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二足のわらじ

 それから、俺はダンジョンと会社の二足のわらじを履く生活が続いた。


 朝、出社してすぐに仕事を請け負って、それをメタトロンの能力で速攻終わらせる。

 その後会社を抜け出してダンジョンに向かうと、夕方には会社に戻って仕事の報告をするようにした。これなら上司(山田)からの不興も買わずに済むし、効率的だ。流石に少し怪しまれるようにはなったが、仕事はしっかりやってるし、文句は言われなかった。


 そしてダンジョンで集めたマナトリウムを金券ショップにあずけてから家に帰るというサイクルを繰り返していく。


 2日経って、金券ショップから、鑑定をお願いしていたマナトリウムが本物であることを確認が取れたとの連絡があり、再び店に向かった。

 すると俺を迎えてくれたのは、50代ほどの身なりの良い男性で、店長さんだった。買取金額は予想していた通り、120万円と少しだった。


「これは、ダンジョンで入手されたという話ですが、本当ですか?」

 書類を書きながら、店長は俺に質問してきた。

 心なしか、その目がやけに光っているような気がする。

 ……やっぱり、一般人がマナトリウム結晶を売りに出したら、気になるのも当たり前か


「そうですよ」


「マナトリウム結晶は随分昔に掘り尽くされたと聞いていますが」


「そう言われても……本当にあったんですよ。ダンジョンに」


「まだまだ沢山ありそうですか?」


「どうでしょう」

 俺は言葉を濁した。が、それが帰って店長の好奇心に火を点けてしまったらしく、根掘り葉掘りいろいろなことを問い詰められた。

 


 ダンジョンでは、しばらくサイレントストーン狩りをしていた。本当ならダンジョン協会員としてやるべき仕事が他に有るらしいが、俺はまだ新人だし、正式なメンバーではないから、自由にやらせてもらっていた。


 そうしてマナを稼いでいるうちに、神の叡智(メタトロン)にまた新しい能力が追加された。

『自己管理』って機能で、メタトロンが言うには『自分自身のステータスを詳細に把握し、成長の方向性を自ら決める能力』だそうだ。


 試しにスキルを使って確認すると、ステータスが、まるで立体映像のように視界に投影された。


ーーーーーーーーーーーーーーー

二宮賢治 マナ総量:100270

基礎ステータス

  力:27

 体力:25

 技術:30

素早さ:29

 魔力:12

 魅力:10

  運:100

残ステータスポイント:30

残スキルポイント 10


ユニークスキル:『神の叡智(メタトロン)』:『完全記憶』『解析』『神の風呂敷』『神の加護』『自己管理』

スキル:鈍器LV1 中装備LV1

    

取得可能スキル:暗視 火事場の馬鹿力 ふんばり 集中 幸福 危機回避 戦闘本能……その他25種

ーーーーーーーーーーーーーー


 ババンッと表示されたステータスを見て最初に思ったのは、

(なるほどな。にしても俺、すげー運が良かったんだな。あんまり実感したこと無いけど)


 ということだった。


 けど、よく考えてみると、自分の能力では本来入れないような会社に入れたことや、この年まで大きな病気をしなかったこととか、考えようによっては運が良かったとも考えられるか。


 それ以外のステータスはまあ、普通……なのかな? 魅力の値が低いのが若干腹立つが。


<二宮様、ステータスポイント及び、スキルポイントの振り分けが可能ですが、いかがなさいますか?>


 と、メタトロンが言う。

 ああ、ステータスポイントとスキルポイントってのは自由に割り振り可能なのか。


 けどまいったな。俺、こういうの苦手なんだよな。

 ゲームとかでも、大体ステータス振り分けとか失敗して後悔することが多いし……そうだ。


(メタトロンに任せるよ。いい感じで割り振ってくれ)


<よろしいのですか?>


(ああ、頼む)


<それでは……このように割り振ろうと思いますが、いかがでしょうか?>


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


二宮賢治 マナ総量:100270

基礎ステータス

  力:27

 体力:25

 技術:30

素早さ:29→59

 魔力:12

 魅力:10

  運:100

残ステータスポイント:0

残スキルポイント 0


ユニークスキル:『神の叡智(メタトロン)』<『完全記憶』『解析』『神の風呂敷』『神の加護』『自己管理』>

スキル:鈍器LV1 中装備LV1 ふんばりLV0→1 危機回避LV0→5 逃走術LV0→4


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(素早さ全振り!? そんな極端な……それにスキルもあまり強くなさそうなものばかりだし……大丈夫か?)


<ダンジョンでは思わぬ事故がつきものです。戦いの強さを求めるよりも、まずは絶対に死なないようにすることが重要かと思いますが、いかがでしょうか?>


(確かに、ダンジョン協会に加入した人間の半分が1年以内に死ぬって話だし……そうかもな。けど、それなら素早さじゃなくて体力にステータスを割り振った方が良いんじゃ?)


<無論、体力も重要です。が、相手よりも二倍耐久力がある敵と、二倍素早い敵、どちらの方が脅威でしょうか?>


(そりゃあ……二倍早い方が強いだろうな。まず攻撃が当たらないだろうし、向こうの攻撃の手数も倍になるから)


<私も同意見です。そのために、特化させるべきは素早さだと考えます>


(分かった。それならそうしよう。ステータスを割り振ってくれ)

 

<では、そのように>


 メタトロンがそう言うと同時に、体がさらに軽くなった。

 少しだけ走ってみると、すぐに素早さを割り振った効果を実感できた。まるで馬にでもなった気分だ。風を切って走ることが出来る。これは気持ちいいな。



「ちょっと大変ですよ!」


 ダンジョンでのサイレントストーン狩りを終えて、ダンジョン協会に戻ると、ミカンが俺を見て大声をあげた。彼女の手にはスマホが握られている。


「これ見てください!」

 

 俺にスマホを押し付けてきた。仕方無しに画面を見ると、ニュースサイトが映っていた。

 見出しの文字は『ダンジョンでレアメタルが発見される』。

 

『現在では年間採掘量が限りなくゼロに近いレアメタル、マナトリウムが日本国内のダンジョン協会員によって売りに出されていることが判明。詳細は不明だが、どうやら日本国内のダンジョンにはまだマナトリウムが残っているらしい。マナトリウムは金に匹敵する価値を持つので、もしかすると、これからはダンジョンがゴールドラッシュのように新しいブームになるかもしれない』


 あ、これもしかして……俺のことか?

 もしかしてマナトリウムを売った時に話をしたのがまずかったか?

 やばいことしちゃったかな? これ。と、そう思ってミカンの顔を見ると。


「二宮さん……ありがとうございます。このニュースを見た人は、きっとダンジョン協会に来てくれますよ!!!」

 

 満面の笑顔だった。

 ……そうか。ダンジョン人気が出るなら、彼女も大歓迎ってわけだな。


「ああ、そうか。別にそういうことをするつもりじゃなかったんだけどな……」


「コレだけのニュースになれば、もしかしたら新人が来てくれるかもしれませんよ!」


「確かに、そうなると良いけどな」


 と、ミカンとそんな話をしていると、誰かが扉を叩いた。


「も、もしかして本当に!?」

 ミカンは急いで扉に駆け寄ると、扉を開いた。


「うぃーっす。ビラを見て来たんスけど、ダンジョン協会ってここっスか?」

 そこには、ジャージ姿の女性が立っていた。

 手には木刀が握られていて、口にはキャンディーを咥えている。

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