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神牛一刀流〜近未来剣客浪漫譚〜  作者: ひろひさ


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刀神 VS 神牛一刀流

 鳥のさえずりもない、しんとした静けさの中、健太郎は分身を二体造り、自身は地中に身を隠している。


 ――――準備はできた。さあ、いくぞッ!!


 分身体の制限は神牛一刀流を使えない。自在に動かせるのは一体まで。単純な動きであればその限りではない。しかしその間、自身は動けないというものがある。それでも――――。


 あいつが気を感じ取ることができるんなら、いきなり2つの気配はビビるだろッ!!


 健太郎は左右に配置した分身にすぐさま気を流し込む。


 ドンと跳ね上がった2つの気配に刀神はすぐさま反応した。


「!!」


 立ち上がり、左右に目をやる。真正面で息を潜める健太郎には気付いていない。


 掛かった!!


 健太郎は足元の地面を粘土へと変え、刀神の足を絡め捕る。そして更に左右の分身を突撃させた。


 包めッ!!


 木の陰から飛び出した2体は滑らかな粘土へと形を変え、刀神に覆い被さらんとその身に迫る。


 今だッ!!


 地面から飛び出した健太郎の両手の平には、薄く研いだ鋭い輪が浮かんでいた。その2つはすぐさま空気を切り裂く高い音を立て、健太郎は刀神の胴体目掛けて投げ付ける。


 光輪剣ッ!!


 戦輪やチャクラムの名で知られる投擲武器をイメージしたそれは自身のオリジナル技であった。さらに健太郎は刀を造り、稲妻飛びで間合いを詰める。


 稲妻落とし――ッ!!


 4方向からの同時攻撃。


 どうだッ!! と健太郎は心の中で叫んだ。


 しかし、刀神は気を刀に籠め、一閃。左右正面の粘土を吹き飛ばした。


 マジかよ!!


 さらに左手から分厚い刀身の刀を出し、上段からの一撃を防いだ。


 クソッ!!


 走る火花————。健太郎は防がれた稲妻落としから瞬時に背後へと跳躍し、稲妻斬りで追撃。しかし、髪が瞬時に白い光の粒を覆う打刀へと形を変え、直撃を防ぐ。


 チッ!!


 吹き飛ばしてやる!! 健太郎は再び刀に気を籠めた。


 稲妻、飛ばし――ッ!!


 高密度の飛ぶ斬撃をゼロ距離で放つも、


「…………」


 刀神は両足を刀へと変え、足形の鞘から刀を引き抜きながら右前方に跳び、軽く受け流す。

 

 まだだッ!!


 すると地面をこじ開け、中から白い粘土が現れると再び刀神を飲み込むべくその身に迫った。


 しかし、一閃————。刀神は粘土を叩き斬る。


 そこだッ!!


 再び斬撃を放つ健太郎。しかし、刀神は体を軽く捻って攻撃を躱す。


 クソッ!!


 健太郎は稲妻飛びで木々の間へと身を隠し、気配を消した。


「はぁ……。はぁ……」


 刀が一気に5本となった刀神は動かない。とても疲れているようには見えなかった。


 どうする……。


 攻撃がことごとく防がれる。堕ち人になる前も相当強い使い手であったのだろう。刀神の名は伊達ではなかった。


「…………」


 刀神は両腕を下ろし、隙だらけのように見えるが、その練度の差から自身の刀が刀神を捉える未来を見ることができない。


 面白れぇじゃねぇか、死にぞこない……。それでこそ殺し甲斐があるってもんよ……。


 あの5本の刀から繰り出される攻撃をどういなすか。健太郎は息を整えながら考える。


 刀を振り回すのに不利な林の中には攻めてこないか……。だったら休息は取れるな……。夜になるまで待つか……? いや、気を読めるんだったら意味はないか……。


 汗がだんだんと引いていき、背中に冷たさを感じ始めた頃、健太郎は勝ちゃあいいんだと、自分に言って聞かせたのであった。


「…………」


 刀神は立ったままピクリとも動かない。


 余裕ですってか? 舐めやがって……。今に見てろよ……。


 健太郎はしゃがみ、地面に片足を付けて刀神を凝視した。


「……」


 刀神は鋭い気配が向けられていることを感じ取る。


 避けれるもんなら避けてみやがれ!!


 刀神を円状に囲むように粘土が地中から飛び出してきた。


「……」


 刀神は右手の刀に気を籠め、右に薙ぎ払って斬撃を飛ばす。


「うおっ!!」


 斬り払ってできた道を刀神は駆け抜ける。


 稲妻、飛ばし――!!


「!!」

 

 真正面からの斬撃を2本の刀で受け止め、一瞬足を止めるもすぐに右へと薙ぎ払われた。


 だが、左右の手が下がったと同時に健太郎は瞬時に間合いを詰め、上段から刀を振り下ろす。


 稲妻、落とし――!!


 しかし、これも左の刀で受け止められてしまった。


 掛かった!!


 健太郎はすぐさま粘土で左手を覆ってしまう。


「!!」


 刀神はすぐさま右の刀を振り、健太郎の胴を狙った。


 まだだッ!!


 稲妻飛びで背後に回り、髪から伸びる刀を掴むとそのまま下段から斜めに右腕を斬り落とし、両足を粘土で再び固める。


 貰った!!


