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いちにの華  作者: ゆず華
高校生編

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17/26

第17話 癒し

連休初日の土曜日。先週は遊園地で楽しい思い出を作れたが、今日は様子が違った。

昨夜、一華が口にした「仁華は誰かの役に立ちたい」という言葉は、一華自身の真の願望をさらけ出すことになり、その重みが頭の中でぐるぐると反芻し、寝不足で遅くに起きてきた。


寝不足で重く沈んでいる一華の感情を、シンは魔力感知で即座に察知していた。


(昨日、一華が自分の本心を語ったことで、かえって精神的な疲労が増している。訓練や家事の負担は軽減したが、この心の沈みをどうにかしなければ、魔力制御に悪影響が出るな。さて、どうするか。)


シンは思考を切り替え、明るい提案をする。


「昼食は、おしゃれなカフェにでも行くか?」


驚いて、顔を上げる一華。


「えっ、いいの?」


「あぁ。前言ったろう、今後の参考になるものも食べに行こうと。」


「遊園地のレストランで言ったね。」


「何が食べたい? どこ行きたい?」


「食べに行きたいのはカフェで、おしゃれすぎて料理の参考になりそうにないんだけど……。料理の参考にしたいのは、家で作る前提だから、生姜焼きとか肉野菜炒めとかかな。」


(やはり、願望と任務は乖離しているな。さてどうするか。)と再度思案する。


「自分で作れないカフェの料理を楽しみたい。ダメ?」


一華は遠慮がちに聞く。

シンは即座に笑顔で答える。


「いいよ、行こう。一華が喜ぶ料理が、今の君の魔力安定には優先だ。」


一華はパッと表情が明るくなる。


「やったー、行こう行こう!」


シンはスマホで近くのカフェを検索し始めた。

一華は自分の部屋に戻り、沈んだ気持ちを吹き飛ばすように、少し可愛い服に着替えてきた。

シンも目星をつけたカフェが見つかり、急いで私服に着替えてリビングに戻ってきた。


「駅近で良かったよ。駅前のカフェ、ここでどう?」


スマホの画面を覗き込みながら「わぁ、美味しそうなとこ発掘だね。」


「良ければ、また行けるし。」


「だね。じゃあ、しゅっぱーつ!」


二人は家を出る。スマホの地図情報を見ながら、並んで目的地まで歩いていく。他愛もない学校での出来事や、週末の予定を言い合っていると、程なく目的地に着き、カフェに入っていった。


二人はメニュー表を見て、お昼限定のワンプレートランチをチョイスした。少しずつ、いろんな料理が一つのお皿に乗せられている。


お皿を見ながら「今日のは半分こ出来ないね。」


「毎回、半分こはしなくていいよ。一華が好きなものを好きなだけ食べればいい。」


シンは優しく答える。

程なくして二人のワンプレートランチがテーブルに置かれた。


「こんなに綺麗に盛り付けるの、センスいるね。」


シンは真面目に分析中。


「俺には、どう盛り付ければ視覚的に安定するか、考えつかないな。」


「ね! 料理の技術じゃなくて、盛り付けのセンスを真似るのもありかも。」


「これなんだろうね」「美味しいね」と言いながら、二人はゆっくりと時間をかけてランチを堪能した。会話と美味しい料理のおかげで、沈んでいた一華の気持ちが上向いてきたのをシンは感じ取っていた。


食べ終えてシンが会計を済まして一緒にカフェを出る。

一華はランチに満足して次のプランがあるか聞いた。


「ごちそうさま! この後、どこか考えてる?」


「ん? いや。」


「じゃあ、DVDレンタルしない? あと、パン屋さんでいつもと違うパン買いたい! クロワッサンで明日の朝食とか? DVD見てる時の小腹すいたようにとか!」


「いいな。先にDVDレンタルしに行くか?」と即座に行動に移す。


二人は近くのレンタルショップに歩いていく。店内を歩きながら、一華はわくわくしている。


「何か見たいのある?」


「一華にまかせるよ。」


「じゃあ私が見たいのでいい?」と、シンにはタイトルを隠してDVDのケースを持ってカウンターへ置く。


初めてのショップだったので一華の名前で入会手続きを済ませ、DVDを受取る。今度はパン屋まで二人は並んで歩きだす。


パン屋に入ると、一華はトレイとトングを持って、クロワッサン、具材いっぱい挟まれたサンドイッチ、カレーパン、コロッケロール、アップルパイと、定番のパンだけでも目移りして決められない。


