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二人の違い

 凜音は俺の指示に従って、半日の間、元気よくサイレントストーンを狩り続けた。


 すると、一つの妙なことに気づいた。


 俺一人で狩っていた時には沢山ドロップしていたはずのマナトリウムが、一切ドロップしなかったんだ。


 狩りの効率は普段一人で狩っているときとさほど変わらないはずなのに、どうしてだろう?


 そう思っていると、

<凜音様の運ステータスが低いからでしょう>

 メタトロンが答えた。

 

(そう言えば、凜音のステータスって俺も確認出来るのか?)


<可能です。表示致しましょうか?>


(頼む)


ーーーーーーーーーーーーーーー

悪道凜音 マナ総量:15150

基礎ステータス

  力:57

 体力:35

 技術:40

素早さ:39

 魔力:22

 魅力:40

  運:1

残ステータスポイント:10

残スキルポイント 3


ユニークスキル:『正々堂々』:『全ステータス向上』『魔法攻撃耐性(弱)』

スキル:剣LV5 鈍器LV1 軽装備LV1

    

取得可能スキル:二刀流 マジギレ ぶちかまし 特攻 ……その他10種

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 なるほどなるほど……全体的に、俺よりも1・5倍くらい強いな。

 が、運のステータスだけに関しては俺のほうが圧倒的に高い。

 あと、ユニークスキルも完全に戦闘向きのものっぽいな。


(なあ、ステータスポイントとスキルポイントが余ってるみたいだけど、割り振りは可能なのか?)


<現状は不可能です。方法を探る必要があるでしょう>


(そうか、分かった)


「あの、さっきから黙り込んで、何してるんスか?」


「ああ、実はメタトロンと話していたんだ。って、凜音はまだ知らないか……」


 俺は凜音に、ユニークスキルのことを説明した。

 

「えー……そうなんスか?」


 が、よく分かっていない様子だった。

 長い髪の毛を触りながら首をかしげている。


「つまり、凜音は戦闘向きで、俺はバックアップ向きってことだ。メタトロンと話すために、時々黙り込むけど、不気味に思ったりしないでくれよ」


「よくわかんないっすけど、わかりました。先輩の指示どおりに動けば良いってことっすね?」


「……まあ、そうだな。ともかく狩りを続行しよう」


 魅音は、想像以上に正直で言うことを聞いてくれるな。

 俺の言うことには特に疑問も挟まないで素直に従ってくれる。見た目で大分警戒してしまったが、むしろ今どき珍しいくらい、先輩の言葉を素直に従ってくれるタイプらしい。



 夕方近くなって、俺と凜音はダンジョンから引き上げることにした。


 今日は指示ばかりで体をほとんど動かさなかったから、なんだか消化不良だ。一度会社に顔を出したら、またダンジョンに戻って、一人で暫く狩りをしようかな? 


 なんて考えながらタクシーに乗り込むと、


「あの、二宮先輩」

 凜音が真剣な顔をして声を掛けてきた。


「なんだ?」


「ダンジョンじゃあ『マナトリウム』っていう貴重な金属が手に入るって聞いていたんスけど、それってウソなんスか?」


「ニュースを見たんだな」

 

「そうっす。ダンジョン協会は今バブル状態で、簡単に大金を稼げるんでしょ?」


「それは正しいと言えば正しいが……間違っていると言えば間違っているな」

 

 俺は凜音にサイレントストーンが稀にマナトリウムをドロップするということを説明した。


 そして同時に、俺は運のステータスが高いから、マナトリウムをそこそこの確率(20体に1体ほど)でドロップするということも説明した。反対に、凜音の運はすこぶる低いということも説明すると、彼女は神妙な顔でうなずいた。


「なるほど……まあ、ウチって昔から運がワリーと思ってたんスけど、マジに運が悪かったんスね……よく事故に遭うし、両親は事故で死んじまったし……」 

 ……運、重要だな。


「ああ、運が1ってのは、流石に驚いたよ」

 なにせ、俺の100分の1だしな。


「運って、上げる方法は無いんスか?」


(メタトロン、どうだ?)


<少なくとも、マナの蓄積によって上昇する気配はありませんね>


「……現状、運を上げる方法は無いみたいだ」


「じゃあ、運の悪いウチがあの石っころを狩っても、金は稼げねーってことっスか?」


「そうなるな。そんなに金が必要なのか?」

 

「絶対に必要っス。そのために、命を捨てる覚悟でここに来たんスよ」


 ……なんだろう。何かワケアリってやつか。

 そうでなきゃ、命がけの仕事をわざわざやろうなんて考えないか。

 

「分かった。なら、これを使ってくれ」

 俺は、まだ換金せずにとっておいたマナトリウムを神の風呂敷から取り出して、凜音の前に差し出した。

 凜音の目が一瞬だけ大きく見開かれたが、彼女はそのまま固まってしまった。


「これ一つで40万くらいにはなる。いくつ必要だ?」


「え……でも、受け取れないっす」


「良いから、俺はもう十分稼いだからな」


「……まじで駄目っす。施しは受け取れないっす」


「良いんだって。受け取ってくれ」

 

 正直なところ、金はもう十分稼いだ。俺はあんまり金遣いも荒くないし、これ以上金を稼いでも仕方ないから彼女のあげたいんだが……律儀だな。


「本当に良いんだ。受け取ってくれ」


「駄目っス! 絶対ダメッス」


 押し問答を繰り返して、マナトリウムは言ったり来たりを繰り返したが、結局彼女は受け取ってくれなかった。どうやら、施しは絶対に受け入れないタイプらしい。

 どうにかしてあげたいが……なにか方法を考える必要があるな。

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