⑥慣れとは反応速度とは
長期連載も、短編小説も、連載形式に慣れた短編作家様、長編小説を書き終える感覚に慣れた作家様が、連載という形式に活動を押し込める場合と、分断された状況で独立した短編を感情の赴くまま自由に挙げていた作家とは、書き方も取り組み方も方向性も全く異なります。
これは、どちらが優れているとか、上だ、という視点からの話ではなく、そもそも感覚が違うという話です。……連載形式というより、読者の方の波に向けてそのタイミングで作品を載せてきた方と、自らの感情の波のタイミングで、周りの状況関係なく作品を載せてきた人間とでは、注意し気をつけなければならない点、感覚がそもそも違います。そもそも、自分の感情の波のタイミングで作品を挙げてきたタイプの波は、一気に放出し、一気に止まる、どちらかというと波が鋭く尖っていて、その波の幅も狭い。だから、そういったタイプの作家は、書ける間の波の寿命が短く、それを本人が自覚していればそういった戦略を好んで行うでしょう。波が続いている内に勢いのまま一気に仕上げるのです。最悪なのは、そういったタイプの作家が、連載小説という型にそのままのやり方で取り組んだ場合の悲劇です。
自分の波のタイミングと、連載の波のタイミングが全く合わない為、波の調子が崩れ、最終的に自らの執筆のリズムを崩す原因となります。こういったタイプは、自身の波の幅を理解しない内は、長期連載に向きません。自らの波の幅の切り方を誤ると、細切れぶつ切れの連載をするタイミングで、自らの波をぶった切ってしまい、リズムを崩し持ち直せないまま、連載がストップすることになってしまいます。長期連載をこのようなネット小説という形でする場合、連載をするタイミング、どこで呼吸を切るかのタイミングを掴めない内は、書き溜めて挙げるという形をとった方が無難だと言えます。長期連載を止めないようにする為には。
文章を書くことは、呼吸と同じ。環境も重要ですが、連載で一番大事なのは、その連載小説が持つ特有のリズムに乗る、という呼吸が最も大事なように私は感じております。呼吸が合わなければ、いずれ波はブツ切れとなり破綻する道筋の出来上がりです。
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他者の波のタイミング、バランスに知らず知らず合わせてこられたようなベテランの作家様(他者の為に書くことを掲げられている作家様)の場合、そのタイミング、バランスのとり方が上手いように見えます。きっと書き続ける為に必要なスキルのでしょう。自由気ままに自分の為に書いてきた人間の場合、そういった他者の感覚はまるきり無視だった為、そのような感覚を育てられずに来ました。……その為、長期連載や、短編を更新させる度に調子を崩してしまうのです。