記憶喪失、、、?
「思い出せねぇ、、、。何があったのか、なんでここにいるのか」
「でもお母さんのこととか幼少期のことは覚えているみたいだから、、、。どうやら部分的な記憶喪失のようだね」
嘘だろ、、、。まさか俺が記憶喪失になるなんて。ドラマとかの世界の話が自分に降り掛かってくるなんて、、、。もしかしてさっきからの頭痛って記憶喪失に関係したりしねぇか、、、?
「大丈夫かい?」
ずっと黙り込んでいる俺を心配したのだろう、親父が声をかけてきたが今の俺にはそれに落ちついてかえせるほどの冷静さは持ち合わせていなかった。結局黙っている俺を見て話しかけるのを時間の無駄と思ったか、落ち着くまで待たなければいけないことに気付いたのか親父がそっとこの場を離れる気配がする。
「僕の部屋はここの向かいにあるからね。何かあったら家政婦をおいておくから彼女に伝えて」
去り際、家政婦に英語でも日本語でもない言語で短く何かを話してから親父は部屋から出ていき、この広い部屋には俺と家政婦しかいない。しかし、その家政婦も俺のことを扱いあぐねているのか奇妙な空気がこの部屋を満たしている。
それでも親父がいなくなって少し気が緩んだのかいろいろなことに考えが及ぶようになってきた。
とりあえず今の状況と疑問点を整理しなきゃな。
今の状況はイギリスに行こうとしたところ何故かドバイにいる上に記憶喪失で詳しいことが思い出せない。そして何故か昔蒸発した親父の家に運び込まれ、厄介になっている。
こうして考えるとこれからの人生の出来事をすべて凝縮したレベルで濃い経験だな、、、
まあ、そんなことはさておき疑問点の整理もしなくちゃな。
えっと、まず、今は何日なのか。それと親父の仕事は何なのか。この部屋の内装といい、家政婦を雇っていることとか結構金持ちっぽいんだよなあ。それと、どうやってここに運ばれてきたのか、だな。
ふぅ、落ち着いてきた。やっぱ現状整理って重要だな。あぁ、なんかスッキリしたら腹減ってきた。
なにか食べさせてもらいたいが、、、。この家政婦、せめて英語は通じる相手だと良いんだが。
「お客様。いかが致しましたか?」
「へっ?」
「先程からチラチラこちらを見ておりましたので」
はぁっ!?この家政婦日本語話せたのかよ?しかもかなり流暢に操っているじゃねぇか。
「お客様?」
「日本語、、、!」
「ああ、私の両親は日本人でしたので。幼少期から日本語を使っていましたから」
「なるほど、、、。ああ、食事がしたいんだが」
「かしこまりました。少々お待ちください」
これで食事の心配はなさそうだな。それにしてもあの家政婦が日本語を話せるなんて、、、!これは存外良い収穫だな。後で彼女に色々と聞くとしよう。
コンコン
「失礼します。お客様、お食事の用意ができました」
「ああ、ありがとう。」
「お客様の健康状態がまだよくわかっていないので体に良いメニューにいたしました」
「美味しそうだな。気遣い、ありがとう」
「いえ。こちら、野菜たっぷりポトフと白パン、白身魚とキノコのホイル焼きでございます」
どれも美味しそうだ。俺のことを気遣ってか野菜が多めでどれも柔らかく調理されている。中東の料理特有のスパイスの強い匂いもなく期待が高まる。
パクッ
うんまぁぁぁああ!!!
えなにこれ?めっちゃうまい!野菜たっぷりポトフはちょうどいい塩気に野菜の出汁が味に奥行きを出していて最高!白パンも柔らかくふわふわで香ばしく、ポトフによく合う。
ホイル焼きもふわふわな白身魚にきのこから滲み出た出汁が染みてて美味い!
「お気に召したようで何よりです」
「ん?すごい美味いよ!」
「作ったのはシェフですから」
「シェフもいるのか、、、?」
「ええ」
やっぱり親父は金持ちらしい。
ああそうだ、思い出した。
「なあ、少し聞きたいことがあるんだが、、、」
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