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神牛一刀流〜近未来剣客浪漫譚〜  作者: ひろひさ


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30/33

初めての外泊

 同日、午後8時30分。脱獄犯全てを捕まえることができなかった健太郎たちはとりあえず主犯の能力者を確保したということで、市内待機を命じられる。しかし—―—―。


「え? シングル1部屋しか空いてない!?」


「はい。申し訳ございません……」


 観光客に加え報道各社、一般市民、ハンターが一斉に駆け込んだことにより手頃な値段のホテルはほぼ全て満室。その為、片っ端から電話を掛け、5件目にしてようやく辿り着くもこの有り様であった。


「ちょっと待ってください……」


 そう断りを入れてから通話口を手で押さえ、八重に尋ねる。


「どうする?」


「えっ!? どうするって……」


 うーんとしばし悩んだ末、「もうしょうがないんじゃない? そこにしようよ」と提案してきた。


 …………マジ?


 こうして、今晩の宿が決定した。




 2人が泊まることにした宿はいわゆるビジネスホテルで、価格は1泊1万円代の禁煙室。WiFi完備のベッド1、テレビ1、ユニットバス1、化粧台1の簡素な部屋で、2人で泊まるには手狭に感じる造りとなっている。


 鍵を壁に刺し、部屋の明かりを灯す。LEDの白い光が室内を照らした。


「…………」


「…………」


 気まずい沈黙。あれほど妹みたいなもの。家族、家族と互いに口では言っておきながらも同じ部屋、1つのベッドで一夜を共にするという現実を前に流れるこの淫靡な空気。イケナイことをしているような気分だ。


 この空気をなんとかせねば!!


 とりあえず健太郎はベッドに座った。


「おおっ!! すっげー跳ねる!!」


 良く効いたスプリングが体を上下に揺らす。


 そのはしゃぎぐ様子に内心、子供かとツッコミを入れつつもいつも通りの空気感に安心感を覚える八重でもあった。


「それじゃあ私、必要なもの買いに行くけど、健太郎はどうする?」


「買い物? 俺はいいや。色々あるし」


 そう言って体のあちこちに貼り付けたシールを剥がし、中からスウェット、水、お茶、お菓子にカップ麺、非常食と八重が買いに行こうとしていた物をポイポイとベッドの上に広げていく。


「え、すごっ!! 流石、準備いー!! え? まさか、こうなるかもって読んでたの?」


 八重の疑問に健太郎は「まさか」と答える。


「こんな能力だろ? 父さんと母さんもそうだけど、色々と持ち運びたくなるんだよ」


「あーなるほどねー」


 能力者あるあるかーと納得。


「ちなみに俺のでよければ敏感肌にも優しいユニセックスものの美容液、化粧水、乳液、パックもあるよ」


 い、至れり尽くせり過ぎる……!!


 逆に何を持ってないのか気になって聞いてみたところ、生理用品と女物の下着は持っていなかった。


「そこまで持ってたら逆に怖いよ……」


 持っていて欲しくもないし、持っていると言われてもどう答えればいいのか反応に困ると彼女は思う。


 こうして2人は夕食前に香織に電話をし、それからのんびりと健太郎作の机で夕食を摂るのであった。

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