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素晴らしきもの

作者: 黒っぽい何か
掲載日:2020/03/08

背中が大きくあいた空色のローブ

籠められた想いは「素晴らしいのは私ではなくあなた。」



昔、ある所に一人の鳥人がいました。

その鳥人は、生まれつき体が弱く、生まれてからずっと飛ぶことができませんでした。


その飛べない鳥人は、歌をこよなく愛し、空を眺めるのが大好きな鳥人でした。

その飛ばない鳥人は、純粋で繊細な心を持っており、少し不器用な所があったため、群れから離れて、高山の中腹に庵を結んで一人で住んでいました。

また、その飛べない鳥人は、大好きな空と同じ色のローブを、好んで身に着けていました。



そんなある日、その庵に、一人の鳥人が迷い込んできました。

その鳥人は、心に自分でも分からない、何かを抱え込んでいました。

何かを抱えた鳥人は、その何かを解消する為、あてもなく彷徨っていた所、この庵にたどり着いたと、飛べない鳥人に説明しました。



突然の出会いに戸惑った二人ではありましたが、一言二言、言葉を交わして行くうちに、ふたりは、急速に打ち解けていきました。

特に、何かを抱えた鳥人は、飛べない鳥人の側にいるだけで、何かが消えていくような不思議な感覚を感じていました。

また、飛べない鳥人も、何かを抱えた鳥人の丁寧な言葉に、安らぎを見出していました。


ただ、何かを抱えた鳥人は、飛べない鳥人の「私は価値ない存在」「私は所詮道具」という言葉がずっと気になっていました。

何かを抱えた鳥人がどんなに否定しても、飛べない鳥人は、考えを変えることはありませんでした。



そのようなある日、いつものように、飛べない鳥人の歌を交えながら談笑していた所、何かを抱えた鳥人が、突然高熱を発して意識を失ってしまいました。

何かを抱えた鳥人は、次に目が覚めた時は、飛べない鳥人のベットの上でした。


辺りを見渡しても誰もいない事に不安を感じた何かを抱えた鳥人は、飛べない鳥人を探して庵の中を隈なく探し回りました、

何かを抱えた鳥人は、書斎で飛べない鳥人を見つけたものの、飛べない鳥人は、既になくなっていました。

状況を呑み込めない何かを抱えた鳥人は、半狂乱になりながら、手掛かりを求めて飛べない鳥人が握りしめていた、一冊の本を手に取りました。



その本は、飛べない鳥人の日記でした。

その日記には、何かを抱えた鳥人が倒れからの病状の詳細な記録でもありました。

その病は、今まで知られている病とは、まったく別種の未知の病であることが記されていました。

その為に治療法が分からない事、既存の薬では効果が無い事、等々が記されていました。

そのような中、飛べない鳥人は、あらゆるものを試し、最後には、自分の体を犠牲にして治療薬を作り出す事に成功したことが記されていました。


また、その詳細な記述の合間合間に「生きて」「私が死ぬべき」「死なせない」「私の命をあげる」「私が助ける」「私だけが生きていても仕方がない。」「あなたは生きるべき」「私には価値がない」等々の飛べない鳥人への想いや自分への想いが記されていました。

そして、「あなたのような素晴らしい人こそ生きて欲しい。」との記述でこの日記は終わっていました。

それを読んだ何かを抱えた鳥人は、静かに日記を閉じ、たった一言「違う」と静かに言ったと言われています。



それから暫く経って、人々の間に謎の病が蔓延しました。

その病は、全く未知の病であり、今までの治療法や薬では全く対処できませんでした。

その為、この未知の病は、瞬く間に人々の間で蔓延して人々を苦しめていました。


そのような中、一人の鳥人が人々の前に現れました。

その飛ばない鳥人は、誰も知らないはずの未知の病の対処法を携えていました。


それからというもの飛ばない鳥人は、人々に治療法を教え、薬を提供する等々、この未知の病の治療に尽力していきました。

そして、その尽力の甲斐もあり未知の病を撲滅することに成功しました。

飛ばない鳥人は、未知の病の撲滅を祝う宴の時に、言葉を求められた時に



「私(飛べない鳥人)の名前だけは忘れないで欲しい。」



そう言ったと言われています。


そして、次の日には、飛ばない鳥人は、人々の前から忽然と姿を消しました。

いつも身に着けていた、空色のローブだけを残して。



今でもこの地方では、飛べない鳥人の名前は「医聖」を表す言葉として残っています。

そして、飛べない鳥人の庵があった所には、二つの墓が寄り添うように建っていると言われています。

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