第十二話 森へ戻る日
3ヶ月後、クリフトフル侯爵家とロイゼンタール伯爵家で合同のお別れ会をした後、オリヴァーとリオ一家は森へ戻った。
エリオットは号泣し、「僕もオリィみたいな研究者になる!!」と決意表明をした。
「エリー、会えなくなるわけではないわ」
リオはエリオットを抱き締めて額に優しくキスをした。
オーとリリは眠っている。目を覚ました時は森の中にいる筈だ。二人が目覚めるのは半年後だ。
「僕のこと、忘れない?」
「大丈夫よ、キオとは定期的に連絡は取り合うから」
「ほんと?」
「年に一度は顔を見せに来るよ、未来の学者さん」
オリヴァーに頭を撫でられて、エリオットは涙を拭った。
「では、息災でな」
「ありがとう、皆様もお元気で」
キオの転移魔法で彼らは森へ去った。
カヤナの木は、薄紫の花を年に二度咲かせ紫紺の実を成らせる。
その花盛りの森、薄紫にけぶる森がリオ達を待っていた。
リオ達がいなくなって、火が消えたようなロイゼンタール伯爵邸では、執事や侍女達がうちひしがれていた。
「旦那様、お早く結婚を!」
「そうですよ、早くお子様をお作り下さいませ。デキ婚でいいですから」
「無茶を言うな!」
約二年ぶりに、ようやく平常運転に戻ったというのに、屋敷はこのあり様。
「失恋の痛手など構っていてはダメですよ」
「は?!誰が失恋だ?馬鹿を言うな」
「やだ、旦那様ったら無理しちゃって、初恋だったくせに」
「はあ!?断じて違うからな!」
なんて失礼な奴らなんだ。
リオは、はじめからオリヴァー一択だった。
俺はリオにとって「オリオリの次くらいの友だち」だと直接リオから言われていた。
俺は魔獣(聖獣)以下の存在なのだ。
俺にとってはリオ達は家族みたいなものだ。
これからも保護対象として長い付き合いになる。
オリヴァーは、はじめからオリオリ以上だった。
彼女のような絶滅危惧種は、オリヴァーぐらいじゃないとダメなのさ。
キオは、あれからすべての暗部の業務からは外され、カヤナの森の保全管理とリオ達の保護を専任することになった。
まあ、これならば妻帯しても問題は無いだろう。
家族を持つのも悪くはないと思えるぐらいにはなったのは確かだ。
それを察したのかどうかはわからないが、両親や執事が山ほど釣書を持って来る。
これは流石にゲンナリしてしまう。
「旦那様、この方などいかがですか。どことなくリオ様に似てらっしゃいますよ」
「だから、違うって言っているだろう!」
くどい!
「素直になるのだ、弟よ」
「はあぁ、姉上まで······」
ああ、そうだった、姉夫婦はイチャイチャ夫妻だからな。
······そうか、そういえばうちは両親もか。
こんな俺にも番のような伴侶がいつか現れるのだろうか。
その相手が、どうか絶滅危惧種ではないことを祈ろう。
(了)
最後までお読みいただきありがとうございました!
続編「天使な彼女を綴る日々」は、エリオットが主人公です。
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