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神牛一刀流〜近未来剣客浪漫譚〜  作者: ひろひさ


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命懸けのネズミ捕り

 この世界には、戦いの中でしか生きられない者たちがいる。健太郎もその中の1人だ。刀を振るい、人を斬る。そこになんの疑問も躊躇いも抱かない。考えること、迷うことは彼の性分ではないのである。


 史上最強との呼び声高い健太郎の母親でさえも、この戦う為に生まれて来たかのような自身の息子に口には出さずともどこか恐ろしさを覚えていた。


 まさに武人。そんな彼だからこそ、この状況に陥ったとも言える。


 クソッ!! めんどくせぇッ!!


 轟く銃声。打ち込まれる弾丸。揺れる車体。迫る脅威。


 3月12日、火曜日。午前9時21分——。健太郎は1人、壁を出た。当てもなくふらふらと、賞金首らをおびき寄せる為に。


 しかし、車を走らせ民家跡地に入って間もなく、プロペラの高速回転する羽音が頭の上で響き渡り、地面の下を移動する人の気配を感じ取ったその時、左右の廃屋から自動小銃を構えた人影が突然現れる。


 はぁ!?


 生気を感じさせない4人の男たちは容赦なく手にした武器を健太郎へと向け、その引き金を引いた。


 クソッ!!


 フロントガラスが砕け、鉛玉が車体に穴を開けていく。遅れを取りはしたものの、健太郎の粘土を貫くほどの威力はなく、稲妻飛びで車外へ飛び出すと、そのまま左右の腕から粘土を出し、鞭のようにしならせ、4人の首を軽々と飛ばす。


 なんなんだよ、まったく!!


 ナインヘッドの構成員だと考えられるが、まったく気配を感じなかった。


 弾に気が込められてなかった……。気が使えないのになんでだよ!?


 訳が解らないと戸惑いながらも着地と同時に上空のドローンを粘土で包み込む。


 何か手掛かりを!!


 急ぎ右側の民家へと飛び込み、事切れた男たちに目を向ける。


 なんだ? ただの鉄砲玉か?


 半袖のTシャツにズボンとラフな格好で、武器も手に持つ銃しか見当たらない。


 それにしては迷いがないというか、緊張や気迫、殺意をまったく感じなかったよな……。


 能力で操られている?


 そう結論づけたところで、西側から2台のドローンがこちらに向かってやって来る。


 あっちか!!


 敵の本陣がある方角は北か西と予想を立て、すぐさま稲妻飛びで姿を眩ました。


「クソォッ!! 消えやがった!!」


 アジトから10キロほど離れた地点に設営した作戦本部テントの下、佐伯はモニター越しに戦況を見守っていたが思ったように事が進まず、苛立ちを隠せない。しかし、周りにいる部下たちは委縮する様子を微塵も見せず、機械のように与えられた役割をこなしている。


 健太郎の読みは一部当たっており、彼らは佐伯によって操られていた。しかし、それは生者ではなく、死者である。佐伯は自身の血液を飲ませた死体を操作、改造することができ、その際に生前は非能力者であってもなんらかの能力を持つことがあり、今回作戦に投入した『デッドマンズチェスト』と呼ばれる佐伯の個人部隊、総勢50名の中で5人が能力に目覚めていた。


 そしてプラス1名、『モグラ』の異名を持つ部下の土井どいが作戦に加わっている。


「土井!! そっちはどうなってる!! 見失ってないよなぁ!!」


「はい。問題ありません」


 うるせぇなぁと思いつつ、作戦本部へと向かう健太郎を阻止する為、地面を操作し、複数の壁によって簡易的な迷路を造り出した。


「チッ」


 急停止させられた健太郎は舌を打つ。


 邪魔だッ!!


 そして右手に気を籠めると瞬時に地面へと叩き付け、地中深く、固い岩盤までも粉砕する。


 ぐッ……!!


 なんて馬鹿力だ!!


 思わず両手で顔を覆っていると、


 見つけたぁ!!


