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神牛一刀流〜近未来剣客浪漫譚〜  作者: ひろひさ


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ナインヘッド

 この世界には壁外に住む能力者、その下で悪事を働く非能力者が存在する。少なくとも能力者は藤村家を嫌い、ホッグ・ノーズを憎み、現行法を否定し、自由を求め、外に出た。


 その収入源は主に窃盗、強盗、密輸、密造、密売、人身売買と多岐に渡るのだが、勢力拡大やその維持を可能とした背景には、国内の治安悪化を喜ぶ内外組織による資金提供や人員援助の存在が大きい。


 その為、治安悪化改善の強硬策として『ハンター制度』が創設されたのだが、一定の効果は得られたものの、根本的な解決とまではいかなかった。


 現在も大小様々なグループが存在するが、その中でも国内最大級と呼ばれるグループが『ナインヘッド』である。


 9人から始まったこのグループは急速に勢力を拡大し、第一次浄化作戦で創設メンバーの4人を失い、2度目の作戦では2人。そして3度目の作戦では2人を亡くし、現在は『天木天竜あまぎ てんりゅう』、通称『テンボク』が仕切っていた。


 時は遡り、3月4日、午後9時6分。ナインヘッドアジト—―——。


 四方を壁で囲み、有刺鉄線を張り巡らせた巨大な要塞の一室に約2メートルを超える巨躯の言葉の体現者。軍人のような出で立ちでスキンヘッドの40代前後の男、天木が革張りのソファにドカリと座り、4人の幹部に睨みを効かせている。


「で、解ったのか。久木ひさぎたちを殺った連中ってのは」


 尋ねられた中肉中背の男、戸塚とつかは絨毯の上で足を半歩開き、両手を後ろで組んでいた。天木のその威圧感、重厚感のある声に口の渇きを覚えながらも怒りを買わないよう気を配りながら丁寧に答える。


「はい。三島みしま高木たかぎくすのきたちが探りを入れた結果、殺ったのは藤村の息子だと解りました」


「藤村だあッ!?」


 冗談じゃないと言いたげに声を荒げる。


 神牛一刀流…………。


 浄化作戦で逃げる最中に見た香織の姿が脳裏に浮かぶ。


 あの化け物の息子…………。


 怒りにその巨体を震わせる天木に戸塚は弱々しく尋ねる。


「あの……どうします……? 相手は藤村ですし……今回は……」


「あぁッ!?」


 その弱腰な態度が癇に障り、天木は即座に怒鳴り付けた。


「今回はなんだッ!! ふざけんじゃねェッ!! こっちはメンツ潰されてんだぞッ!! ヤクまで失って……。何が今回はだッ!! ぜってーに落とし前つけろよ!! つけねぇと割りに合わねぇだろッ!! ふざけんじゃねぇッ!!」


「も、申し訳ございませんッ!!」


 制裁を恐れるあまり、戸塚はすぐさま額を床に付けて許しを請う。


「————フゥ………………。チッ。まあ、安心しろ。何も俺も考えなしって訳じゃねぇ。今回、心強い助っ人を用意した。そいつと協力して、必ずガキの首を俺の前に持って来いッ!! いいな!? 絶対にだ!!」


「はいッ!! 必ずッ!!」


 戸塚は天木が部屋を出るまで頭を下げ続ける。


「はぁ…………」


 4人の溜息が部屋に吸い込まれ、やれやれと全員の気が緩んだ瞬間、


「俺ひとりでいい。誰も俺の邪魔をするな」


 背後から聞き覚えのない男の声を耳にした。


 全員が一瞬肩を竦ませ、すぐさま背後を振り返る。————そこには誰も、いなかった。


「…………」


 あれが助っ人か…………?


 全員の疑問符をその身に受ける黒のローブに身を包んだこの男が『秘剣二刀流』《ひけん にとうりゅう》の使い手であり、『人斬り重蔵』《ひときり じゅうぞう》と呼ばれる殺し屋、木島重蔵きじま じゅうぞうである。

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