少し落ち着いて
時間が過ぎた。
随分、長い時間待ち続けていた気がする。
病院の中で、俺とミカンは言葉もかわさないて、ただひたすら待って、待った。
ミカンはすでにベンチに横になって眠っている。が、俺は眠くはならず、ただ待ち続けた。
やがて、集中治療室から看護婦が出てきて、こう言った。
「安定しています。しばらくは慎重な経過観察が必要ですが、命に別条はないでしょう」
「そうですか。ありがとうございます」
「ご家族ですか?」
「いえ、違います」
「……そうですか。しかし、今の季節にあれだけの低体温症になるなんて、よっぽど無茶をしてんでしょうね」
少しだけトゲのある言葉をぶつけられたが、反論することはできない。
けど、ともかく凜音が生きていてくれてよかった。
<賢治様>
(なんだ、メタトロン)
<凜音様の無事が確認できたことですし、少しお耳に入れておきたいことがあるのですが>
(……そうだな、どうせ暇だし、教えてくれ)
<ドラゴン討伐の際、ドロップしたアイテムを神の風呂敷内に収納しておいたのですが、その成果を報告させて>
(そういえば、そんなこと言ってたな)
<ドロップ品は3つ。『ドラゴニウム』、『槍』、『高純度マナ結晶のオーブ』です>
ドラゴニウムというと、レアメタルの一種だ。
金をも上回る希少性で、かなりの高価だということは俺も知っている。
(ドラゴニウムの量はどれだけある?)
<およそ10Kgです。市場価格ですと、1億円相当になります>
1億相当か。目的の2億にはまだ足りないが、それでも目標金額の半分を賄うことができた。
(それは良かった。で、『槍』と『オーブ』の2つは?)
<槍は文字通り武器としての槍です。あのドラゴンの性質を受け継いでいるのか、冷気を纏っているマジックアイテムです。名前をつけるなら……『アイス槍』といったところでしょうか>
……アイス槍って、そのまんまだな。
メタトロン、ネーミングセンスには難ありだな。まあ、ネーミングセンスぐらいは俺の方が上じゃないと、本体である俺の方が不要になってしまうし、むしろ良いことだろう。
(なるほど、そりゃ良いな。金にすることは?)
<値段については、あまり期待なさらないほうが良いでしょう。ダンジョンの外では所詮ただの槍ですから、誰かが武器として使用するのが一番かと>
(そうか、考えておこう)
<最後に、オーブについてですが、これはダンジョン協会で発見した文献内にそれらしき記述があり『技能結晶』ではないかと推測しています>
(技能結晶?)
<特異種のみが稀にドロップする結晶で、使用することで新たなユニークスキルを獲得することができます>
(……ユニークスキルって、ひとりにひとつだけじゃないのか?)
<例外もあるようです。さて、いかがなさいますか?>
新しいユニークスキル?
ユニークスキルは、言うまでもなく大きなメリットをもたらしてくれる。
だとすると、欲しいのは当たり前だ。
(今は……やめておこう。凜音が完全に復帰してから考えたほうが良い)
<了解しました>
……とりあえず、それなりの成果が確認できてよかった。




