表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全身戦隊ゼンタイジャー  作者: まとら 魔術


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/14

ACT.9

冒頭:ニュース速報


『本日、政府は“非生活必需布製品課税法案”、通称「タイツ税法案」を閣議決定。

今後、化学繊維製の着圧衣類、特にタイツやゼンタイ素材に対し、1着あたり月額3,000円の課税を行う方針です。』


 教室中が、静まり返った。

 スマホを見ていた女子生徒たちが、次々に顔を青ざめさせる。

 脚に意識が集まり、スカートの下の布地が“重く”感じられるようになっていた。


「これは……嫌がらせよ」

 マリアが、足を組みながらラメ入りのタイツを爪で軽く弾いた。

 音もなく沈んだその布は、どこか怯えているようにも見えた。


放課後:購買部の告知


「本日より、タイツ類の販売価格は全て3,000円アップとなります。申し訳ありません」


 購買部のガラス越し、黒タイツの在庫は既に“購入予約済”の札が貼られていた。

 値札を見て、1年生の女子がぽつりと言った。


「……タイツ履くのって、金持ちだけなの?」


 スイはその背中を見つめていた。

 羞恥と金額が、直結してしまった社会。

 脚を隠すだけで、罰金を取られるような世の中。

 静かに、唇を結んだ。


夜──イエローの決断


 マリアの家。

 鏡の前で、黄色のグロスラメタイツを履いたまま、座っている。

 テーブルの上には、“未払い通知書”。


「毎月15,000円……5色分揃えるだけで。もう、パパにも言えない」


 だが、脱ごうとしない。

 指をタイツの腰元にかけても、スッと引き下ろせない。

 脱ぐ=敗北、ではない。ただ、脱げない。それだけだった。


「この脚、見られて生きてきたんだもん。

 課金されたくらいで、隠したくなるわけないじゃない……!」


昼の生徒会放送:タイツ投票制導入


『来週月曜より、女子生徒による“タイツ継続投票”を実施します。

校内でのタイツ着用を続けたい者は署名を、

廃止を望む者は生脚同盟に参加登録を。

多数決により、来月からの校則が決定されます。』


 ナツミの叫びが教室に響く。


「なにそれ!? 脚で選挙させるの!?

 これってさ、“見せる勇気”を“恥の料金”で測ろうとしてるじゃん!」


日曜日──静かな行進


 その日、ユヅキたちはスカートの下にタイツを履いたまま街を歩いた。

 何も言わず、音楽も流さず、ただ歩く。

 羞恥も、法律も、世論も、越えるために。


 すれ違う人々が二度見する。

 「今どきまだタイツ?」「課金してまで履く意味ある?」

 でも、誰ひとり視線に怯まなかった。


「意味?知らねぇよ。履いてなきゃ、落ち着かねぇだけだよ」


 ユヅキの赤いタイツは、夕陽を受けて燃えていた。


月曜:投票の朝


 校舎前に設置された仮設ブース。

 “履く”か“脱ぐ”か、票を入れる透明ボックスが並んでいる。

 教師たちは静観。男子たちは興味本位。

 だが、女子たちは震えていた。


 脚を晒すのか。タイツを貫くのか。

 その選択が、“私らしさ”を計る物差しにされていた。


スイのスピーチ


 マイクを握ったスイが、校舎の階段に立つ。

 青タイツの脚がスカートの下で真っ直ぐ伸びていた。


「羞恥は、見られることで始まるものじゃない。

 脱げと言われたときに、初めて生まれるものです。」


「私たちは、強制されても履き続けてきました。

 でも今日、私は“脱がない”と、自分で選びます。

 それが、ゼンタイじゃなくても、誇れる生き方だから」


 拍手はなかった。

 だけど、次々に女子生徒たちが“履く”票を投じていく。


結果──票は割れた


●履く:213票

●脱ぐ:198票


 僅差だった。

 でも、勝った。


「……でもまだ、半分は“脱ぎたかった”んだよね」


 ナツミの声に、マリアが応える。


「それでも、履いた方が負けなかった。

 それだけで、今は十分」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