 見下ろす健太郎と目が合った。


 土井は砂漠用迷彩に身を包み、素顔も目出し帽とゴーグルで隠している。さらには防弾チョッキとヘルメットを装備し、腰のホルスターにはハンドガンが収められていた。


 しま――ッ!!


 通常であれば土を動かすスピードよりも健太郎の方が早い。だが、タイミングよく武装したドローンが2機現れ、健太郎をけん制する。


「下がれ土井!! 一度距離を取るんだ!!」


 言われなくても!!


 健太郎が稲妻飛びで宙に上がり、2機を沈めている間に土井は姿を消した。


「チッ」


 逃げられたか……。


 しかし、風のない世界に響く車の走行音が更なる援軍の存在を健太郎に伝える。


 あと何人いるんだよ……。いちいち相手にしてたらキリがねぇな……。


 ここは俺も隠れるかと気配を消し、粘土と共に地中へと潜るのであった。




「クソッ!! どこへ行った!!」


 佐伯は円状に包囲網を敷いており、探知が得意な能力者を東西南北に分散させている。北に『ウォー・ハンマー』。東に土井。南に『ヘル・ドッグ』。西に『ダウジング・クイーン』という布陣だ。


 この包囲網から抜け出そうとすれば気配を消していたとしても何らかの変化を察知し、攻撃することができる。さらに健太郎は佐伯らの手の内が分からない以上、迂闊な真似はできなかった。


 そして佐伯がこの包囲網の中に健太郎が留まっていると確信を持っているのは、ダウジング・クイーンの能力で、詳細な位置は解らずとも健太郎が包囲網の中にいると判明しているからだ。しかし、地中に潜られてからは、その姿をまったく捕捉できていない。しかも下手に包囲網を狭めれば、その隙を突かれるかもしれないと佐伯は恐れ、人を動かせなくなってしまっていた。


 どうする……。


 互いに相手の出方を伺い、時間だけが無常にも過ぎていく。


 佐伯のスマホが鳴り響いたのは、そんな時であった。


「——はい。 佐伯です」


「どうだ? 順調か?」


 電話を掛けてきたのは、天木だ。


「はい。なんとか包囲網の中に留めることができました」


「おお。なんだ、やるじゃないか」


「ありがとうございます!!」


 これは素直に嬉しかった。今日ここで、健太郎を討つという思いがより一層強くなる。


「しかし今、膠着状態に陥りまして……」


「膠着状態?」


 どういうことだと天木は尋ねた。


「藤村を追い詰めたところまでは良かったんですけど、地中に潜られまして……。そこからはっきりとした居場所を掴むことができず、ここからどう攻めるべきか決めかねておりまして……」


 佐伯は何かいい案はないかと助けを求めてみる。


「そうだな…………」


 暫しの間の後、天木は口を開いた。


「……よし。 佐伯。『ザ・タンク』の使用を許可する」


「え!? あのタンクをですか!!」


 ザ・タンクは、ナインヘッドの切り札だ。全長約2.5メートル。その名が示す通り、全身を鎧のような鋼鉄の皮膚が覆い、自慢の怪力で敵を粉砕する。まさに重戦車のような男であった。


 元は大人しい性格の男であったが、能力に目覚めてからは人が変わったように暴れ回り、『ホッグ・ノーズ』と『ロック・フィスト』によって討伐される。その後、遺体がナインヘッドによって盗まれ、デッドマンズとなり、佐伯ともう1人、『ビック・レディ』といる時だけは大人しくなるという天木でさえも手を焼く存在へとなった。だからこそ、この場面での投入である。


「そうだ。このチャンスを逃す手はない。今日ここで!! ヤツを殺せ!! そして、その首を俺の前に持って来い!! いいな!!」


「はっ!!」


 通話が切れ、佐伯は急いでビック・レディへと連絡を入れた。


「レディ!! 今すぐタンクと一緒に俺のところへ来い!! 仕事だ!!」


「はい。マスター」


 簡潔なやり取りを終え、佐伯は確信する。自身の勝利を。

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