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悪党殺しの伝説  作者: 八千世
目覚ノ刻
7/8

第五話 無敵ノ右腕

 「なるわけねぇだろ調子乗んな」


 と。


 由緒あるこの国、ガラテアの王と、その貴族が一斉に視線を集める中、零雄は王太子の誘いを容赦なく断り、右手で首を抑えてポキポキと首を鳴らす。


 その態度が気に食わなかったのか、整列している貴族の中から一人、零雄に対して怒りを飛ばす男が一人。


 「貴様!!!無礼であるぞ!王太子様の勧誘を断るばかりか、王の御前でそのような態度をとるとは!由緒正しきガラテアを侮辱しているのか!?」


 その後、周りの貴族も小さな声で、ああ、まったくだ、礼儀がなっとらん、など非難する声がちらほらと出てくる。同調圧力といった現象はこの世界でもあるらしく、だんだんとその声が多くなってくる。


 だがこちらにとっては知ったことではない。半ば脅す形で護衛をやらされ、無理やり王城に連れてこられた挙句、馬鹿に仕えろとの御命令。誰でもわかるだろう。こんな状況になったとき、誰が引き受けます、なんて言葉を言うだろうか。


 「侮辱してるつもりなんざねぇよ。てめぇらが勝手に自分で品位を落としてるだけだっつの」


 王の間に堂々と入り、貴族たちの目の前をつかつかと歩き、ジュリエールの元までまっすぐに向かう。


 途中で控えていた衛兵たちが槍で交差を作り、行く手を阻んだ。よくアニメで見られる通行止めの仕方だなぁ見たことねぇけど。と心の中で思いつつ、交差点を右手で握りつぶして槍を破壊する。


 驚く衛兵を横目で見つめ、その間を通り過ぎ、ジュリエールの元までたどり着く。


 王に向かってしゃがんで礼をしているジュリエールの後ろから、襟をつかんで無理やり立たせる。


 「お前は服にしわを作るのが好きみてぇだな」

 「面白い冗談を言うね」

 「喧嘩を売るのもお前の趣味か?」

 「そんなつもりはないんだけど。君には僕が喧嘩を売ってるように見えるのかな?」

 「それがケンカ売ってるっつうんだよ。いいか?あんまり怒らせんな。俺にはお前も、お前の妹にも、それこそこの国にも、一切の関わりがねぇんだ。そして、俺から関わりを持ちたいとも思わねぇ。だから、近衛騎士だが何だか知らねぇが、そんなもんになるつもりはない。加えて、そんなふざけたこと言うやつのヘルプに付き合ってやる優しさもなくなった」


 そういうと、零雄はジュリエールの襟を離して突き飛ばし、あばよと一言。そして、部屋を出ようとUターン。


 後ろにはいつの間にか何人もの衛兵たちが扉の前で固まって邪魔をしている。まぁこんだけのことすりゃさすがにこれくらいはするだろ、と思っていたので別に驚きはしなかった。


 学校の廊下を歩くように、ゆっくりと衛兵たちの前までやってくると、周りを彼らが取り囲む。とりあえず前でとおせんぼしている衛兵二人を蹴り飛ばして、部屋から出た。


 蹴り飛ばした二人を除いて、衛兵たちは零雄を拘束しようと襲い掛かる。王族の護衛という仕事を任されている彼らの実力は、やはり唐突に襲ってきた悪党ども(あいつら)に比べれば、かなり高い。


 地球での零雄であれば、簡単に拘束できたであろう。しかし、今の彼の実力は(ランク)が違う。零雄の一撃は兵器に相当する。


 零雄が衛兵の腕を軽く握ると、鈍い音を立てて折れ曲がる。痛みに叫ぶその男を軽くどつくと、壁に思いきりぶつかり、頭を打って静かになる。零雄の腰にしがみついていた奴には少し強めに頭を殴る。それだけで脳震盪を起こして倒れ、ピクピクと床でするだけとなったマグロ(その男)を蹴り飛ばし、戦闘用にスペースを空ける。残った数人の一人を適当に選んで、足をつかむ。そのまま思い切り振り回し、全員まとめて壁にたたきつける。ここまででわずか八秒。戦闘にすらなっていない。


