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第五話 リオの子育て

リオは子どもを育てる時は、角を食べる量を調節している。

いつもみたいに食べると半年間眠ってしまうからだ。


本能なのか、リオはそれを誰に教わることなくやっているようだ。



「フッ」


キオは、リオとすやすや赤ん坊が眠る姿を眺めて微笑を漏らした。


しかし、あと二回ほど子どもを産んだら還るとは······。



オリヴァー博士も、「どのような間隔で出産するかはわかりませんね」と言っていたが······。


彼は恐らくはまだまだ先のことになるのではないかという見解だが、これまで予想の斜め上を来ているので、何が起きるか予断を許さない。


この屋敷の者達は、すっかりリオの赤ん坊にメロメロだ。

まだ俺の子だと言っている奴もいるのが気に食わないが。


「はあ······」


上司からは、当面はリオを妻とし、子も自分の子ということにして育てるようにという命令が下った。


キオは任務の都合上、誰とも結婚するつもりはなかったので困惑していた。


オリヴァー博士からも、「彼女達を保護するなら、それが最も妥当ですから、そうして欲しいです」と言われていた。


オリヴァー博士は、リオの住んでいたカヤナの森に調査へ行っていて、彼には護衛もつけている。


リオ達に必要なオリオリの保護も必須だから、そのための調査でもある。


取り敢えずリオ達が一月後目覚めるまでは帰って来ないだろう。



「すぐに目が覚めなかったら、ごめんなさい、子ども達をよろしく」

「はあ!?」


リオも初めての子育てだからか、まだ自分の睡眠のコントロールがつかないのかもしれない。


リオも子ども達もいずれ森に返す時が来るのだろうが、リオ自身もこちらも試行錯誤だ。



リオと子ども達からも微量の魔力を感じる。

彼女達は人間の傍で暮らさなくても大丈夫なのかもしれないが、 オリヴァー博士が森での環境を確かめに行っている。


研究所の檻に入れるのを良しとしない彼のスタンスは至極共感できる。


絶滅危惧種だとしても、不自然な保護は悪手になることもある。

そこは慎重にやらなければならないだろう。




一月後、オーとリリが目を覚ましたが、リオはまだ目覚めなかった。


生後3ヶ月のオーとリリは人間の赤ん坊のようには頻繁に泣くことがなく、ほんの少し食事をすれば満足して眠りについた。


これはもしかして人の子よりも育てやすいのではないだろうか。


屋敷の者達もそう感じているようだ。


リオの種族は成長が早いのか、既にハイハイをするようになっている。


それで屋敷の者達は尚更目が放せないのだが、皆楽しそうだ。

既に我が家のアイドル、オーとリリ中心でまわりはじめている。



「おは···よう」

「おそよう」


リオは二週間ほど遅れて目を覚ました。


「ええっ!?」


オーとリリがハイハイするのを見て、リオも驚いていた。


「次に目が覚める時は、もう歩きそうね」

「ははっ、そうかもしれないな」

「オリィは?」


リオは部屋を見回した。


「森へ調査に出かけている。君が目覚めたと連絡したから、そのうち戻って来るだろう」

「うん、わかった」

「それからなのだが······」


キオは言い淀んだ後に咳払いをした。


「すまないが、君たちを保護するために、当分の間、表向き君は俺の妻で、子ども達は俺の子として育てることになった。それで構わないだろうか?」

「うん、いいよ」

「いいのか?本当に?」

「こんなに守ってもらっているから。だからありがとう、助かるよ」

「······そうか」


ドアがノックされ、侍女マチルダがリオのために抹茶とオリオリの角の粉を持って来た。


「わあ、一月ぶり!」


リオは満面の笑みを浮かべた。


「ああ、やっぱりこの組み合わせが一番!」


「あーう!」


オーとリリも満足気な声を上げた。


おしゃべりも早そうだと思っていたら、子ども達はリオを「ママ、マンマ」と呼び、キオのことを「プァパ、パパパパ···」と、言葉遊びのように呼んだ。


侍女らがキオのことを「ほら、パパですよ」と二人に声をかけているせいなのだろう。


オーとリリは木によじ登ろうとするかのように、這いずりながらキオの足にしがみつくので、それでキオは抱き上げるしかなくなる。


「パパパァ」


抱き上げたキオの黒髪を掴んで引っ張る。


二人が嬉しそうに笑うので耐えるしかない。



「パパですって?」


驚愕の声を上げたのは、騎士団の制服に身を包み、蒼い瞳に赤い髪をなびかせながらツカツカと部屋にやって来た美女だった。


「姉上!」

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