二人の天才魔法使いとおふだまみれと脳筋ツインテール
脳筋ツインテール少女シリーズ第1弾――――!
ツインテールの少女はぼうっと眺める。
彼女の行く先を阻む大きな影。おふだでびっしり覆われたその呪いの大岩の前で、二人の魔法使いが口論を繰り広げていた。
炎の魔法使いカジダ・ドウシヨウ。
氷の魔法使いムラサキノ・クチビル。
両名共に世界に名を轟かせる天才だ。
口火を切ったのはカジダのほうだった。
「道が塞がれて困っているお嬢さんを助けるためには大岩を燃やし尽くすほうが早いモエ! なんていったっておふだは可燃だからモエ‼」
「ここは原始時代ではないんだコチン。近くの木に燃え広がっちゃそれこそ少女の命が危ないコチン」
「氷河期生まれは黙るモエ。そんなんだから恋人に振られるんだモエ‼」
「アイツはもともと冷え性だったコチン! キミこそ暑苦しくて近寄りたくないって女性が言ってたの聞いたコチンッ‼」
「じ、時代がオイラに置いていかれてるだけだモエーン‼ エーン‼」
「泣いてるのかふざけてるのははっきりするコチンコ‼」
「テメエのほうがふざけてるんじゃねえか……あ、モエ‼」
「語尾忘れてるチンコよ!」
「チンコ言いたいだけじゃねえかモエ!」
二人の議論に拍車がかかっていく。
「ようし分かったコチン。それじゃあ先にこの呪われた大岩を先に破壊したほうが優勝ってことにしようコチン!」
「望むところだモエ! こんな岩燃やし尽くしてやるモエ‼」
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼」」
二人の天才が生み出す最上級の魔法により、大岩は炎と氷に丸ごと包まれた。
炎が氷を溶かし、氷が炎を鎮火させる。
何も起こらないようだ。
「テメエ邪魔すんじゃねえモエッ‼ オイラの炎でイチコロだモエ‼」
「いいや、全体を凍らせて砕くのが安全で効率的だコチン‼」
「なにをおおおお⁉」
「ヤりますかねえ⁉」
もはや互いに対して殺傷魔法を使わんとする一触即発の状態。
そこに、すいーっと少女が間を通り抜けた。ツインテールの毛先が二人の鼻の下をくすぐる。
粉塵が炸裂した。
ドゴオオオオンンと地ならしがあったと思ったら、大岩は見るも無残、粉々に砕かれた後だった。
唖然とする二人に。
ツインテールの少女が一言。
「え、殴ればよくね?」
◇脳筋ツインテール、現る―――――‼