 空いた右側へ移動しながら首を狙って振り下ろす。しかし—―——。


「なッ…………!!」

 

 1本の刃が健太郎の左脇腹を貫いた。見れば先程、刀神が捨てた足首から刀身が飛び出したのだ。


 ぐっ…………。


 突然下半身の力が抜け、膝から崩れ落ちそうになる。


 チクショウ……ッ!! 舐めんじゃねぇよ……ッ!!


 歯を食いしばり、脂汗を流しながらも必死に目だけは目の前の刀神を捉え続けた。


「グッ……!!」


 まだだ…………。


 視界が揺らめく中、なんとか突き刺さった刃を粘土で封じ、気力を振り絞って、再度柄を握り締めた。


 ――――俺の…………勝ちだ――――!!


「————オオオォォォッ!!」


 健太郎は最後の力を振り絞り、体を捻じり、右足を踏み込む。刀は申し分のない刀神の名刀。振り下ろし、空を斬る音と共にその首を脊髄ごと見事に斬り落とした。


「…………」


 ――――——皺だらけの頭が、地面に落ちる。


「…………」


 …………終わった――――。


 健太郎も堪え切れず、膝を付き、そのこうべを地面に垂れた。






「はっ!!」


 寝たら死ぬ!!


 寝落ちしそうになるのをなんとか堪え、健太郎は悲鳴を上げる体に鞭を打ち、まずは状況の確認を行う。


「——おっも……。ウッ!!」


 筋肉を少し動かしただけで刃が肉を裂き、鋭い痛みが全身に走る。


 動けねぇ……。


 助けて、八重……。そう心の中で涙を流す。


「…………」 


 動かない刀神。周囲に何も気配はない。


 よし。まずは助けを呼ぼう。それから戦利品を回収しよう。


 そうだ、そうしようと腕の粘土からスマホを取り出し、震える手で八重に連絡を取る。


「はい。もしもし」


「もしもし、八重? いま大丈夫?」


「大丈夫だけど、どうかしたの?」


 八重は何も知らないようだ。


「いや、今さ。刀神って呼ばれる堕ち人と戦ってさ」


「うん」


「勝ったには勝ったんだけど、腹に刀が突き刺さってさ、動けねーんだよ」


「ええっ!? 駄目じゃん!! ヤバいじゃん!!」


「そうなんだよ……。ヤバいんだよ……。だからさ、悪いんだけど助けてくんねぇかな?」


 今まで聞いたこともないような弱々しい声に八重は非常に焦っていた。


「何言ってんの!! 今すぐ行くからちょっと待ってて!!」


「ありがとう……」


「それで、どこにいるの!?」


「北門から出て……、右に曲がって真っ直ぐ行ったところにある神社……」


「北門ね。すぐに行くから待っててね!! 寝ちゃ駄目だよ!!」


「おう……。待ってる……」


 よし……。これで一安心……。


 通話を終え、あとは寝ないように戦利品をかき集めて待とうと粘土を動かし始める。


 刀神の死体を粘土で包み、辺りに散らばる刀もかき集めた。そして真っ先に見つめたのはやはり、刀神の首を斬り落とした不思議な刀である。


「あぁー……。やっぱり、綺麗だなぁー……」


 夜空に浮かぶ星の輝きが、そのまま刀身に宿っていた。大小様々な白い光の粒が刀身を覆い、光の当て具合でその表情を変え、どれも雄大であり、壮大。自然が持つ美しさを刀を通じて感じ取れる。


 思わず見惚れるほどの美しい刀であった。最早振るうのさえ惜しくなる。


 これも刀神の能力か?


 人間の時に造った刀なのか。それとも別の方法で手に入れた物なのか。考えても仕方のないことなのだが、なんとなく生前の彼に思いを馳せてしまう。


 鞘がなかった為、一時的に刃の部分を粘土で包み、刀を両手で持ち、頭上よりも高く掲げ、刀神と刀に対し、礼を尽くす。


「頂戴いたします……」


 思わずそうしたくなる程の刀を手に入れたのであった。


 後の2本はと……。


「いやぁー……。いいねぇ……」

 

 健太郎が次に手にしたのは刀神が持っていた白い刀だ。それは神が持つに相応しい一品。太刀よりも短く、反りが浅い。打刀の特徴だ。刀身は白の拵えでより一層輝きを増しており、その白銀しろがねの輝きに浮かぶ刃文は穏やかに流れる水を思わせる。


「さて……。これの鞘はと……」


 鞘を引き寄せ、刀を収めた。そして同じように両手で頭上よりも高く掲げ、よろしくお願いしますと頭を下げる。


 さて……。お次は……、こいつかぁ……。


「おっ……!! こっちはこっちで、よく見りゃすげー刀だな。こりゃ……」


 健太郎はぼんやりとしたまなこで、じっくりと眺めた。


 この刀は見た瞬間、勇猛、勇敢、力、守護、忠義という言葉を連想させる打刀である。


「おッ……!! 重いなー……!!」


 鈍い光りを放つ分厚い刀身。刃文は神々しく燃え盛る炎のようで、腰に差すだけで不思議と力が湧き上がり、振るえば実力以上の力を発揮することができそうであった。


 こちらも鞘がない為、粘土で包むと上に掲げ、頭を下げる。


 ――——よろしくお願い致します。


「はぁ…………」


 早く来ねぇかなぁ…………。


「よいしょっと…………。あ、いてててて…………」


 正座で座っているのも疲れた為、最初の刀神のように三振りの刀を腕に抱え、賽銭箱に背を預けた。


 ヤバい…………。眠い…………。


 こうして刀神との戦いは終わりを告げる。

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