ACT.FINAL
新学期。布の風、香る春。
春の制服。桜と靴音。
けれどこの学校の春は**「布の音」が混ざる。**
女子生徒たちの脚は、全員“義務として”タイツを履いていた。
黒、ネイビー、グレー、そして一部はカラー。
スカートから覗く脚線は、規則であり、文化であり、誇りだった。
そして、ゼンタイ部の布も――続いていた。
入部希望殺到!?脚で語る面接会
「ゼンタイ部、見学希望者、今日だけで11人だって」
部室のドアの向こう、ざわつきと笑い声。
1年生たちが緊張した顔で布を見つめている。
「布越しに表情が見えないのが、逆に落ち着くって……」
「脚に自信なくても包んでくれるのがいい……って」
「布の中で“自分になれる”って、そう言ってた……」
2年になったナツミは、緑のタイツの膝を抱えて笑った。
「新しいゼンタイジャー、できちゃうかもね」
そして、ただ一人の“拒否者”
その日、唯一布を履いていなかった新入生がいた。
佐倉うるは。
制服の下、脚には何も纏っていなかった。
素足。
「なんでみんな、そんなもの履くの……?
脚って、見せるためのもんでしょ?」
彼女は言った。タイツを見下すように。
「タイツで誤魔化して、隠して、それで“本当の自分”って言えるわけ?」
「布は、“見せない”ためにあるんだよ」
それを聞いて、マリアがふわりと微笑んだ。
春でも光沢のあるイエロータイツに包まれた脚を、揃えて一歩前に出る。
「見せたいから履くんじゃない。
“見せたくない日”にも歩けるように、布を履くの」
その声に、うるはは言葉を失った。
ゼンタイ部の5人は、全員、脚を揃えて向き直る。
赤・青・緑・黄・黒。
かつてのゼンタイジャーが、新たな“布の伝道者”として立ち上がる。
“布の部屋”──体験ゼンタイブース
歓迎会で用意された、ゼンタイ部の体験ブース。
中は布で覆われ、試着室には無数の色とサイズのゼンタイスーツ。
うるはは試しに、黒のタイツだけを持って、鏡の前に立つ。
脚に滑り込むナイロンの音。
肌を包み、締めつけ、整えていく。
「……苦しいはずなのに、落ち着く……なにこれ……」
その瞬間、うるはの“脚”が、世界と繋がった。
入部希望、脚で語る
その日の午後、うるはは制服のまま、黒タイツを履いた姿で部室を訪れた。
スカートから伸びる布脚。
拒否していたはずの“隠された脚”が、今は自分を守るように在る。
「……まだ全部わかったわけじゃない。
でも……この布で、歩いてみたいと思った」
ナツミがそっと、彼女のタイツの膝に手を置いた。
「それが、ゼンタイのはじまりだよ」
卒業生からの手紙──脚は受け継がれる
その夜、部室のロッカーに置かれていた一通の封筒。
卒業したスイからだった。
「ゼンタイを履いたまま、大人になった私です。
まだ布を脱いでません。
会社にも、脚線のポリシー、持ち込んでます。
見せない自由と、包む強さ。
それが、ゼンタイで得たすべてでした。」
読み終えたナツミは、そっと膝の上のタイツを撫でた。
新しいゼンタイ部の1年生たちが、もう明日の布を選んでいる。
そして脚は歩き出す
桜の花びらが舞う放課後。
校門を出る女子生徒たちの脚には、さまざまな色のタイツ。
その中に、かつて拒否者だったうるはの姿。
黒いタイツの脚で、一歩ずつ、前へ歩いていた。
スカートは揺れ、タイツは光を吸い込む。
布の中にあるのは、まだ見せたくない、でも確かに在る“自分”。




