1、 美女は登校する時間が大好きです。
シロップどぱーって程ではないかも知れません。
今までの様に痴情のもつれのある悲恋ではありません。
ただただ、ゆっくりなだけなのです。
「なぁ」
「ん、なに?」
「一応聞くけど・・・俺らって付き合ってるんだよな?」
「うん、そうだね」
「付き合って三ヶ月で、キスおろか手も繋いだことない僕らは何なのでしょうか」
「それは晴馬が意気地なしなだけでしょ」
俺、友人キャラの雰囲気イケメンと評される人道晴馬は、神原詩穂と交際をしている。
・・・のだが、超絶シャイな俺は彼女を見ると顔を赤面させ、上気してしまう。
対する詩穂はというと、黒髪ロング、色白な肌にしっかりと整ったパーツをしている。スタイリッシュでありながら女性らしい起伏はある、一言で言う美女だ。
俺と彼女が付き合った経緯はまた別な話だが、中学は三年間同じ、高校もたまたま、本当にたまたま同じ学校で、毎日ともに登校している。
肩が触れ合うくらいの近さで、ゆっくりと駅に向かい、満員電車では俺が壁になり、高校にまでの細い通学路では俺のスクールバックの紐をチョンとつまんでいる。
これが日常で、俺としては彼女が初めての彼女なのもあり毎日ドキドキしていた。
「うっ、それは言わんといてくれ、隣にいるだけでうれしすぎて昇天しそうなんだから・・・」
「そのセリフ良くもまぁ恥ずかしげもなく言えるわね」
こんなそっけない対応をしつつも彼女は彼女で口角を少し上げているようなので嬉しいのだろう。
が、意気地がないのも事実で。
数少ない友人に、いつになったらお前は手を繋ぐんだ?と言われ、そんなことできるわけねぇだろォ!!と本気で言ってしまうほどには。
いや、決して彼女が悪いわけではないのだ。本当に俺が意気地がないせいであり、拒絶されたら・・・とネガティブになっているだけだ。
「・・ま、・・るま。晴馬!!」
「うお!・・・あ、ごめん何の話だっけ」
「えー、二回は言いたくない」
頬を染めながら、軽く憤慨してみせる詩穂がいように可愛らしくて、悶えてしまいそうになるが必死にこらえ言葉を紡ぐ。
「ごめん、後でパフェ奢るから」
「むー・・・」
ガチギレではないが、少し不満そうな顔をする詩穂は、俺の前に手を出す。
「手、繋ぐ?」
「・・・・~~~~~ッ!!」
唐突の不意打ちをもろに喰らった俺は、流石に耐えかね、悶えてしまうのだった。
これは、俺晴馬と詩穂の二人が織り成す静かでスローペースな、優しいラブコメである。