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神牛一刀流〜近未来剣客浪漫譚〜  作者: ひろひさ


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神牛一刀流 対 秘剣二刀流

 時は現在、3月11日、月曜日。午前9時57分。天気、快晴。


 健太郎は壁の外を1人、車でひた走る。潰れた家屋、ひび割れたアスファルト、草木生い茂る世界が前から後ろへと流れていった。


 見られてるな…………。


 壁の外に出てからずっと、誰かの視線を感じている。


 気探りか? ――いや、『千里眼』か…………。


 もしくはそういう能力なのか。今のままでは考えられる可能性が多すぎる。


 またしても単独行動をしている理由は、香織からしばらく1人で行動するよう言われたからだ。それは先日のナインヘッド構成員との一件である。組織に潜伏している公安と香織の協力者からの情報で、健太郎を始末するよう天木が殺し屋を雇ったと伝えられ、万が一のことを考えての対応であった。


 香織はそれ以上具体的な指示はしなかった為、それはつまり、思いっ切り暴れて注意を引け、ということであるのだろうと健太郎は理解する。


 まあ、例の殺し屋だろうな……。


 墜ち人を探しているように見せかけ、これからどう行動すべきか。その作戦を思案していた。


 こっちも気を探れば気付かれるだろうし、かと言ってこのまま黙って情報を渡し続けるってのも気に入らねぇなぁ……。


 さて、どうするか……。そんなことを考えながらしばらく車を走らせていると健太郎はヨシと、その腹を決めて行動に移す。


 いっちょ、おちょくってやるか!!


 こうして健太郎は車を河川敷へと走らせるのであった。




 どこに向かう気だ……。


 木島は気の操作によって、『遠見とおみ』や『千里眼』と呼ばれる離れた場所を視認する技で健太郎のことを監視している。健太郎にはまだできない芸当だ。


 潜伏場所は居住区域とナインヘッドアジトの中間地点にあり、居住区内から監視しなかったのは、やはり香織を恐れてのことであった。


 木島は長い髪を一つに纏め、顎鬚を生やし、無頼漢と呼ぶに相応しい、小汚くも荒々しい見た目をしている。黒の道着のような衣服に身を包むことで、己は隠密。己は侍であると、自分自身に暗示を掛けているようでもあった。

 

 気付かれたか……。さすがは藤村の息子といったところか……。


 進行方向の先にあるのは河川敷。四方を遮る物はなく、狙撃ポイントも存在しない。そんなひらけた場所へ向かっているということは、これ以上の観察は無意味であるということを意味している。


 そう判断し、今日の監視を終えようとしたその時、ふとある考えが頭をよぎった。


 俺を誘っているのか……?


「…………」


 一対一の勝負を挑まれているのであろうか。もしくは何人来ようとも勝てる自信があるということか。


 確かに能力のことを考慮すれば数で攻める作戦はこちら側の損失が余りにも大き過ぎる。藤村の息子1人殺せたとて、その後の組織運営に支障をきたせば、なんの意味もない。だからこその自分である。その為にももっと時間を掛けてプレッシャーを与えていき、情報を収集し、作戦を立てなくてはならないのだが――——。


「面白れぇじゃねぇか……」


 木島はすぐさま打刀と脇差を手に取り、潜伏していた空き家を後にする。強者との戦い。それは金以上の価値がある。


「舐めんじゃねぇぞ。クソガキが……」

 

 木島は与えられた車に乗り込み、急ぎ河川敷へと向かう。顔を笑みで歪ませながら。


 




 さて、来るか。来ないか。どっちかなー……。


 健太郎は河川敷の中心で粘土の椅子に座り、両手を頭の後ろに雲のない空を眺めている。隙だらけのように見せて実は周囲への警戒は怠ってはいない。その時――。


 おっ。


 車の走行音が耳に入る。


 来たか……。


 すると車は土手を猛スピードで駆けおり、そのまま真っ直ぐ健太郎に向かって突っ込んで来た。


 マジかよッ!!


 運転席には誰もいない。


 飛ぶか……。いや!!


 手の内を晒すことを恐れず、健太郎は車を覆うように地面から粘土を出すと一気に包み、小さく圧縮する。粘土が小さくなるその瞬間、両目を潰すべく刀を真横に振る男の姿が目に飛び込んで来た。


 ウッ――――。


 しかし健太郎は冷静に地面から粘土を伸ばし、刀を防いだ。


 やるな!! だが――!!


 木島は逆手で腰の脇差を抜くと、そのまま切っ先を健太郎に向ける。


 秘剣ッ!! カガチッ!!


「!!」


 すると気を纏った脇差の刀身がなんの動きもなく瞬時に伸び、健太郎の顔面に襲い掛かった。


 気の剣か!!


 今まで何人もの強敵を屠って来た必殺の剣を恐るべき反射速度で首を右に傾け、避ける。


 これを避けるか!! だが――――!!


 剣先は直角に曲がり、健太郎の後頭部を捉えた。


 貰った!!


 しかし————。


 なっ…………!!


 花のように咲いた粘土によって包み込まれ、阻まれる。


 クソッ!! と木島が悪態をつく間もなく健太郎は稲妻飛びで背後に回り、その首を落とすべく粘土の刀を振るう。


 あめぇっ!!


 振り切った健太郎の刀は刀身を半分、失っていた。


 なんだ!?


 目を見開き、驚きつつもすぐさま飛び、


 稲妻飛ばし!!


 今度は正面の離れた間合いから三日月の刃を飛ばす。その際、木島の口に何かが咥えられていたことに気が付く。


 まさか…………!!


 この攻撃は、あくまで目くらましだ。カガチで弾かれる前に健太郎は地中の粘土を動かし、木島を串刺しにすべくその足元に杭の山を生成。


 だが、木島は一歩たりとも動くことなく、自分の足元を丸く抉り、粘土の杭を回避する。


「フッ」


 土煙を上げながら出現した針山の中で笑う男に自身の能力との相性の悪さを健太郎は理解した。


 マズイな、こりゃ……。


 長くなりそうだ……。短期決戦型の神牛一刀流にとっても分の悪い相手に汗が静かに流れ落ちる。死の気配がゆっくりと背後に迫りつつあった。

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