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いちにの華  作者: ゆず華
覚醒編

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第45話 スタージョンムーン【後編】

シンはついて来るなと拒まれてどうしたものかと思案していたが、魔力感知で一華の状態は追跡していた。魔力暴走だけは起こさないよう願っていた。

一華がお腹をすかせて帰って来ると思い、夕食の準備をする事にした。


一華はブランコで思案に耽っていた。出てきた夕暮れ時からだいぶ時間がたっている。気づいた時はすっかりと太陽は沈み月が顔を出している時間だ。


シンも暗くなっても帰ってこない一華を心配していた。


(探しに行くべきか? スマホは持っていたが、鍵は? 俺が探しに出ている時に帰ってきたら? どうすれば良いいんだ?)と一華に電話した。



◇◆◇



一華の気持ちはまだ揺らいでいたが、すっかり回りは暗くなっている。


「仕方ない。帰るか。」


ブランコから飛び降り、「う~ん」と伸びをした。その時、諦めようとしていた満月が目に入ってしまった。


ブレスレットはしているが、油断していたスーパームーンの強烈な光を浴びてしまった。全身に激しい衝撃を受けた後、意識は白く弾け飛び、ブランコの下に倒れ込んだ。

黒猫仁華に変身してしまった。しかも同時に満月パワーを注入してしまっていた。



一華のスマホから♪着信音♪が流れる。


「にゃ、にゃーん……(う、うーん)」


着信音で一華は意識を取り戻した。着信音は鳴っているが黒猫の姿では出られない。持って帰れないし使えない。

そのうち、着信音は鳴り止んだ。



シンは一華の魔力を感知し、テレパシーを送るが応答がない。外で魔力暴走が起きた。なんとしても見つけねばと部屋を出て探す事にした。


まずはコンビニに向かうが、一華はいない。次に向かうはどこだ?

今まで行ったことがあるのは公園、駅、学校。

公園の方から魔力の強さを感じる。公園に向かう事にした。



「***(連絡取れにゃいにゃし、仕方にゃいにゃ、テレパシーするにゃ。)***」


シンに向けてテレパシーを送ると、近くまで来ていたシンに届く。


「***(一華か? 大丈夫なのか? どこだ?)***」


「***(公園のブランコにゃー)***」


「***(仁華になったのか?)***」


「***(そうにゃ、今日はブレスレット効かにゃかったにゃー)***」


そう言っているうちにシンが公園に着いた。急いでブランコの下にいる仁華を抱き上げる。


「***(貞操の危機脱出にゃー)***」


「***(お、おまえ、てっ、貞操の危機って……襲われたのか?)***」


「***(黒猫の姿で外出したら、野良猫に襲われるって、ママに禁止されていたにゃ)***」


「***(スマホ取ってにゃ)***」


一華はスマホを心配する。ブランコ下に落ちていた一華のスマホを拾いあげる。


「***(スマホだけか? ブレスレットは?)***」


仁華の前足に引っかかっていたブレスレットを見せる。


「***(話は後だ。とりあえず帰るぞ。)***」


シンは仁華を抱いて急いで帰る。


ひとつだけ気掛かりがある。


(一華の姿で出ていき、仁華の姿で帰っている。防犯カメラに映っているはずだ。どうにかしないと。)


シンは思案しながら急いでいるが、一華はシンの顔を見上げながら、(どう謝ろうか)とこちらも思案している。


二人は無事部屋に帰り着いた。仁華を下ろす。


「一華に戻れるか?」


黒猫仁華から元の一華の姿に戻った。

シンは元の姿に戻った一華を抱きしめて、ものすごく安堵し謝ってきた。


「無事でよかったー。言い過ぎた悪かったごめん。」


一華は「く、苦しいー」ともがきだす。

シンは抱きしめていた腕の力を緩めて、また「ごめん」と謝った。


一華は何度も謝るシンに自分も謝る事にした。


「私もごめん、調子に乗り過ぎた。」


「私が悪い例を出したのは……何が犯罪かを知っていないと、本当に正しく魔力を使えないと思ったからだよ。やって良い事と悪い事の判断はできるから。……無知ほど怖いものはないし、無知は身を滅ぼす……。」


