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いのちを大事に

 俺たちは、なんとか禁区から無事に帰還した。


 ……楽して稼ごうなんて考えたのは失敗だったな。


 死にかけた結果、得たものは謎の石像が落とした白い粉だけ。


 はっきり言ってガッカリな結末だったかに思えたが……実はその白い粉、メタトロンに解析を頼んでも、データベースに存在しているどの物質とも合致は見られなかった。つまり、俺達の知りうるどんな物質でも無いらしいとい。


 そんな物は俺たちの手にあまる。ということで、ミカンに相談することにした。


「何やってるんですか! 勝手にそんな危ないことをしちゃいけませんよ!」


 話を聞き終えたミカンは、まず、すごく怒っていた。

 勝手に『禁区』なんて場所に行った俺たちが悪いので、それについて反論はできない。


「ごめんなさい」と、凜音と二人で何度もミカンに頭を下げてなんとか彼女の怒りをなだめると、ようやく俺が回収してきた白い粉についての話になった。


 俺は実物を神の風呂敷から取り出して、ミカンに見せた。


「うーん……見たこと無いですねぇ……砂か何かじゃないですか?」


 とのこと。だが、ただの砂なら、メタトロンもそうはっきりと言うはずだ。

 メタトロンの解析結果から、ただの砂ではないことは間違いないとミカン告げた。


「もしかすると、新しい物質なのかもしれませんね」

 ミカンがそう言った。


「新しい物質って、そんなことあり得るのか?」


「禁区が今まで誰の手にも荒らされていないのなら、可能性はあると思います。マナトリウムやドラゴニウムも、ダンジョンの中で見つかった新物質ですし、可能性は無いことは無いでしょう。もしもそうなら、きっとかなりの金額で買い取って貰えますよ」


「かなりの金額っスか!?」

 途端に、凜音の目が輝いた。


「ええ、研究機関からすれば、喉から手が出るほど欲しいもののはずです。どれだけの値段がつくのか、想像もできません」


 ……確かにそうだ。ごく僅かな量と言っても、まったく新しい物質なら、学術的な価値は計り知れない。


「まじか、良かったな。凜音!」


「助かったっス! これで万事解決っス!」



 早速、材料関係の研究機関にメールで連絡を取ると、先方は直ぐに電話で連絡を掛けてきてくれた。


 電話口で、ダンジョン内で新物質らしきものを見つけたこと経緯を含めて改めて伝えると、

「ぜひともその素材のサンプルを頂けませんか!?」


 めちゃくちゃ興奮した鼻息荒い声が電話越しに聴こえてきた。


 これはかなり期待できそうだな。


「もちろんです。しかし、あの……こんなことを言うのはアレですけど……謝礼について先に相談させて」


「もちろん、謝礼ははずみます!」


「わかりました。俺としては、金額が2億ほどあれば良いんですけど……どうですかね?」

 流石に無理かな? と、思ったが、


「その程度なら、問題無いと断言できます。おそらくはその10倍……いや、もっと大金も用意できるかと」


 驚くぐらい、あっさりOKが出た。

 おいおい、まじか。良いのかな?

 そう思いながら、足元を見られないために冷静さを維持して話を続ける。


「……ほんとうですか? それなら、直ぐに現金で頂けませんか?」

 俺がそう言うと、「えっと、それは……」と、途端に電話の向こうの声のトーンが落ちた。


「あのですね。もちろん、現金をお支払いするのは問題ないですが、それは二宮さんが言っていることが本当だと証明できた後です。直ぐに、というわけにはいきませんよ」


 ……まあ、そう言われてみればそうだ。


「それなら、いつまでに検査結果が?」


「少なくとも2週間以上は掛かるでしょう。なにせ大事ですから、間違いは許されませんし、厳重に厳重な検査と検討を重ねる必要があります。二週間で終わるというのも、あまり期待しないでください。数ヶ月以上掛かるかもしれません……」


「そうですか……」


 まいったな。となると、他の研究施設に売りつけたほうが良いのか?

 ……かと言って、海外の研究施設とコネなんて無いし……それに、海外に売ってしまうのは、日本人としてどうだろう?

 

「わかりました。なるべく早く結論を出して、2億円の現金支払いを約束していただけますか?」


「本物だとすれば、2億円は間違いありません。約束します! ええ、ぜひとも!」


「それでは、お願いします」


 その後、俺は材料を機関に送った。が、どんな仕事も、大抵は見積もりよりは遅くなるのが普通だ。彼は二週間と言っていたが……実際はどれくらいになるのか、想像できない。


 となると、別の方法でも金を稼ぐ方法を考えておく必要がありそうだ。

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