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いちにの華  作者: ゆず華
覚醒編

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第53話 給餌

明日からのサンの離乳食をどうするか困った一華とシンは、始業式の帰りにペットショップに寄った。

ペットショップの店員に相談したら、ウェットタイプ対応のタイマー式給餌器を教えてくれた。早速購入して帰る。


「これで、サンちゃんもお腹すかさずに待ってられるね。」


「あぁ。もっと早く知ってたら、浩輔の誘いにも乗れたのにな。」


2学期始まってからのサンのご飯の事をまさかの失念だ。ひもじい思いをさせるところだった。


(すまなかった。サン)


シンは浩輔に謝ることより、今はまだお腹を空かせて待っているサンに謝っている。捕虜かライバル視しても結局好きなのだ。


「そうだね。悪いことしちゃったね。」


「でも、まさか、予算担当に立候補するとは思わなかったな。」


「ね。」


「それと、判定役と記録係にあの二人も立候補するとはなぁ?」


「理那と一緒なのは助かるけど……。」


一華は真由と離れてしまうことが気がかりだ。


「直哉と一緒だから、真由は大丈夫だろ。」


「うん」


シンは一華が真由が一人になることを気にしていることを感知している。

やっぱ、一華の気持ちはシンに駄々洩れだ。テレパシーする必要もない。



マンションに帰り着いたシンは玄関の鍵を開ける。玄関ドアを開けると一華を先に入れて鍵を閉める。

一華は真っ先にリビングまで走っていき、「サンちゃん、ただいまー」とケージ内のサンに挨拶すると、外に出そうとする。


「にゃにゃーん……(一華、遅いにゃ、お腹すいたー。)」


「一華、先に着替えてからにしろよ。制服が毛だらけになるぞ。」


「にゃーん……(シン、先にごはんにゃー。)」


シンに注意されて、「はーい」とケージのロック解除をやめて、自室に着替えに行く。


(サンちゃんのパパだけど、私にはママみたいだな。)


シンはサンに催促されていることに「まぁ、待て、すぐやるから」と自室に行き着替えてから、タイマー式給餌器をセットする。お試しに給餌器で離乳食を与えてみることにした。

一華も着替えて給餌器の反応を見る。


数分後、中のお皿がまわりだし、ピーっと音がして止まった。サンが反応した。匂いを嗅ぎ、ムシャムシャと食べ始めた。


「にゃんにゃ……(うまいにゃ、うまいにゃ)」


「やったー。」


(これでケージ内に置いていても食べてくれるだろう。)


「でも、狭くなるね。」


サンは食べるのを止めて、「にゃんにゃぁ……(狭いにゃ)」と答えた後、また食べだした。


「学校に行ってる時だけだから、我慢だな。」


サンはまた食べるのを止めて「にゃにゃんにゃ……(仕方にゃいにゃ、早く帰って来いにゃ)」と答えた後、食べだした。


「あぁ、すまんな。」


「シンだけが会話してて、つまんなーい。何て言ったの?」


「狭い、早く帰って来いってさ。」


「あはは、そうか、狭いよねぇ。ごめんねー、サンちゃん。ケージから出すことができたら良いんだけどね。」


「今は無理だな。もう少し大人しく待てるようになってからだな。」


「にゃにゃーんにゃ……(おとにゃしいにゃ)」


「さぁな。猫被ってるんだろ。」


「にゃーんにゃ……(そんにゃことにゃいにゃ)」


「また、二人だけで話している……。私も魔界語わかるようになりたーい。」と不貞腐れる一華。


「あぁ、今度の満月に願ってみるか。」


「あぁ、……うん。まだ先だね……。」


食べ終えたサンは不貞腐れている一華の所にやってきて、猫なで声で甘えだした。

一華はサンを膝の上に抱え上げて、撫でまわした。


(癒されるなぁー)


シンは一華の沈んでた気持ちが浮上していることを感知する。


(サンのおかげで、一華の回復が早いのは助かるな。)


「にゃにゃ……(そうにゃろ)」


(お前わざとか? あざといな!)


「にゃにゃーんにゃ……(一華のことは、任せろにゃ)」


(任せない。一華は渡さないって言ってるだろ!)


「シン、サンは何て言ってるの?」


「あぁ……。一華のこと好きだってよ。」


一華を取り合いしている事は明かさず、誤魔化した。


「私もだよー。」


一華は喜んで、またサンを撫でまわしだした。毛並みに沿って優しく撫でたり、顎やお腹を撫でまわしても、サンは気持ちよさそうに目を閉じて一華の手に抗うことなくやられるままだ。


「朝と夜は離乳食を食器に入れてあげることにして、不在の時だけ、4時間間隔で2~3回分セットしておくか。」


シンは取扱説明書を見ながらセットする間隔を計算していた。


「そうだね。全て自動給餌器だと、自分たちから食べてくれなくなるかもね。」


「にゃにゃんにゃ……(そんにゃことにゃいにゃ)」


「サンが『そんなことない』ってよ。」


一華はサンを「そうなの」とまた撫でまわす。


サンはゴロゴロと撫でまわされるのを堪能している。


シンは(サンばっかり可愛がられて……)と、少しばかり嫉妬している。と思えば、一華だけに心許しているように見えるサンを(俺も撫でまわしたいし、匂いを嗅ぎたい……)と、一華にも嫉妬しているのだ。


ママとパパのサン争奪戦の幕が開く。

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