「やって良い事、悪い事の判断? 無知は身を滅ぼす?」


「そう、人間やろうと思えば悪い事っていくらでも出来るけど、法治国家である以上は、法律が善悪を決める。できる事でも犯罪になると言うことを知っていなければ、して良い事はわからないじゃない?」


「……例えば、オンラインカジノが有名だよ。この国ではカジノは違法だけど、合法の国・場所に行けば認められてる。合法の国でサイトを開いて、違法の国にいる人達も参加できる…………、この国にいる限り違法なのに大丈夫と言われて何万人も利用してた。実際、捕まった人の中には『犯罪とは知らなかった』なんて言う人はいくらでもいたし。誰もがカジノが違法という事は知っているから、分かりそうなことなんだけどね。」


「あー、そうだな、魔界は法治国家じゃないから『出来ることはやってしまう』のが常識だった。考え方を改めないとな。人間界では俺が、魔界では一華が。」


「本当に悪かった。お腹空いたろう、ご飯にしよう。」


シンが作っていたハッシュドビーフを温め直して食べる事にした。


「シン、ありがとう。泣きながら作ったんだね。」


「……泣きながらではない。刺激に涙が出ただけだ。」


「ははは、もう、強がらなくていいよ。美味しいよ。ありがとう。」


一華はシンが一人で料理してくれていたことにお礼を言ったつもりだ。決してからかったわけではない。


シンは部屋を出てからの事を聞いてきた。

一華はコンビニ寄った後、理那と浩輔に出会って公園で私を心配してた事、気づいたら暗くなって帰ろうとブランコから降りて伸びをしたら意識を失って仁華に変身していた事をシンに説明した。


「理那と浩輔が、なんで二人なんだ?」


「デートの帰りに理那ん家まで送り届ける所だったみたい。」


「デ、デート? 二人でか? 直哉と真由はいないのか?」


「うん、浩輔君って紳士だね。理那、愛されてるよねぇ。」


「そ、そうか。それで、満月見た時お願いしたのか?」


「する暇なかったよー、一瞬だったもん。」


「スーパームーンはさらに強大な力なんだろうか?」


「魔力が覚醒するかはわからないけど、テレポーテーションだとしても大丈夫だから。善悪の判断できるから心配しないで良いよ。」


「わかった。また、いつ覚醒するかもわからないんだよな。」


「そうだね。でも、テレポーテーションする事って、無さそうだけどね。」


「あ、それと、理那と浩輔君に心配させちゃったから、『シンと遊びでテレポーテーションができるようになったらどうする?って言う話になって……海外旅行は密入国かなとか、遊園地や映画館の入場料も支払い必要なくなるね。なんて言ったら、シンが悪に使うのか?とか犯罪だぞとか、しまいにはサイコパスかって言い出した。』って説明しておいた。」


「説明しておいたって……(完全に俺が悪だな……)」


シンはテレポーテーションする必要がないと言う一華に、今までのやり取りはなんだったのかと振り回されている事に気づいた。


(俺が悪魔なら、一華は小悪魔か…!?)


脱力感に襲われた日が終わろうとしていたが、まだやり残した事がある。公園の監視カメラは翌朝確認するとして、今日はマンションのカメラ画像だけ処理すれば良いはずだ。


魔力で探索する。

(……17時過ぎ……とこれか。一華の画像部分だけ……削除完了。)

(フー)



◇◆◇



翌朝、夜が明けきる前に、一華が起きないようジョギングと偽装して公園へ行き、監視カメラを確認する。

ブランコが映りそうな所は出入口と奥に1台、近くの人家には無さそうだ。


魔力で探索する。

(……データ保存場所……公園の管理は自治会なら……あった。昨日の夜19時半ごろ……これか……削除完了。)

(フー)


シンは、他に痕跡がないかを探索しつつ、昨日一華を追いかけて行かなかったことが俺の失態だと淡々と後始末していった。


一華はシンがカメラ画像の削除に魔力を使っていることも知らず、クーラーのかかった自室のお姫様ベッドの布団に包まれて熟睡中だ。


シンは一華が起きないよう静かにマンションに帰ってきた。

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