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いちにの華  作者: ゆず華
覚醒編

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第55話 文化祭準備【後半】

朝のホームルームになった。ホームルームが終わると、浩輔は担任の所まで行き、魚釣りゲームをお菓子釣りの釣り竿で使いたいので領収書をだしてもいいか確認した。

実際に使用するのであれば良いと了承を得た。



◇◆◇



放課後、一行は小腹が空いているので、マンションに向かう前にコンビに寄った。


「肉まんって、まだ暑くない?」


「でも、美味いぞ。」


肉まんなどホットスナックやアイスなど、食べ歩きをしながらマンションに向かった。


シンが鍵を開けて、先に一華が入る。リビングに入って、みんなが座れるよう、テーブルの上とか片づける。


サンは一華に気付いて「にゃー」と甘えてきた。


「サンちゃん、ただいま。着替えてくるからちょっと待っててね。友達連れて来たよ、大丈夫かな?」とサンの頭を撫でてあげる。


「にゃー……(誰にゃー)」


サンは答えているが、一華には魔界語はわからないので、会話にはならない。

一華はリビングのドアを開けて、みんなを誘い入れる。


「着替えてくるから、ここで待っててもらっていい?」


シンは玄関のドアを閉めて、着替えに自室に入っていった。


真由がリビングに入った途端、「ねこちゃんだー。」とケージに寄って行った。

サンは知らない人に最初はびっくりしたが、全然怖がる様子はない。むしろ、話しかけている。


「にゃんにゃー……(誰にゃ、一華の友達かにゃ?)」


「何か言ってるよ。かわいい。」


理那、浩輔、直哉までもケージに寄ってきた。


「黒猫か、ちっちゃいな。」


シンが着替えてリビングに入ってきた。


「夏休みに保護したんだ。」


「かわいいー。始業式の日、早く帰ったのは猫ちゃんのため?」


「あぁ、まだ、自動給餌器の用意してなかったからな。」


「にゃんこ、悪かったな。」


浩輔はサンに向けて謝った。


「名前は何?」


「サン」


「サンちゃんかー。」


一華が着替えてリビングに入ってきた。

シンが昨日預かった袋をテーブルの上に置き、お菓子釣りゲームの準備を促した。


「まずは何をするんだ?」


「まずはチラシで釣り竿作りだな。」


チラシは浩輔がテーブルに出した、その後、理那も真由も浩輔もチラシを出してきた。


「みんな持ってきたのか……」笑ってしまった。役割分担すればいいものを。


チラシの枚数は十分なので、強度を増す為に、2~3枚を重ねて丸めることにした。

誰かが丸めて、誰かがテープを貼って止めていく。大量の竿のもとはできた。

タコ糸の長さをどうするか……。


「短すぎると簡単だよなー。立って、少し屈んで釣れる程度となると……1メートルにするか?」


「女子ぐらいの身長だといいけど、男子には短くない? 小学生ぐらいだと長すぎるよね。」


「選ばせるか。」


「あぁ、それがいい。踏み台を使うより、安全だし。」


「じゃ、1メートル前後20センチの3種類を試してみるか。」


80センチ、100センチ、120センチにタコ糸を切って、釣り竿を作成した。

次にお菓子の輪っか付けだ。


お菓子に輪ゴムを付けていく。

付けて行ったところでテーブルの上に置いて、みんなで試してみる。

男子三人が3種類の釣り竿で試してみる。釣り糸が長いと難しそうだ。


「長いと難しいな。上から、ゴムが見えにくい。」


輪ゴムはカラーゴムだ。


「お菓子のパッケージと同じ色の輪ゴムが重なっていると色が同化していて、境目がわかりにくいな。」


「同化していないお菓子は? どう?」


「やっぱ、難しいな。」


「どれどれ、交換してみるか……」


浩輔がシンと釣り竿を交換して試す。


「うわっ、難しいな。」


「どれどれ」


今度は直哉が試してみる。


「うわっ、ほんと難しいな。」


今度は女子三人が試す。長いのは論外。短い釣り竿で試していく。


「短い方がいいけど、カラーゴムが同化してて微妙に邪魔してくるね。」


「それも楽しみになるよね。」


「逆に背が高いと腰曲げる形になって難しいね。脇を締めて持てる高さがいいかもね。」


「魚釣りゲームどうする?」


「先に普通に遊んでから交換する?」


「そうだな。ボウルに水入れてくるわ。」


シンはキッチンに行ってボウルに水を入れて持ってきた。

水に浮くように魚たちを置いてみる。マグネットの付いた釣り糸を下ろしてみる。

糸の長さ調整もリールでできる。

サンが騒ぎ出した。


「にゃーにゃー……(出してにゃー)」


「サンちゃんも魚釣りしたいのかなぁ。」


「さっきまで大人しかったのに、魚釣りしだしたら急に鳴き出したもんね。」


