ばぁちゃんのおにぎり、中身はなぁに?
ボクは好きな食べ物が沢山ある。
ふわふわのオムライス。
おっきなジュージューハンバーグ。
お母さんの作るトロトロカレー。
サクサクのエビフライ。
甘いお菓子にパリパリのポテトチップス。
だけど中でも一番好きなのが、ばぁちゃんの作ったおにぎりだ。
お母さんには悪いから大きな声じゃ言えないけれど、ばぁちゃんのおにぎりが一番美味しい。
ご飯は潰れてないし、ツヤツヤふっくらしてて、冷めても全然固くならないんだ。
塩もしょっぱ過ぎず、ちゃんと片寄らずに全体に振ってある。
それにお母さんのおにぎりはいつも中身が決まってて、シャケか梅干しのどっちかなんだけど、ばぁちゃんのおにぎりは中身がいつも違うんだ。
ばぁちゃんにおにぎりの中身が何か聞いても、答えはいつも決まってる。
「さーて、何だろね。何を入れたか忘れちゃったよ。食べてみてのお楽しみ、お楽しみ」
そう言っていつも教えてくれないから、食べてみるまで中身が分からない。
ホロホロのおかか、甘辛い昆布、ごま塩ワカメ、マヨネーズ多めのシーチキン──
海苔の代わりに醤油漬けのシソの葉が巻かれていた時は驚いたな。
ふりかけご飯や栗ご飯、炊き込みご飯のおにぎりなんて日もあったっけ。
おにぎりがやけに大きい日は大当たりの日。
中にウインナーや唐揚げが入ってるんだ。
だからボクは「今日は何が入ってるんだろう?」って、おにぎりを食べる一口目はいつもドキドキしてしまう。
でも結局、何が入っていても、予想が当たっても外れても嬉しいんだ。
だってばぁちゃんのおにぎりで美味しくないものなんて無いんだもの。
ボクはばぁちゃんのおにぎりが一番好きだ。
「よーし、出来た」
何だか無性にばぁちゃんのおにぎりが食べたくなった時、僕はばぁちゃんを思い出しながらおにぎりを握る。
「わぁ、ありがとう、お父さん!」
「お父さんのおにぎり好きー! 中身はなぁに?」
子ども達の質問に、僕はいつもこう答えるのだ。
「さーて、何だろうね。何を入れたか忘れちゃったなぁ。食べてみてのお楽しみ、お楽しみ」




