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プロローグ

禁忌とされた魂の復活


何者にも平等に訪れる死


その絶対の摂理への反逆


罪には罰があるように


摂理に逆らえば必ず代償がある


もしもこれを見ている者がいるのなら──


死から逃げようとするものがいるのなら──


今すぐにやめろ


もし、あの日の俺に一言言えるのであれば


「死を受け入れろ」


そう伝えたい。


結局、死を失う以上に怖いことなんて、あるはずもないのだから。


――――――――――――――――――――――


お………ろ!


お…き……!


おきろ!!


酷くうざったく、やかましい声に脳が揺らされる。


「おい!レオン!いい加減にしろっ!!」


一際大きな声が鼓膜に響いた。


仕方なく、渋々、目を開く。


「俺の授業で寝ることは許さんぞ……!貴様はただでさえ成績が悪いのに、そうやっていつも寝てばかり……!」


相手の苛立ちが声を通して伝わってくる。


「ふぁ〜〜、先生、寝ている時くらい静かにして貰えますか〜。」


欠伸をしながらそう答える。


「黙れ!最下級のFクラスとは言え、ホジワーツの生徒だろう?少しは誇りを持ったらどうなんだ!?」


ホジワーツ魔法学院……昔現れた異界の勇者とやらが作ったらしい。


名前の由来は異界にあった小説が元になっているらしいが、全部同じにするのも良くないという理由で1文字変えたらしい。


案外適当だな……勇者よ……


そして、その学院が建てられたこの場所は、レスネキア王国と言って、魔法技術によって発展を遂げてきた大国のひとつ、その魔法技術を学ぶのがこの学院というわけだ。


「いいんですよ僕は、だいたいこの学校は卒業出来れば勝ちみたいなもんなんですから、成績は悪いとはいえ進級できないレベルじゃないでしょう?」


魔法の超名門と言われるここは、卒業するだけで就職先にはほぼ困ることは無い……まぁ、本当に稼ぎたいならなるべく良い成績をとった方がいいのだが、自分は普通に暮らせればそれでいいので特に勉強をする気はなかった。


「貴様……少しは向上心というものをだな……というか、そもそも授業で寝るんじゃない!しっかりと聞け!」


そして今俺を叱り付けているのが、アクス・マルディアという教師だ、なんでも、解析魔法とやらの第一人者らしい。

なんか偉い貴族の人で、プライドも高いし、2年生になった今でも俺を叱り付けてくるのはこの人くらいのものだ。


「まぁ起きたならばいい、授業の続きを話すからな……」


怒り疲れた様子で、教壇へと戻っていく


「先程まで話していたのは……ああ、ここか……現在の解析魔術でどこまでの事ができるのか、今から説明していく。」


チョークを黒板に滑らせながら、淡々と説明をしていく。


「まず、物質の解析、例えばそうだな……このチョークは貝がらを元に作られている」


チョークを指さして、皆に見せつけるようにする。


「しかし、石灰石を元に作ったチョークもあるだろう?それを見分けられるのが物質の解析だ、まあこれは解析魔術の初歩の初歩で、今ではもっと深いところまで解析できるようになった。これが魔法科学どころか、科学史に残る大発見へと繋がるわけだ。」


今度は、持っていた教科書の太字になっている部分を指さす。

指に着いたチョークの粉が、紙に付着して少し白く染ったのがわかった。


「それがこれだ」


そこには、原子や分子の発見と書かれている。


「最初は大雑把な材料の解析程度しかできなかったものが、いまでは世界そのものを解き明かすものになった、チョークどころかこの世界の全てがほんの小さな粒子から作られているのだよ。

まあこの発見も、昔現れた勇者のおかげだがね、彼がこの世界に現れた際に持っていた書物、彼の世界の教科書らしいが……それと照らし合わせながら、解析魔法の研究を進めて行った結果……」


少し興奮した様子で語る


「今では、原子どころか電子やそれよりも小さい世界を見ることが可能になった。そして解析魔法は異界ですら成し得なかったことを可能にした、それが────


物質の完全理解だ。


これは文字通りの意味で、原子どころか素粒子とその配置、運動まで事細かに知ることが出来る、いわば神の叡智を手に入れたようなものだよ。」


その話は俺も知っていた、何せ結構最近のことで、確かその研究にこの先生も関わっていたはずだ。

たしか2年前だったか、その時はまだこの学校に入学していなかったが、ものすごい熱狂ぶりだったのは覚えている。


「そしどのようにここまでの解析を可能にしたのかの理論の説明を────」


興奮が最大に達しているのか、まだ学生の僕たちには到底理解できない理論を説明しようとしたところで


キーン、コーン、カーン、コーン


チャイムがなった。


「む、もう時間か、では授業を終了する。各自で自習しておくように、ではまた。」


そう言って直ぐに教室から出ていってしまった。


「アンタ、なにやってんのよ……」


後ろから声をかけられる。

青い髪で、少し冷たい印象を受ける女の子が、そこにはいた。


「あの先生の授業で寝て、毎回叱られてるんだから、そろそろ辞めなさいよ。」


アネル・フリージアという、貴族の娘だ。

氷結魔法で名を上げた貴族で、こいつの先祖は勇者と共に魔王討伐に協力したらしい。

まあ最近は魔法科学の発展のおかげでわざわざ魔物を狩りに行ったりだとか、そういうことも減り、火炎だとか氷結だとかそういう攻撃系の魔法が使われることは減ってしまったが。

