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全身戦隊ゼンタイジャー  作者: まとら 魔術


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2/14

ACT.1

 放課後の雨は、制服の裾を重たく湿らせていた。

 空はもうすっかり鉛色で、歩道を打つ水の音だけが、街のざわめきを消している。


「ったく……いきなり降りやがって」


 火ノ宮ユヅキは赤いタイツの脚をぐしゃ、と濡れたアスファルトに踏み出した。スカートの裾が張り付いて、太ももにまとわりつく感触。視線を感じる。向かいから歩いてきた男子高校生が、赤い脚を盗み見ていた。


「そんなに見たいなら、見せてやろーか?」


 啖呵を切りたい衝動を抑えて、彼女は足を早める。羞恥は、既に毎日の一部。ゼンタイジャーに選ばれた時から、脚は「正義を晒す場所」になった。


「だけど、今日は……違う」


 胸騒ぎがする。スマホには、ゼンタイ本部からの連絡。

 “市内にて未確認の敵性エネルギー反応、出現”

 しかもそれは──女子更衣室に現れた、という最悪の場所だった。


教室──午後5時


 青いタイツを穿いた水無月スイは、窓の外の雨を見つめていた。静かで、冷たい空模様。

 そのふくらはぎには、水滴がつうっと伝って落ちていく。スカートの隙間から覗く青が、校舎の蛍光灯に濡れて光っていた。


「スイ、そろそろ行くわよ。ユヅキから集合かかった」


 黒いタイツを履いた少女──黒羽レンカが無言で鞄を肩にかける。

 密着する黒のタイツは、雨で光沢を帯び、指先からつま先までを鋭利に縁取っていた。


女子更衣室──封鎖された聖域


「ここか……っ」


 ナツミの緑のタイツが水たまりを跳ね、廊下に足跡を残す。扉の前に立つと、すでに空気が違っていた。


 そして──その中にいた。


「オマエタチ……ゼンタイ……タイツ……ステキ……ゼンタイニシタイ……ゼンタイニシタイ……!」


 そこに立っていたのは、ゼンタイを模した不気味な怪人、名を『コスリャクシャ』。人間の羞恥心を吸って力を増す、変態を極めた怪物。


 ナツミの脚がすくんだ。


 緑のタイツの太ももが、震える。水で透けて、下着のラインが浮かんでいた。


「うう……こんな姿、こんなトコで……!」


「ナツミ!」


 駆け込んだユヅキが叫んだ。


「恥ずかしくて当たり前だ!けど、見せる覚悟がなきゃ、あたしらが脚に履いてるもんの意味がなくなるだろ!」


 ユヅキは前へ出る。

 スカートをたくし上げ、赤い太ももを雨と汗に濡らしながら突き出した。

 羞恥心が震え、そして、覚悟が発火する。


変身──“全身装着、ゼンタイレッド!”


 「全身装着──ゼンタイレッド!!」


 脚元のタイツが発光する。

 発光は膝へ、太ももへ、腰へ、腹部へ……

 赤いタイツが皮膚に吸いつくように上へと這い上がる。


 胸が、腕が、指先が、顔が──布で包まれていく。


 最後に、頭部を包む布が静かに降りてくる。


 恥ずかしさを包み隠すのではない、

 羞恥を全身に封じ込め、誇りに変えるためのゼンタイ。


 「ゼンタイレッド、出撃……!」


バトル:濡れたゼンタイの戦い


「タイツノナカ、ミセテ……ゼンタイ……ゼンタイ……!」


 コスリャクシャの触手が、ゼンタイレッドに絡みつこうとする。


 が、レッドの脚が火花を撒いて一閃!


「うっせえ変態野郎!このタイツの脚で、ぶっ飛べぇぇぇぇ!!」


 ハイキックが空を切り裂き、怪人の顎を弾き飛ばす。

 ゼンタイ越しの太ももが濡れ光りながら、正義を貫いた。


 「ゼンタイグリーン、遅れて登場ぅぅうっ!!わああ脚びっしょびしょおおおっ!!」

 「ゼンタイブルー、穏やかに制圧しますね……♪」

 「ゼンタイイエロー、美脚の代償は、高くつくのよ♡」

 「ゼンタイブラック……羞恥?知らないわ」


戦闘終了──そして伝説は始まった


 雨が止み、怪人の残骸が煙となって消える。


 全身タイツに包まれた5人の少女たちが、校舎の屋上で並び立った。

 スーツ越しでも、濡れた脚の感触が残っている。


「見せたくて見せてるんじゃねえ。それでも見られるなら、見せてやる。これがあたしたちの──覚悟だ」


「全身戦隊──ゼンタイジャー!」


 こうして、タイツを纏いし羞恥の戦士たちの戦いは、始まったのだった。

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