第19話 中間試験の「課題」
ゴールデンウィーク直前の金曜日。ホームルームで担任教師から「来月の中旬から中間試験が始まります。ゴールデンウィーク期間中は遊びばかりせず試験勉強も始めておくように。」と注意され、重い気持ちで帰宅した一華。
夕食中、食卓には沈んだ空気が流れていた。
箸を持ちながら、遠い目をしている一華。
(テスト勉強か……ゴールデンウィーク、何しようと思ってたんだろう……)
一華の魔力の流れが滞っているのを感じ、心配そうに聞くシン。
「どうした。どこか遠いところ見て?」
一華は重い口を開き吐露した。
「テスト勉強……。」
「ああ、ゴールデンウィーク明けた後だよな。」
一華はため息をつき続ける。
「あんまり自信ない。受験は頑張ったけど、入学してからは授業は受けてても、全然手応えがないし……。この1ヶ月、家事と訓練だけしてたような……。」
冷静に分析するシン。
「ゴールデンウィークは遊びを控えて、勉強に集中するか? 毎日きちんと復習していれば、特にテスト勉強なんて必要ないはずだが。」
一華はシンをじっと見つめる。
「シンって、授業を聞いただけで全部頭に入るタイプ?」
少し視線を逸らし、曖昧な返事をするシン。
「そう……みたいだな、というより、人間界の勉強なんて基礎ができていないから、全て魔力で補っているんだ。」
驚愕と憤慨で問い詰める一華。
「えーっ!? 受験だけでなく、中間テストも魔力で乗り切るつもりなの!? ずるくない? 私と一緒に、自力で受けようよ!」
シンは表情を硬くして
「それでもいいが、俺が仮に留年したらどう護衛するんだ? 一華の下級生になって、監視の目が届かなくなるぞ。」
目を見開く一華。
「??? 授業は聞いてるふりしてるだけなの?」
シンは正直に告白する。
「人間界の高度な専門知識や文法は、魔界のデータとは全く違う。基礎が出来ていないから、自力で理解するのは無理だな。試験で良い成績を収めることこそが、任務上、最も重要だから、魔力を使うしかない。」
一華はショックで肩を落としながら「はっきり、断言しなくても……。」
「……シンが魔力でテスト受けて進学できても、私が留年したらどうするの? クラスが離れたら、護衛しづらいでしょ。」
シンは真顔になり、「そうならない為に、一華はゴールデンウィーク期間中勉強一筋だな。自力で進学してくれ。」
「えー! なんか他人事だねぇ! シンは勉強できる感じを醸し出してるんだから、私に教えれるんじゃないの!?」
不満が爆発した一華に、シンは一瞬考え込み、一華の負担軽減と成績向上という二つの任務を統合することを決断する。
「どうだろうな。俺の魔力での『理解』が、一華の「自力」に変換できるか。明日から試しにやってみるか。夕食後、魔力訓練の前に、まずゴールデンウィークの学習計画を立てよう。」
(ずるい! 私だけ、家事と訓練と勉強の三重苦!? でも、シンが留年したら本当に困るし、一緒にいられなくなるのは嫌だ。私を下級生扱いするなんて絶対嫌! どうせ魔力を使うなら、私の成績を上げるために使ってよ!)
(一華の成績不振は、護衛任務上の最大の穴だ。来年クラスが別れる可能性は、絶対に排除しなければならない。俺の脳内の魔力データが、一華の脳内の「理解」として機能するか? これは新しい試みだ。俺の役割が、護衛から教師へと拡大する。一華が僕に頼ってくれるなら、一華のストレス軽減にも繋がる。試験を乗り切るため、この一週間は、勉強が最優先任務だ。)




