第2話 王家の思惑(国王視点)
□婚約破棄翌日の王宮にて(国王)
「婚約破棄をするなら先に話を通せ」
「すみません」
まったく。余の前で跪いているのは余の息子であり王太子であるギード王子。
少し困ったことに、この国の最大貴族であるエルダーウィズ公爵家の娘と婚約していたというのに、あろうことか学院の夜会で婚約破棄を突き付けて来たらしい。
まったく。
聞けば地味な娘だし、期待していた魔力は持ち合わせていなかったようじゃ。それでいて他の男を誘惑する悪女ときた。
婚約破棄自体に文句はないが、エルダーウィズ公爵家をどうするか考えているのかと問うたところ、弟であるロイドは味方につけているとのことだった。
それだけでは弱いが、ロイドは正妻の子であり、兄であるクラムは側室でかつ既に亡くなった母の子。
王子としてロイドを側近につけていれば問題は起きないだろうと言われて、それならなんとかなるだろうと不問にした。
エルダーウィズ公爵家は国内で唯一魔石を算出する魔鉱山を持つ国内最大の貴族だ。蔑ろにするわけにはいかない。
いかないが、現当主は日和見で優柔不断な軟弱者だ。なぜ公爵家をアレが継げたのか?と思うくらいだが、周囲は優秀なのだろう。領地運営は安定しているし、魔石供給も特に制約を設けずとも安定させてくれている。
それから、新たな婚約者としてオルフェ・ハーティスを考えているときた。
ハーティス家は新興の子爵家ではあるが、類まれなる魔石加工技術を持っている。近年一気に勢力を拡大し、国内で広く魔道具に関連する仕事をしていて金を持っている。
それならよく考えていると評価してもいい判断だ。
「公爵家をつなぎとめたまま、ハーティス子爵家を遇するとは。さすが王太子殿ですな」
大臣が隣にいるオルフェという娘を見ながら手放しでギード王子を褒める。
「ギード王子と私のことをお認め頂けるのであれば、今後王家に献上する魔石の量は当然増やさせていただきます。王家は古代の魔物を封じており、その封印の維持のために多量の魔石を使われているとか。我が家の技術を持ってすれば、魔石から取り出せる魔力量をさらに増やすことも可能です」
「それは素晴らしいな。期待しているよ、オルフェ」
ふむ。そろそろ余も後継を考えても良いのかもしれぬな。