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陰キャエンジニア矢野峻の異世界黙示録  作者: 兎束つるぎ
転生編
2/33

第2話 転生前夜

思い出してほしいんだけど。



クラスに1人くらいは典型的なダメな子っているよね。

忘れ物が多いし、片付けはできない。勉強も苦手だし、運動もダメ。



おまけに僕は、太っていた。



サッカーをやれば的当てゲームの的にされて、

教室では「バカ過ぎて話しにならん」と先生は僕を笑いのネタにして生徒から面白い先生と評判を得ていた。


だから、僕は教室の隅っこの席で、最強の剣や、最悪のモンスター。

汚い字と汚いイラストで無地の自由帳を埋めつくしていく。

楽しくて没頭していたことで、僕のノートを覗き込む存在に気が付かなった。



「おい!見ろよ!矢野がまた気持ち悪ぃこと書いてるぜ!」



取り上げた自由帳を高らかに持ち上げ見せびらかしつつ、ゲラゲラ笑いながら大声をあげてクラス中の人目を引く。


次の瞬間、残像が見えそうな勢いで、そいつは吹っ飛んでいった。



「自分の好きなことをバカにできるほど、お前はえらいのかよ!」



クラスで一番、背が高くて頭がいい。

なんだか髪型も格好いいし、性格もいい。

僕とは対極の存在で、お父さんの都合で転校してきた横嶌雄太よこしまゆうただった。


「はい、矢野君。ノート。すごいね、このノート。ここには、君だけの世界が広がっているんだね。今度じっくり見せてくれないかな?」


自由帳をパラパラとめくったあと、はいって言いながら僕に返してくれた。

横嶌の言葉を僕は信用できず「う、うん」って感じの歯切れの悪い返事を返して、僕は変わらず教室の隅っこの席で描き続けた。



「ねぇ矢野君。今日さ、俺の家に遊びに来ない?君と一緒にゲームしたいんだけど」

1週間ほど過ぎたころに横嶌に誘われて、遊びに行った。


「え?矢野くんは、ゲームやったことないの?」

そういって、配管工が主人公のゲームを初めてプレイさせてもらった。

漫画と本だけだった僕の世界に、ゲームのインスピレーションは実に衝撃的だった。

こんな世界があるんだって。


横嶌の家には、なんでもあった。

お母さんがいてお菓子とジュースをくれたし、ゲームも漫画もある。


また明日ねって横嶌の家を後にした。

夕方の物悲しい雰囲気の中、とぼとぼと歩いていく。

オートロックの玄関を抜け、エレベーターで6階にあがる。

鍵を開けて、玄関に入ると昼白色の電気が点いていて、それ以外の電気は点いていない。

薄暗いリビングの電気を点けると、うすら寒い雰囲気があった。


冷蔵庫に用意された夕飯を温め、一人で食事を済ませ、宿題をし、お風呂に入る。


「峻。今日、学校はどうだったか?」「そうか、勉強はどうだ?」といった当たり障りのない会話が、21時頃に帰ってきた父と繰り広げられる。


約5.5畳の僕の部屋には、ベッドと小学生入学のときに買ってもらった学習机が置いてある。

卓上ライトを点け、ランドセルから自由帳を取り出す。


横嶌と遊んだゲームはなんて面白かったんだろう。

あんなゲームをずっとやれたらいいのに。

鉛筆でガリガリと、今日のゲームを思いだしながら、頭の中で僕の世界を作り上げ夜は更けていった。


僕の部屋に小さなテレビとコンシューマゲーム機が1台ほこりを被り、ノートパソコンのディスプレイが煌々と光っている。


横嶌はゲーム機を買ってもらえるのに、僕は買ってもらえない理由を「勉強ができないから」と思い知り、横嶌に勉強を教えてもらうようになった。


すると、半年足らずで20人クラスの20位から7位まで成績があがったので、父は約束を守ってゲーム機を買ってきてくれた。


父とはたまにパズル系のゲームはしていたけど、僕はゲームをするよりも作る方に興味を持った。



「自分がやりたいゲームを作りたい」



そこに行き着くまでは簡単だった。

ロールプレイングのゲームをやっていると、ハックアンドスラッシュがやりたくなる。

ハックアンドスラッシュをやっているとアクションがやりたくなる。

アクションをやっているとサンドボックスがやりたくなる。

サンドボックスをやると、ロールプレイングをやりたくなる。

準繰りのループ。


アクション要素やサンドボックス要素のあるハックアンドスラッシュのロールプレイング。

できればオープンワールドで遊んでみたいなぁ。ってなってしまった。



「寝食を忘れてゲームするほどゲームが大好きなのに、自分がやりたいゲームを作るために、ゲームをやめて、寝食を忘れるほどプログラミングを勉強」する僕。


僕におさがりのノートパソコンを与えた父は、母の相談に「いつか飽きるから好きにさせておけばいい」と言っていたが、その期待を裏切り、僕は小学生ながら簡単なゲームを作り上げた。


恐るべき執念だと思う。



自分が作ったゲームを自分でプレイしたときの感動は、すごかった。

何度も動作確認で動いているところを確認していたが、プレイヤーとして実際に画面で動かしたときの感動。


僕はますますのめり込んだ。

中学・高校と進学していった僕は、勉強や運動はもとよりオシャレだったり異性にモテる努力を全て置き去りにしてひたすらゲームを作り、動作確認し、改良し、作り続けた。

そして、ゲームクリエイターを目指すべく大学へ進学した。


他の学生がバイトに精を出したり、恋人を作って甘い時間を過ごしたり、友人を作って飲んで歌って騒いだり。

自分は何者なのか?と旅に出たり、自分ができることは何があるか?と色んな事にチャレンジしたりしたり。

青春を一瞬でも惜しまずに沢山の思い出を作っている時間。


僕はゲーム作りに没頭していた。



そんな最中、一つの天啓があった。

「僕の作った、僕の好きなゲーム。これを僕だけじゃなく沢山の人に遊んでもらったら、楽しいかも」

「会社を起こそう。しゅんの世界を、ゲームを世にだそう!」

電話口の横嶌から返ってきた言葉は、起業だった。

ゲーム会社3rd Hrizon(サードホラインズン)のシステムエンジニア兼総合企画兼社長が僕となり

横嶌は、システムエンジニア兼マーケ兼営業兼副社長となった。


僕たちは、学生ベンチャーでゲーム会社を起業し、卒業後もギリギリのラインでやれている。

僕自身が小学生の頃からしたためてきた無地の自由帳の夢と妄想をゲームにした「千年王国記」。

大ヒットとまではいかないものの、なかなかコアなプレイヤーの心を掴んでいた。



「ユーザーの皆さまへ。女神ミリアムです。皆さまに新しい武器の開放をお知らせいたします。これからも千年王国記をよろしくお願い致します。」



ただ、すこしだけ問題を抱えていた。


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