「サン、危ないからダメだ!」


シンはいつものようにサンに注意する。


「シンはサンに対して、いつも強めなのか?」


「うん、なんかね。子猫というよりかは……なんだろ……子供に言い聞かせる感じかなぁ……ねぇ?」


一華はシンに向いて確認する。


「そうだな。子猫としては話してないな。」


「どんな関係だよ。」


「パパなのにねぇ……」


「パパ役だから甘えさせず、危険から守るんだよ。」


「本当のパパみたいだね。」


「だから、サンはケージからは出すなよ。」


「うん。だってよ。サンちゃん。大人しく待っててね。」


一華はサンを優しく撫でながら、言い聞かせた。

みんなは、魚釣りゲームに意識を戻した。


「これだと、このままでは誰でも短めにできるな。」


「先は交換せずに、100センチのタコ糸の先を輪に結んで引っかけたら? 外せば、マグネットの魚釣りでもできるし。」


「試しに100センチのタコ糸もう1本作って……」


浩輔がタコ糸を切って、クリップを先につけたものを魚釣りゲーム用の釣り竿に、後で簡単に外せるように結んでいき、お菓子釣りを試す。


「これなら、一律の長さにできるな。」


「チラシよりこっちが良いな。」


「あと、何個買う?」


「全部で5個ぐらいあればよくない?」


「魚釣りゲームもして、景品用意しては?」


「時間制限で個数によって景品あげるとか。」


「おぉ、それがいいな。」


「水とたらいがあればできるしね。」


「だったら、釣り竿5個じゃ少なくないか?」


「1個は魚釣りゲーム専用にして、残りの4個をお菓子釣りで大丈夫じゃない?」


「そうだな。あんまり、一度にゲームされても管理できないしな。」


「これで、概算見積もれるだろ。」


「そうだな。あとは、多めにお菓子と景品の額を多めに上乗せさせておけば、大丈夫だろ。」


「あぁ、決まりだな。助かったぁ。」


浩輔が吐露する。


「どうして、面倒くさい概算見積もりに立候補したんだよ。」


シンが浩輔に聞く。


「概算見積もりそのものは面倒だけど、こうやって六人で遊べるじゃん。」


「それが目的か!?」


「そのお陰で、シンと一華のマンションにも遊びに来れたし。」


「そうそう、サンちゃんも見れたしね。」


「にゃーーん……(そうにゃんかー)」


それまで、大人しくケージの中から、六人を眺めていたが、サンが自分の名前を呼ばれて、返事をする。


「ほら、サンちゃんも喜んでるし。」


「もうだいぶ、時間がたったな。帰りは大丈夫なのか?」


18時を過ぎている。シンが帰りを心配する。


「もう帰るか。理那は俺が送っていくよ。真由は直哉が送るから大丈夫だ。」


「これ、どうするんだ?」


みんなの目が広げたお菓子に向く。


「みんなで分けて、割り勘するか。浩輔が立替てるよな。」


「じゃぁ、順番に好きなものを取っていくってのは?」


「じゃぁ、浩輔から時計回りで。」


浩輔から理那、真由、直哉、一華、シンの順番だ。

好きなものをどんどん取っていった。みんなに回ったら、浩輔に割り勘金額を渡していく。


チラシの釣り竿や魚釣りゲームなどは、明日、シンと一華が学校に持っていくことにした。


「気を付けて帰ろよ。」


「あぁ、じゃぁな。」


「「「「「「また、明日」」」」」」


四人は玄関を出て帰って行った。夕闇が迫っていた。



◇◆◇



友人たちが帰り、部屋にはいつもの静寂が戻ってきた。

二人はキッチンに行き、シンは夕食の準備を始め、一華はサンの離乳食と水を準備しだした。


「サンちゃん、お待たせ。お腹すいたよねー。ごめんねぇ。」


「にゃにゃぁ……(お腹すいたにゃぁ)」


一華はサンをケージから出してあげて、食器で離乳食をあげている間に、ケージの中の自動給餌器からお皿を外して洗う。

トイレも掃除してあげる。


シンは手早く料理をして二人は食事することにした。


「結構、時間かかったね。」


「あぁ、危ないものがなかったら、サンも出してあげられたのにな。」


「にゃにゃぁんにゃ……(シンも大丈夫にゃ。リスク回避は大事にゃ!)」


「なんて?」


「『大丈夫。リスク回避は大事』だってさ。」


「リスク回避って……さんちゃんて、やっぱ、3歳じゃないね。このまま育つのかなぁ。」


「急に大きくなるのは困るな。とりあえず、1歳までは元に戻るなよ。」


「にゃんにゃ……(わかったにゃ。)」


「『わかった』ってさ。」


シンの言葉を理解し、冷静に答えるサン。

一華は初めて誘った友人たちとの楽しい時間を思い出しながら、文化祭へ期待を膨らませていった。

しかし二人は、寝るまで、遊び足りないサンに付き合わされ、翌日は寝不足になった。

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