ACT,8
朝の放送──“タイツ禁止令”ふたたび
「……本日より、火災リスクの高まりを受け、校則を一部改定します。
防災指導に基づき、化学繊維製タイツの着用を当面禁止とします。
繰り返します──女子生徒は“タイツを脱いで”登校してください」
その声がスピーカーから流れた瞬間、教室が凍りついた。
タイツに包まれた何十本もの脚が、視線を避けるように震える。
スイは、自分の青タイツを膝下で撫でた。
まだ冷たい。燃えてなんかいない。
だけど――
「……命令されてまで脱ぐつもりは、ない」
全校集会──布と炎と無関心
体育館。全校生徒が並ぶ中、教師陣が順に注意を始める。
「今朝、区内の民家で衣類発火事故が発生しました。
ナイロン素材、特に高密着のタイツやストッキングが高温で発火する事例が複数……」
スクリーンには、黒く焼け焦げた布の写真。
だが、ゼンタイジャーの5人は視線をそらさなかった。
「……これって、本当に偶然か?」
「誰も敵なんていないのよ。誰かが私たちを守るためって言ってるの。でも、“脱げ”って言葉は、守りじゃない。」
選択──スカートの下、何を履くか
昼休み。生徒たちの脚元はまばらになっていた。
生脚。ハイソックス。ジャージ下。レギンス。
その中で、5人の脚だけが、変わらず“タイツに包まれていた”。
ユヅキは、赤いタイツの脚で階段を登る。
「履いてるだけで、危険だって言われる。でも、脱げって言われた方がムカつく」
ナツミはスカートの裾を押さえながら笑った。
「燃えたっていいよ!焼けるくらい、私たちの脚、誇ってんだから!」
午後の異常──黒煙の予兆
放課後。図書室の隅で異変が起きた。
生徒の鞄から煙が立ち上る。
中に入っていたのは、予備の黒タイツ。
触れた瞬間、化学反応のように熱を帯び、糸が焦げていく。
「発火……!? でも、なんで……」
マリアが駆け寄る。
黄色いラメ入りのタイツが陽光に反射して光る。
「これって、素材じゃなくて“意志のない布”だけが燃やされてる気がする……」
無造作に畳まれた、履かれていないタイツが、ひとりでに発火する。
まるで――**“履いてないタイツは、意味がない”**と言われているかのように。
ゼンタイスーツ起動──誓いの脚は、燃えない
夕暮れの屋上。突風が吹く。
スイは制服のスカートを押さえながら、深く息を吐く。
「誰も責めてない。敵なんていない。
でも、“見えない圧力”って、こういうものなのね……」
隣でレンカが呟いた。
「脱ぐか、履き続けるか。
選ばせるフリして、“従わせる”だけ。……そんなの、正義じゃない」
5人はゆっくりと並び、脚を前へ出す。
「全身装着――ゼンタイレッド!」
「ゼンタイブルー!」
「ゼンタイグリーン!」
「ゼンタイイエロー!」
「ゼンタイブラック!」
脚から光が走る。
今回、光は特に強く、炎のように揺らめいていた。
でも――
スーツは燃えない。
どれだけ光に包まれても、熱に曝されても。
それは、誓いで織られた布だから。
ラストシーン──炎の中の誓い
図書館で燃えたタイツの残骸の前に、
スイは自分の青タイツの脚をそっと重ねた。
「布が燃えても、私たちの脚は焼けない」
「だって、私たちは――見せるためじゃない。脱がないために履いてるんだから」




