで行けないよ。」


「タクシーで行けばいい。」


「うーん、もう少しパニエを抑え気味にして。」


口に出した瞬間、一華の周りがキラキラと光りだした後、一華のドレスはフレアラインが抑えられていた。


「これぐらいなら、大丈夫かな。どう?」


「あぁ、すごく綺麗だ。似合っている。」


シンは顔を赤く染めて、真面目に答える。


「シン、魔界の服に着替えられる?」


「あぁ、着替えてくる。」


シンは自室に戻り着替えた後、リビングに戻ってきた。


「やっぱり、シンにピッタリだね。ちょっとアレンジしていい?」


「あぁ、任せる。」


一華はイメージしたものを口に出す。


「上着を濃い青にして、ボトムスは白で、肩の装飾を付けて、肩から膝下にかけて白いマントを追加……」


口に出した瞬間、シンの周りがキラキラと光りだした。強い光を放った後、魔界服の色が変わり、肩の装飾と一緒にマントが追加されていた。


「私のドレスに合ってるでしょ。カップルに見えない!?」


「これでは、魔界のプリンスとプリンセスだ。」


「にゃんにゃにゃにゃーん……(シン、王子様にゃ。一華とカップルにゃん。一華、俺もやってにゃ。)


「サンちゃん、服着ないでしょ。それに仮装コンテストには連れていけないよ。」


「にゃんにゃにゃにゃーんにゃ……(俺、馬ににゃって学校まで送るにゃ。)


「人間界では馬にならない約束でしょ。ダメだよ。」


「にゃんにゃにゃ……(でも、馬に乗ってる方が似合ってるにゃ。)


「そうだけど、それは魔界に戻るまでお預け!」


仮装コンテストに参加するドレスは決まった。衣装チェンジの魔力も覚醒したことも確認できた。


(一華は何でもいいとお願いしたと言っていたが、満月はこの日を予知して、衣装チェンジの魔力を覚醒させたのか?)


シンは満月がいくつもある魔力の中から、一華に最適な魔力を選択して覚醒させているのかが気になった。



◇◆◇



仮装コンテスト当日。一華達は仮装してタクシーに乗り込み、学校に向かった。

コンテストに参加しない生徒たちは思い思いの仮装をして、左右にわかれて配置された椅子に腰かけている。

生徒会代表が審査基準やルールを説明した後、開会宣言をした。


開催時刻が迫ってきた。コンテスト参加者は体育館近くの別室で控えている。呼ばれたら順番に正面から入り、生徒たちの中央をまっすぐ舞台上まで上がっていき、仮装のポイントなどアピールしていく。


参加者がグループごとに呼ばれていく。

浩輔と理那が呼ばれた。緊張しながら舞台上まで来た。ところどころで、かわいい、かっこいいという声が聞こえる。浩輔はポリスマンで、理那はミニスカポリスだ。


直哉と真由が呼ばれて、舞台上に上がっていく。アニメキャラの衣装そっくりだ。どの参加者も生徒から歓声を浴びている。


最後に一華とシンが呼ばれた。扉が開いた瞬間、会場の空気が一変した。腕を組んで踏み出した二人の放つ「本物」のオーラ。その瞬間、歓声が沸き上がった。

まっすぐゆっくりと舞台下まで歩いてきた。が、一華の足が止まった。この衣装で(どう階段上がれば…)と、考えていた。


「***(一華、掴まれ)***」


シンはすかさず、お姫様抱っこをして難なく階段を上がっていく。今度は悲鳴のような歓声が上がった。

シンがアピールポイントを発する。


「魔界のプリンスとプリンセスです。一華のドレスに合わせました。」


(魔界って……私に合わせたって……私がシンに合わせたのに……)


またしても、悲鳴があがる。


参加者全員が舞台上に上がると、司会者が進行し、投票に移った。

投票、集計時間を利用して舞台上で集合写真の後、撮影タイムが始まる。

撮影タイムは舞台下に降りてでも行われた。


一華とシンもせっかくなので、自撮りではなく、全身ツーショットの撮影をしてもらった。

浩輔と理那、直哉と真由とも撮影していった。


シンにツーショットを申し込む女子生徒も中にはいたが、頑なにシンは断っていく。しかし、右側は空いている。断られた女子生徒が勝手にツーショット写真を撮っていく。

一華にも男子生徒がツーショットを申し込むが、シンがけん制するも一華の左側が空いている。生徒が勝手に撮影している。


司会者から「結果発表」の時間が告げられた。

あっという間に撮影タイムが終了した。いよいよ、結果発表だ。


生徒は席に戻り、静かに結果を聞く。

ベストカップル賞、アイデア賞、審査員特別賞、準グランプリまで結果が発表された。

副賞は食堂の利用券だ。残るは、グランプリのみ。


「グランプリは………シン君と一華さんのお二人で、魔界のプリンスとプリンセスです。」


歓声が沸き上がった。


「***(仮装じゃなく、本物だからな。当たり前の結果だ。)***」


「***(また、あがるの?)***」


一華は結果より、舞台に上がることが憂鬱だった。

履きなれないヒールに足も痛くなってきた。歩きたくないのが本音だ。早く帰りたい。

シンは一華の状態を感知したが、このまま帰るわけにもいかず、グランプリの表彰式でも、履き慣れないヒールで足が痛い一華を再びお姫様抱っこをして舞台に上がって行った。

そのたびに、悲鳴が上がる。もういい加減にしてくれと心で思いながら……。


司会者から賞状と副賞を受け取って、仮装コンテストは終了した。


「***(シン、帰ろう、足痛ーい。)***」


「***(わかった。タクシー呼ぶ。それまで我慢だ。)***」


シンはさっさとタクシーを呼んだ。

一華は理那たちに挨拶をすると、シンにタクシーの所までお姫さま抱っこされ逃げるようにタクシーへと乗り込んだ。

ようやく、終わったとタクシーの中では二人とも疲れ切っていた。

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