2、 美女はとても愛されています。
「・・・・」
「いつまで拗ねてるのよ、晴馬」
「いや、だってあれは反則だろ・・・可愛すぎる」
「ここは公衆の面前だから・・・後で聞かせて?」
最後は俺にしか聞こえないほど耳元で囁く。
ゾワゾワッとするが、可愛さが相まって俺がボンッ!と音を立てて赤面しショートする。
あれ?詩穂って小悪魔だっけ?
プスプスト音を発て、放心しているともうそこは校門の前だった。
「それじゃ、お昼ね~」
「お、おう」
見送った後、もうちょい話せばよかったと思うのだった。
「おーい、晴馬!」
「なんだよ、和人」
こいつの名前は君塚和人。
サッカー部のエース。
小中と俺と対をなす天才とか呼ばれていた・・・今更だが、俺は運動は出来る方らしい。サッカーは和人について行くためだけに練習し、それに精一杯。他の事なんてロクに出来なかった。
対をなす天才なんて、周りの人間が吹聴した世迷い事。おれなんて・・・
「おーい、ネガティブシンキングしてないで話そうぜ」
余計なお世話だ。
「余計なお世話だ。」
おっとつい思ったことが出てしまった。
よく卑屈と言われるが、俺はこれがデフォルトであり、それ以上でもそれ以下でもない。
ついでに、意気地なしというバットステータスがある。
これは純粋に俺の心臓が弱いから、しょうがない。
「んで?イケメン和人君は何の用?」
「いや、どうもこうも・・手つないだのか?ん??」
そう、そして俺の数少ない友人でもあるが故、事あるが毎に詩穂との仲に検索を入れる。
「・・・無理だった」
「ま、そうだろなー。彼女の名前を下の名前で呼ぶのに一か月かかったんだもんな」
「和人」
「はい」
「だまれ」
「さー、いえっさー」
「席座ってろよ」
「へいへい~」
そして、あいつにも世話になっているが故、少しは言うのが義理だったかと後悔するが、まぁ後回しだ。
ホームルームを早急に終え、授業の準備をする。
一限目は数学。
乱数表の様に、アトランダムに当ててくる教師なので、出されていた課題に一度目を通す。
「ね、ねえ」
「ん?どうしたの紗雪さん」
「こ、これって、どうやってやるの?」
彼女は、夜桜紗雪、黒髪三つ編みで、少し度のキツイまるぶちメガネをかけた女の子。引っ込み思案だが隣の席で声をかけたのをきっかけに打ち解けていき、彼女も友達が増えた様子だ。
そんな彼女の悩むのは数学の課題だろう、一番難問のひっかけに見事掛かってしまっている。
俺も最初は悩んだので、余計に教えやすかった。
「それはね、ココをこうして、そうそう!これで合ってると思うよ」
「う、うんありがとう・・・」
「うん、どういたしまして」
自分がすることに卑屈な俺だが、こういった多少の人助けをしたときは気分が少しいい。
別に相手にとっては大したことでなくても、自己満足としてはとるに足る。
きおつけぇー、れぇー
気の抜けた授業の始めから終わりまで、板書と教科書を行き来し咀嚼しながらノートにまとめる。
本当はノートにしなくてもいいのだが、可愛い彼女のためにと頑張っている。
お気づきかと思うが、俺は成績はいい。
学年では基本10位以内。
別に努力を強いられているとか、深い意味は無い。
がり勉でもないと自覚している。
これもまた、【サッカー天才事件】と同じく、周りの吹聴だ。
確かに、今までの成績を見ても俺はもっと上の高校を狙えたと思う。
なのだが、俺は親に無駄なお金はかけさせたく無かったため、公立で偏差値は50くらいの場所を選んだ。
よって必然に点数が高くなった。
それだけだ。
にしてもセン公よ。
字、クッソ汚ねぇな、アンタ。
私もどっちかというネガティブ思考らしいですがイケメンではないですね。