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全身戦隊ゼンタイジャー  作者: まとら 魔術


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13/14

ACT.12


 卒業式前日──ゼンタイ通達


「今年度の卒業式における3年生女子の正装について、

 全身ゼンタイスーツ(各自希望色)を許可します。

 なお、靴・スカート・上履きの着用義務は解除され、布地にて統一可。

 布越しでのセレモニー参加を、学校として正式に認めます。」


 通達を見た瞬間、

 1年のナツミは机の下で脚をぎゅっと抱いた。


「……本当に、卒業するんだ。布のままで」


 「見せて、歩いて、泣いて、卒業するんだ」

 スイの青タイツの膝に、朝の光が透けていた。


 式当日──ゼンタイセレモニー、開幕


 朝8時。体育館の正面ステージに、5色の布を纏った3年生たちが並ぶ。


 全身ゼンタイスーツ。

 顔も指先もすべて包まれたまま。

 それぞれの誓いが色で語られる。

 赤は情熱。青は静けさ。緑は元気。黄は美学。そして黒は覚悟。


 そして、脚。

 生徒たちは椅子に座るときも、立つときも、背筋を伸ばして脚線を崩さない。

 それが、卒業式における“布の礼儀”だった。


 送辞──ユヅキの最後の叫び


 マイクの前に立ったのは、ゼンタイレッド・ユヅキ。

 全身タイツのまま、胸を張って言葉を投げた。


「最初は恥ずかしかった。布で全部を隠すのが、見られるのが、脚を晒すのが。

 でも、やってやるって思った。

 この布を脱がずに、ここまで歩いてきたことが、あたしの“正解”だったって、今なら言える。」


 深く一礼。

 真っ赤なゼンタイのまま、脚をそろえて。

 体育館全体が、拍手ではなく、静けさで応えた。


 答辞──3年生代表のゼンタイウォーク


 卒業証書を受け取る代表は、ゼンタイブラックの3年生だった。

 階段を上がる脚。

 黒の布が、脚の筋と関節をすべて包み込む。

 スカートもヒールもない。

 音もなく歩く。

 でも、ひとつひとつの歩みが、重い。


 布の中で嗚咽が漏れた。

 「ありがとう」と口を動かすのがわかる。声は出ない。

 だけど、その姿は、どんな言葉よりも強かった。


 退場──涙と布の中の熱


 卒業生たちは全員、ゼンタイ姿のまま体育館を後にする。

 体育館出口、在校生が並ぶ花道。

 そこに立つ後輩たち――全員、脚にタイツを履いていた。


 制服の下、色とりどりのタイツが揃う。

 その中で、1年のナツミがゼンタイグリーンのまま叫んだ。


「ありがとう!見せてくれて……!

 履き続けてくれて、ありがとう!!」


 卒業生たちは立ち止まり、ひとりずつ静かに頷いた。

 顔は布で隠れても、その頷きの角度、脚の張り、手の指先がすべてを語っていた。


 式後──更衣室にて


 更衣室の奥、誰もいない鏡の前で、

 スイが青い布のフードをゆっくり脱ぐ。

 マスクの内側に溜まっていた涙の熱が、冷たい空気に触れてすうっと引いていく。


 脚はまだ布に包まれたまま。


「卒業しても、履いてていいよね……?」


 誰に言うでもなく、布の下の自分に問いかけていた。

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