 その一部始終を見ていた貴族と王、そして王太子たちは唖然として、ただ立ち尽くすことしかできなかった。


 「俺は悪党と、俺のやることを邪魔する敵にしか手は出さねぇ。言っている意味は分かるな?お前らは()()()()、俺に敵だとみなされた。今回は手加減してやったが、次からは容赦なくつぶす。わかったかジュリエール」

 「わかったよ。いやはや、アンラッキーというほかないね」

 「この期に及んで俺にジョークをぶち込むことには褒めてやるよ」


 そういって、零雄はその場を立ち去り、王城を後にした。


 二日後、彼が国中から指名手配を受けたのは言うまでもない。





 

 

 さて、零雄が王城を後にしてからのことを簡潔に話そう。


 彼は王城を後にして、まず最初に裏路地を回った。理由は二つ。一つは自分の敵をきちんと把握するため。悪事を働く奴らは人目につかないところを好む。二つ目はお金を手に入れるため。それもそのはず、彼はこの国の通過を一枚も持っていないのだから。


 幸運にも、数枚の銅貨を手に入れた。この国の通過は「ニー」という単位で、80ニーが手に入った。日本円に換算すると約800円といったところか。真鍮貨一枚で十円、銅貨一枚で百円、銀貨一枚で千円、金貨一枚で一万円、重金貨一枚で十万円ほどの価値がある。真鍮貨より小さい貨幣はなく、真鍮貨一枚で1ニーだ。


 次に向かったのは、高金利のギャンブルカジノ。やはり、少ない元手で高いリターンを得るには、ギャンブルでしかできない。ただし、高いリスクも頭に入れておかなければならない。


 ギャンブルで勝つためには、電子系の乱数スロットや、ポーカーといったディーラーが操作できるゲームはご法度だ。真っ先に零雄が向かったのは、ルーレットである。


 ルーレットはディーラーが投げたボールがルーレットのどこのポケットに入るかを予想するゲームだ。要するに運ゲーの一種であることに変わりはないが、こういった高金利のルーレットのディーラーはイカサマができるのが一般的だ。普通にゲームをしたらまず負ける。


 だが、ルーレットは後張りといって、ディーラーがボールを投げてから数秒はまだ賭けることができる。その間に賭ければ、ディーラーがイカサマをすることは基本出来ない。ルーレットは重力や平面との傾きの影響を大きく受けるので、客はそれらの機微に敏感であり、ルーレット自体に細工がしていない限り、ディーラーがボールを操ることはできない。


 仮にイカサマを防いで運ゲーに持ち込めても、運が悪ければ負けると思っている人もいるだろう。しかし、このルーレットを勝つことのできる方法があるのだ。


 ルーレットの賭け方は様々あるが、勝つためにはグループ分けされている1st、2nd、3rdを使う。このエリアはすべての数値の約三分の一がそれぞれに割り振られており、当てれば賭けた額の3倍が返ってくる。


 やり方は単純。まずは賭けずにほかのプレイヤーがやっているのを見る。そして、このエリアのどれか一つに、()()()()でボールが入ったとき、賭けのタイミングがやってくる。三回連続で入ったそのエリアと異なる二つのエリアにそれぞれ賭ければ、ほぼ間違いなく勝つことができる賭けたお金の1.5倍がペイバックされる。


 4回連続で同じエリアにボールが入る確率は約1.2%。ほかの二つに賭ければ余事象で約96%ほどで当たる。もちろん確実ではないので、運が悪ければ負けてしまうが、相当のことがない限り負けはない。


 この手法を使って、零雄は数日間生活できるだけの金を得た。


 その代わり、このカジノには出禁になり、彼の手腕を讃えて、「無敵の右腕」と呼ばれるようになったとかならなかったとか。

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