そして、なんで平民で姓もない俺と話しているのかと言うと、小さい頃に道に迷っていた彼女を助けて、そこからの付き合いだ、と言っても家柄が違いすぎて、最近は学校でしか会っていないが。


「いやいやアネル、仕方ねーだろう、眠くなっちまうんだから。

我慢は体に良くないぜ〜?」


すると少し呆れた様子で


「そんなんだからいつも、あと一点で赤点なんて点数取るのよ、それも全教科で、逆に難しいわよ?昔から無駄に要領だけはいいんだから……」


無駄にとはなんだ、無駄にとは、2年生に上がれているんだからそれでいいだろう。

だいたい、赤点は回避出来ているのだから努力の成果なんだよ、別にいいだろうが。

そう心の中で毒づく。


「じゃあ、授業も終わったし私は帰るから、アンタも早く帰りなさいよ。」


そう言って、そそくさと教室を出て行ってしまった。

そういえば、なぜ貴族である彼女がFクラスにいたのかというと、彼女はSクラスで、超優秀なエリートである、Sクラスには特権として授業を選ぶことが出来るのだ、彼女はアクス先生の研究に興味を持ち、彼の授業は積極的に聞きに来ている。

ちなみに、Sクラスの人は授業に出なくても、研究に協力したり、学校の運営を手伝ったりすることでも単位が認められるので、授業を一個も受けなくても卒業することが出来る。

というかほとんどあそこのクラスの生徒はそれだ。

彼女もたまに、アクス先生の研究室の手伝いに行っているらしい。


「さてと、俺も帰るか。」


授業が終わったこともあり、いつの間にか教室にいる人間はかなり減っていた。

ちょうど日も落ちかけており、空は真っ赤に染まっていた。

ふと時間が気になり魔信機を確認する、時間はちょうど17時半を指していた。

因みに魔信機とは、勇者がもっていたケータイというものを元に作ったらしい、最近はみんなこれがないと生きていけないレベルにまでなってしまった。

勇者、恐るべしと言ったところか。


教室を出て、そのまま出口まで向かう。

階段をおりて1年生の教室を通り過ぎ、そのまま出口から外へ出た。


この学校には学生寮があり、俺はそこで一人暮らしだ、本当は二人部屋にして、知らない生徒と一緒に住むというのが安上がりなのだが、そこは親に無理を言って一人部屋にしてもらった。


そして学生寮に行くためには、研究棟の前を通る必要がある。

いつものように研究棟を通り過ぎようとした時──

ドンッという衝撃と共に、バンっと弾けるような音が響いて──


「な、なんだ……?」


いったい何事かと思い、研究棟の中へと入る、そうすると研究員の人達が慌てた様子で駆けていくのが見えた。

おそらく、騒動の原因はあの人達が行った先にあるのだろうと予想して、ついていく。


そしてたどり着いたのは──

「ここは……アクス先生の研究室じゃねえか……!!」


一体何があったのかと近場にいた人に聞く

恐らく、さっき慌てていた研究員の1人だろう。


「ど、どうやら……機器の不具合で爆発が起こって……アクスさんは、いつもここに戻ったらすぐ機器のメンテナンスをするんですけど……そこで手違いが何かあったのかも……」


それを聞き、すぐに研究室の中に入ろうとすると。


「中には、入らない方がいいかもしれません……少し覗いただけですが……あまりみない方が……」


そう言われると見たくなるのが、人間の性というものだろう。

無視してドアノブに手をかけて、開く。

そして、興味本位で中を見てしまったことを後悔する。


「なんだよ……これ……」


部屋に散らばるら生臭く、そして赤黒いナニカ。

物が燃えた時の匂い。

五感から伝わる全てが気持ち悪く────

ソレがナニかを理解するのを脳が拒否する────

そんな感覚。

それでも何が起こったのかを知りたくて、中に足を踏み入れる。

足を踏み出した瞬間に、なにか柔らかいものを踏む感触がして、足元を見た。


「これは、腕?」


腕、だけ。

腕が繋がっているはずの体が、ない。

断面からは血が溢れ出していて────

それと同時に脳が状況を理解し始めて────

気付いた。

腕が繋がっていたはずの体は、辺りに散らばっている赤いモノ、生臭い肉塊、それが体だったんだと気付いた。

それと同時に無意識に声を上げる。

勝手に声帯が震える。


「うわあああぁぁぁぁぁっ!!!」


大きな声を上げて部屋から出る。

扉の前に集まっていた研究員達の顔は青ざめていて、何人かは這い上がってくる胃液を抑えようと口に手を当てていて──

俺は怖くなって研究棟を出て行って────

気付いたら、学生寮に帰ってきていた。

どうやって帰ってきたのかも分からないほど、焦燥していて、あの光景を忘れたくて、ベッドの中に潜り込んだ。


震える体を毛布で包み、どれくらいの時間が経っただろうか。

魔信機が震え出した、どうやら着信アリらしい。

アネルからだった。

よろよろと通話に出る。


「大変よ!アクス先生が……!!」


彼女にしては酷く険しい声。

そして、彼女がここまで大きな声を出すのは久しぶりで。

それが疲れた脳にキンキンと響く


「死んじゃったって!!!」


さっきのことが夢であればよかったのにと

そんな甘い考えは彼女の声で否定された。

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