「目移りして決まらない! シンが好きそうなものある?」


「今回も半分こすれば?」


「うーん、それでも食べきれないかも!」


「じゃあ、今すぐ食べたいものは?」


「おやつにアップルパイかな!」


「じゃあ、明日のクロワッサン2個、アップルパイ、コロッケロールでどうだ?」


シンは合理的に計算し、明日の朝食も考慮して提案する。


「シン、それだけで足りる?」


「明日はスクランブルエッグを作るよ。」


会計を済ませ、丁寧に袋詰めされたパンを受け取る。シンがパンの袋とDVDの袋も持って一緒に帰路につく。


一華が「あっ」と思い出し、途中のコンビニで男子定番の炭酸飲料『◯ーラ』を買った。



◇◆◇



マンションに着き、二人は部屋着に着替えてリビングへ。一華は、これからDVDが見れるとウキウキだ。


お皿に移したアップルパイとコロッケロール、男子定番の炭酸飲料、氷を入れたグラス2個をスタンバイし、まずはDVDをセットした。


喉が渇いたので、シンは一華に促されて〇ーラを飲む。

一口飲んで、目を丸くするシン。


「うわっ、何これ!? 口の中がシュワシュワする!」


あははと笑う一華。


「これが炭酸飲料だよ。◯ーラは男子みんな好きだよ!」


(ワサビとは違う、心地よい刺激だ。)


「もう一口飲みたくなるな。」


「飲みすぎるとゲップが出るからね!」と注意する。


一華はアップルパイを、シンはコロッケロールを一口食べ、再び◯ーラを飲む。


「美味いな。」


「でしょ?」と言いながら、アップルパイをすくったフォークをシンに向け、食べさせる。


「ん、これはどう?」


シンはフォークにのっているアップルパイを一華が向けてきたことに戸惑ったが、(ここは従った方が良いのか…?)と思い構わずかぶりつく。


「ん、美味い」と口元を緩めたが、一華からの直接的な給餌に、真っ赤にした顔が戻らない。


一華は嬉しそうに見ていると、テレビ画面に白馬に跨った主人公が映し出された。

シンは見たこともない姿に、頭の中は「???」状態だ。


「メリーゴーランドの動画は、これのオマージュなんだよ!」


「オマージュ?」


「主人公の将軍様が白馬に跨ってるでしょ。シンはいずれ魔王になるから、将軍と似てるし。『白馬の王子様』は西洋のおとぎ話だけどね。シンにはぴったりだったから、オマージュしたくなったの。」


シンは遊園地での自分の行動の理由を知り、赤面が引かない。


「このヘアスタイルと服は……初めて見た。」


「この国の江戸時代がモチーフだから。今では時代劇でしか見ないけど。あ、でも、この時代は着物が主で、主人公は武士だから『袴』を穿いているの。武士っていうのは身分ね。男子の中には結婚式や成人式でも着てるのニュースで見たことある。」


シンはハッとして、画面の名前と自分の設定上の名前に気づく。


「この主人公と同じ名前……一緒……。」


「うん。それに、表の顔と違い、普段は庶民として世の中を見て、困った人がいれば成敗するの。しかも、本当に斬ったりしないんだよ。みね打ちだから、捕まえた後、法に則ってきちんと処罰するの。」


「これこそヒーローだと思わない?」


シンは深く頷く。


(力を持った者が、法と秩序に従い、弱い者を助ける……これこそ、真の王族の姿だ。)


「確かに。見倣う模範とするに相応しいな。」


「でしょ! 私、小さいころから大好きなんだ!」とアップルパイを口に入れて、またシンにも食べさせる。


シンのコロッケロールは一向に減らない。


シンは自分の皿を差し出す。


「一華もコロッケロール食べるか?」


「じゃあ、一口だけ!」


シンに手でちぎってもらい、頬張る。


「美味しい! ソースが染みたコロッケとマヨネーズの調和が最高!」


シンはコロッケロールと炭酸飲料が交互に胃の中に収まっていく。


「ゲッ」


とうとうゲップが出てきてしまった。


「あはは」


一華に笑われてしまったシンは顔を真っ赤にしている。


「フー、これも鼻に対する刺激だな。人間は刺激が好きなんだな。」


「そうだね。基本、平和だからかなぁ?」


二人は、時代劇の次のエピソードが映し出されるのを見つめた。


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