エピローグ的な1日の終わり
けっきょく、一睡もできないまま北区内を駆けまわり、河村がロックエバーマンションに戻ってきたのは午前8時直前だった。すでに水田が準備を終え、河村と交代できるようにしてくれていた。
「ぎりぎりまで大変でしたね。大丈夫ですか? いつも以上にお疲れみたいですが。」
「はは。ちょっといろいろありすぎました。」
河村は水田へ引き継ぎを完了させると、キッチンでタバコに火を付けた。水田はさっそく出動指示が来たのですでに車で出ていった。今日はもう帰って寝るだけである。河村は誰に邪魔されるわけでもなく、ゆっくりとタバコを楽しんだ。
デッパーくん以後は、警報が連続して鳴りっぱなしだったが、それまでのような怪異減少もなく、また、それらを思い返すような暇も与えてもらえなかった。
警備員と言う仕事は、こうやって様々な経験をして成長していくが、中には説明ができない不思議な現象に立ち会うこともままあるようだ。警備員の仕事の最大の成果、それは『何も起きないこと。』である。その地味な成果のために、今日も全国各地で法律上『なんの権限も持たない』警備員が奮闘しているのである。どこかで警備員を見かけたら、そういう人知れない苦労があることを、思い出してやってほしい。
河村はゆっくりとタバコを堪能すると、火事が起きないように火を消し、着替えを済ませてロックエバーマンションを出た。もうすっかり日が昇ったが、吐く息は白い。帰ってひと眠りしたら今夜も夜勤だ。河村は駅へ向かいながら、次の煙草に火を付けた。紫煙がゆっくりと空に舞い上がっていった。
それは、ある晴れた朝の出来事だった・・・。
終
最後までお読みいただきありがとうございました\(^o^)/
作者の水野忠でございます。
夏のホラー祭り2022参加作品ということで、
連休取れたんで3日ほどで書き上げた短編でございます。
うん。
怖くないですね。(^_^;)
これはある機械警備に従事された警備員さんの実体験に基づくフィクションです。
みなさんのささやかな安全を守るために、
日夜ひっそりと頑張っている「警備」と言うお仕事があることを、
読者の皆様が少しでも知っていただけたら幸いです。。。
国家資格もあるし、
けっこう厳しいところもあるんですよ。
イメージが何でか悪いですが。
それに、
警察官みたいな制服着ている割には、
「警備業法」という法律で、
「君たち警察官みたいな格好しているけど、
何にも権限ないんだから出しゃばらないでね。」
そう定められているんですね。
考えようによっては、
とってもやりづらい仕事でもあると思います。
だって、何にも権限ないんですもの。
それに、決して底辺のお仕事ではございません。
世間の警備の皆さんへのイメージが少しでも良くなればいいな。
と思う今日この頃です。
水野忠でした。